「春雪三日祭の如く過ぎにけり」春の訪れを読む/井上弘美先生と句から学ぶ俳句

pixta_13552475_S.jpg井上弘美先生に学ぶ、旬の俳句。2月は「春の訪れを読む」というテーマでご紹介します。

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春雪三日祭の如く過ぎにけり 石田波郷

二月四日は立春。ようやく寒は明けるものの「余寒(よかん)」「冴返(さえかえ)る」という季語があるように、寒さは続きます。

この句は、春になって三日続きで降った雪を「祭の如く」と表現して、天のもたらした賑わいを讃えています。上五が"シュンセツミッカ"と七音で字余りですが、どこか華やかな春の雪を楽しむ心の弾みを、音の響きに捉えています。また、春の雪をまるで「祭」のようだと捉える感性も柔軟です。

作者は一九一三(大正二)年、愛媛県生まれ。「鶴」を創刊主宰し、読売文学賞などを受賞。一九六九(昭和四十四)年没。

 

木曽馬の黒目みひらく二月かな 大峯あきら

「木曽馬」は木曽駒とも呼ばれる木曾地方の在来種。小型ではあるものの忍耐強く、強健なことから、労働馬として活躍してきました。
この句は「木曽馬」の大きく澄んだ「黒目」だけを捉えて、春の訪れを表現しています。山国の春は遅く、二月はまだ寒いのですが、それでも寒が明けるように、馬も「黒目」をしっかり見開いて春の到来を告げているのです。山国に生きる動物の、逞しい生命力を捉えた句で、堂々とした調べをもっています。

作者は一九二九(昭和四)年、奈良県生まれ。毎日芸術賞などを受賞した現代屈指の俳人です。

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<教えてくれた人>
井上弘美(いのうえ・ひろみ)先生

1953年、京都市生まれ。「汀」主宰。「泉」同人。俳人協会評議員。「朝日新聞」京都版俳壇選者。

この記事は『毎日が発見』2018年2月号に掲載の情報です。
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