「鯉幟ゆらりと白き腹を見せ」/井上弘美先生と句から学ぶ俳句

pixta_26708840_S.jpg井上弘美先生に学ぶ、旬の俳句。5月は「立夏の頃を詠む」というテーマでご紹介します。

前の記事「「落ち椿呑まんと渦の来ては去る」/井上弘美先生と句から学ぶ俳句」はこちら。

 

竹林の闇のあをさも清和かな 古賀まり子

「清和」は初夏の季語。気候が清らかにして穏やかなことで、旧暦四月、つまり現代の暦で五月の時候をいいます。

初夏の頃の竹林は、今年生まれた竹が伸びやかに育って瑞々しく、精気に満ちています。竹林の中はひんやりと薄暗いのですが、その翳(かげ)りを青い闇と捉えて詩情ある一句。「清和」の頃ならではの、竹林の清々しさを詠んだ句といえるでしょう。
作者は一九二四年、横浜生まれ。若き日に療養生活を送った経験から〈紅梅や病臥に果つる二十代〉など、命の尊さを見つめる句を多く詠みました。二〇一四年に逝去。享年八十九。

 

 

鯉幟ゆらりと白き腹を見せ 深見けん二

五月五日は立夏、そして端午の節句。青空に吹き流しと共に掲げられる鯉幟は、夏の到来を告げて勇壮です。

この句は、緩やかな風にひらりと身を返した鯉幟を捉えて「白き腹」が印象的。鯉幟は力強く詠まれることが多いのですが、おおらかな詠みぶりに余裕が感じられます。何より「白き腹」に清潔感があり、青空との色彩のコントラストも見事。
作者は今年九十六歳。九十二歳で俳壇の最高賞、蛇笏賞を受賞し、その後の作品を『夕茜』にまとめて上梓されました。掲出句はその中の一句。写生に徹して人柄の滲む珠玉の作品です。

 

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<教えてくれた人>
井上弘美(いのうえ・ひろみ)先生

1953年、京都市生まれ。「汀」主宰。「泉」同人。俳人協会評議員。「朝日新聞」京都版俳壇選者。

この記事は『毎日が発見』2018年5月号に掲載の情報です。
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