仕事や家庭で、自分の言いたいことがうまく伝えられない。それは、「正しい伝え方」ができていないからかもしれません。そんな悩みが解決できるテクニックがまとめられた書籍『新装版「分かりやすい表現」の技術 意図を正しく伝えるための16のルール』(藤沢浩治/文響社)から、「正しく伝わる表現方法」を一部抜粋してご紹介します。
限られたスペースにどれだけ盛り込むか
伝えたい情報のサイズを適正にしても、伝えたい情報総量を欲張れば、分かりにくくなってしまいます。
つまり、情報発信のスペースそのものが限られている場合です。
限られたスペースにはいろいろな種類があります。
一冊の本、一日のプレゼンテーション、一回のコマーシャル時間、一枚のポスター......などなど。
限られたスペースの中に、伝えたい情報をどれだけ盛り込むか、という選択が重要になります。
例3―20(違反例)は、私が自分の本『日本人が英語をモノにする一番確実な勉強法』(三笠書房)を校正していて気になった表現です。
不要な詳細が混じっているだけではなく、大項目と小項目の混同もあります。
出版時には改善例のように、詳細(小項目)を隠すことによって、主張をより分かりやすく表現しました。
隠した詳細は次のステップで別に説明すれば、混乱せずに理解できるでしょう。
広告でも同じです。
テレビなら、たとえば15秒間という時間的スペースで、印刷媒体なら一ページなどの空間的スペースで、消費者に伝えたい事柄はたくさんあります。
欲張りはすべてを失う
例3―21の違反例と改善例では、どちらが印象に残るでしょうか。
ちょっと読んでみようという気にさせるのは、改善例のようなタイプの広告です。
メーカーの立場なら、伝えたいことは色々あるでしょう。
たとえば、最新の安全装置が完備していること、環境問題が考慮されていて排ガスが欧州基準にも合致していること、燃費がよいこと、今なら1・5パーセントの特別低金利ローンが利用できること、静粛性が高いこと、パワーが同一クラス最高であること、UV(紫外線)カット・ガラスが使用されていること、新型エンジンを採用していること、などなど。
時間制限がなければ、全部を伝えられます。
しかし、現実にはたとえばテレビなら15秒間あるいは30秒間という制約があるわけです。
そんな短時間に、伝えたい情報を全部押し込んでしまったら、結局、よく分かってもらえないでしょう。
これが「欲張り」による失敗です。
一枚のポスターで表現できる適正量、コンピューターのメニュー・バーで提示できる選択肢の適正数、一文の適正の長さ。
みな同じです。
当然、全部を押し込むことが無理となれば、あとは取捨選択です。
普通、このような場合「要点」と「詳細」に分け、とりあえず詳細は捨てます。
欲張りの誘惑に負けて全部の情報を押し込んでしまうと、結局、ゴチャゴチャして分かりにくくなり、すべてが失われてしまいます。
川面に映った自分がくわえた肉をほしがり、吠えかかって肉を落とした、イソップ物語の犬のように、欲張って「元も子もなくす」状態です。
そこで次のようなルールができます。
分かりやすい表現のルール「欲張るな。場合によっては詳細を捨てよ。」
【最初から読む】大切なのはサービス精神!読み手への配慮がわかりやすさを生む
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ベストセラーの新装版。分かりにくい表現16の原因と解決方法を全4章で紹介しています