仕事や家庭で、自分の言いたいことがうまく伝えられない。それは、「正しい伝え方」ができていないからかもしれません。そんな悩みが解決できるテクニックがまとめられた書籍『新装版「分かりやすい表現」の技術 意図を正しく伝えるための16のルール』(藤沢浩治/文響社)から、「正しく伝わる表現方法」を一部抜粋してご紹介します。
情報の構造を明らかにする
「分かりやすい情報発信とは、情報をあらかじめ整理してから送ること」です。
あるいは「分かりやすい」とは「すでに持っている情報構造と照らし合わせやすいこと」とも言えます。
脳内にある整理棚には、「構造A」「構造B」などというラベルがついた構造別の区画があり、新しく入ってきた情報は、その構造によって分類され、該当する区画に入れられて「分かった!」となります。
そこで、新しい情報があらかじめ整理されて、その構造がひと目で分かるように明示されていれば、区画のラベルとの照合作業が簡単になるわけです。
つまり「分かりやすい」のためには「情報構造の明示」が重要なのです。
情報構造を明示する手法にはいろいろありますが、ここでは「因数分解」を紹介しましょう。
情報の因数分解
例3―30は、雑誌で見かけたダイエットのポイントです。
これでも役に立つかもしれませんが、「分かりやすい」にうるさい私が書くとしたら改善例のようにするでしょう。
同じ会社の事務機製造部門の友人に「身の回りで、何か分かりにくいものがあったら送ってほしい」と電話で頼んだら、四日ほどして社内便の封筒が届きました。
開けてみたら部品業者との契約文のコピーでした(例3ー31)。
「分かりにくい」というよりも「まだ整理の余地を残している例」として紹介することにしました。
改善例を見ると、やはり、こちらのほうがスッキリしているでしょう。
「スッキリ」という点では、例3―32の違反例と改善例のほうが対比が際立っています。
税務署で見た貼り紙です。
金額範囲などはうろ覚えなのですが、改善例では「年収500万円~700万円」の繰り返しを消しました。
以上、三つの例でスッキリを実現した手法は共通項でくくる「因数分解」です。
因数分解といえば、誰もが遠い昔に数学で習ったab+ac=a(b+c)を思い出すでしょう。
共通項でくくるというのは、まさにこの因数分解です。
この式の左辺と比べて右辺がスッキリしているのは、右辺のほうが整理されているからです。
情報も因数分解すれば分かりやすくなるのです。
左辺では、bとcという二つの値に、それぞれ同じaという値を掛け算しています。
つまり二回、掛け算されています。
右辺ではこの掛け算が一回に減っています。
同じことを繰り返すムダが取り除かれているわけです。
情報の因数分解とは「ムダを排除する」という意味で、言い換えると「情報の構造を極限まで単純化する」ことなのです。
雑誌のダイエットの要点や税務署の案内は、共通項でくくらず整理されていない表現、すなわち因数分解されていない情報です。
各項目の中から共通因子をカッコの外に出す因数分解をしてみましょう。
そうすると改善例のようになるわけです。
これも「分かりやすい表現」のルールになるでしょう。
分かりやすい表現のルール「情報を共通項でくくれ。」
【最初から読む】大切なのはサービス精神!読み手への配慮がわかりやすさを生む
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ベストセラーの新装版。分かりにくい表現16の原因と解決方法を全4章で紹介しています