年末調整申告書・・・この文章、人に理解させるつもりある?「分かりやすい!」が作れる情報のサイズ制限

仕事や家庭で、自分の言いたいことがうまく伝えられない。それは、「正しい伝え方」ができていないからかもしれません。そんな悩みが解決できるテクニックがまとめられた書籍『新装版「分かりやすい表現」の技術 意図を正しく伝えるための16のルール』(藤沢浩治/文響社)から、「正しく伝わる表現方法」を一部抜粋してご紹介します。

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区切れば分かりやすくなる

例3―16(上)程度の文章は日常的によく見かけます。

別段、分かりにくい文章とも思えません。

しかし、改善例と読み比べてみてください。

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どちらの文章がすんなり頭に入っていきましたか?

例3―17は、以前、我が家が引っ越しする際にお世話になった、ある大手不動産仲介業者のサイトの冒頭画面です(この本に掲載するために単純化しています)。

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いろいろと貴重な情報を入手できたので、このサイト自体には深く感謝しています。

ただ、慣れるまではいつも、この冒頭のページでウロウロしてしまい、時間がかかってイライラしたのを覚えています。

改善例のように構成を変えることで、全体の情報量は同じでも、スッキリさせることができるでしょう。

そうすれば、もっとこのサイトに入りやすくなるのではないでしょうか。

情報処理にはサイズ制限がある

分かりにくい話を聞くと、よく「もっと噛み砕いて話してよ」などと言います。

言うまでもなく「噛み砕く」ということばには、本来の「噛んで細かくする」という以外に、「むずかしいことを分かりやすくする」という意味もあります。

この二つの意味が同じことばで表現されることには、大きな意味があります。

「分かる」とは「情報が脳内整理棚に格納されること」です。

つまり「分かりやすい」とは、脳で情報が整理されやすいように、あらかじめ情報を加工して送ること。

そしてこの「噛み砕く」の本来の意味である「細かくする」ことも、分かりやすくするための有力な加工手段なのです。

細かくすると「分かりやすい」理由の一つは、情報を脳内整理棚に入れるときの、一回の処理単位に「サイズ制限」があることです。

これは一次記憶(作業記憶)域のサイズに由来するものです。

たとえば、ビール瓶の狭い口が一次記憶域で、瓶の中が二次記憶域と考えるとよいでしょう。

瓶の口より大きいものは、もちろん瓶には入りません。

口より小さなものはスムーズに入っていきます。

同じように、一次記憶域の大きさ制限を超える情報は、脳内整理棚(二次記憶域)へ入れることはできません。

制限内ならどんどん入っていきます。

つまり、単位当たりの情報伝達量が小さいほど、分かりやすい表現になるということです。

伝達の単位とは一個の文、文章の一段落、一枚の道路標識、一画面内のメニュー選択肢の数などです。

単純で分かりやすい例は「文の長さ」です。

サラリーマンの私には、年末に会社から『税額控除年末調整申告書』なるものが渡されます。

損害保険にも入っているので、申告用紙の裏側の説明を慎重に読みました。

ところがこれは「分かりにくい」どころかまったく分かりません(例3―18違反例)。

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これを読んで、すぐ意味の分かる人は、天才か専門家だけでしょう。

たとえば改善例のような表現(内容は不正確かもしれませんが)にはできない、何か素人には知りえない深い事情でもあるのでしょうか。

サイズ制限を順守した表現は、脳にとっては、喉ごしのよい冷えた生ビールのようなものでしょう。

グイグイと飲め、どんどん吸収されていきます。

一方、サイズ制限違反の表現は、大きすぎて喉にひっかかるお餅のようなものでしょう。

情報のスムーズな進入を阻まれるのです。

情報の速度制限を順守する

いままでは情報のサイズ制限という表現を使ってきましたが、さらにそれを単位時間当たりの情報運搬サイズと考え、「情報伝達速度」の制限と考えてもよいでしょう。

そうです。

ある速度制限を超えても情報伝達はうまくいかないのです。

ビール瓶に水を注ぐと考えてみましょう。

瓶の口の大きさ(すなわち一次記憶域のサイズ)制限以上の速度で水(すなわち情報)を注いでも瓶に入りません。

こんなときには漏斗が必要です。

漏斗を使えば、瓶の口が決める速度制限を守りながら、どんどん水を流し込むことができます。

先ほどの損害保険料控除の説明とその改善例で比較してみてください。

例3―19も同じです。

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いずれも改善例の方が見やすい、覚えやすいのは、ハイフン(―)や句読点で区切られたひとかたまりの文や数字が、小さいからです。

こうした情報伝達の大きさや速度は、情報の「送り手」であるあなたが勝手に決めてはいけません。

決定権は「受け手」にあることを忘れないでください。

聴衆の顔色に注意も払わず、一人、早口でしゃべる講演者のあなた、一ヵ所に大量の道路標識を設置し、通過するドライバーがすべてを瞬時に理解することを想定している自治体当局者のあなた、プレゼンの一枚のスライドにゴチャゴチャと大量の情報を詰め込んでしまい、聴衆が混乱していることに気づかないあなた、ビール瓶の口のサイズを無視して、やみくもに大量の水を注ぎかけるようなことは、もうやめて、次のルールを守りましょう。

分かりやすい表現のルール「情報のサイズ制限を守れ。」

【最初から読む】大切なのはサービス精神!読み手への配慮がわかりやすさを生む

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ベストセラーの新装版。分かりにくい表現16の原因と解決方法を全4章で紹介しています

 

藤沢浩治(ふじさわ・こうじ)
慶應義塾大学卒業。「分かりやすく伝える技術」をテーマに企業向けの研修や講演などで活躍中。『「分かりやすい説明」の技術』、『「分かりやすい文章」の技術』、『「分かりやすい表現」の技術』など、講談社・ブルーバックスのシリーズが合計65万部を超える。3部作のほかに『頭のいい段取り・すぐできるコツ』(三笠書房)、など著書多数。

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『新装版「分かりやすい表現」の技術 意図を正しく伝えるための16のルール』

(藤沢浩治/文響社)

抽象的でわからない、図解が見づらいなど言われたことはありませんか?そのままでは伝えたい情報が正しく伝わらず、誤解を招きかねません。情報を正しく伝えられない16の原因を知れば、わかりやすい表現が見えてきます。表現の達人になれる極意を教える新装版です。

※この記事は『新装版「分かりやすい表現」の技術 意図を正しく伝えるための16のルール』(藤沢浩治/文響社)からの抜粋です。

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