仕事や家庭で、自分の言いたいことがうまく伝えられない。それは、「正しい伝え方」ができていないからかもしれません。そんな悩みが解決できるテクニックがまとめられた書籍『新装版「分かりやすい表現」の技術 意図を正しく伝えるための16のルール』(藤沢浩治/文響社)から、「正しく伝わる表現方法」を一部抜粋してご紹介します。
あいまいな表現はなぜあいまいか
ある人を次のように紹介されたら、どう解釈しますか?
①あの方は小児科医の田中さんの息子さんです。
②あの方は小児科医で、田中さんの息子さんです。
①では、小児科医が田中さんその人なのか、田中さんの息子さんなのかがあいまいです。
「小児科医の」が修飾している語が「田中さん」なのか「息子さん」なのかがあいまいだからです。
例3―13の違反例は、ときどき見かける日付の表示法です。
しかし違反例の上の日付は、四月五日なのか五月四日なのかがあいまいです。
同じく違反例の下の日付はさらに、二〇〇二年四月八日なのか、二〇〇二年八月四日なのか、あるいは二〇〇八年二月四日なのか、二〇〇八年四月二日なのか、まったく悩ましい日付です。
例3―14(違反例)は、家の近くにある駐車場です。
写真では分かりづらいので図にしました。
このパーキングメーターは駐車区画の境界線上にあり、どのメーターがどの駐車区画に対応しているのか、瞬間、迷わせます。
料金を払うのは右のメーターなのか、左のメーターなのか。
これらの違反例は、後で紹介するルール13の違反「視覚特性の無視」によって、複数の解釈ができてしまうからです。
ただし、だからといってメーターを区画の中央付近に置くと、使い勝手が悪くなりそうです。
これに対する改善例は通勤途中で見つけた、別の駐車場にありました。
メーターが、該当する区画の方に向けて少し斜めに設置してあるのです。
今まで見てきたどの違反例も、複数解釈できるためにあいまいで「分かりにくい」のです。
そしてどの改善例も、ちょっとした工夫で複数解釈できないようにしているにすぎないのです。
「分かりやすい」とは「分けやすい」ということです。
つまり複数解釈できるということは「分けにくく」したがって「分かりにくい」のです。
矢印がどこに属するか、数字が年月日のどれを示すか、修飾語が何にかかるか、パーキングメーターがどの区画に対応するか、明確に分けることによって複数の解釈がなくなり、分かりやすくなるのです。
【最初から読む】大切なのはサービス精神!読み手への配慮がわかりやすさを生む
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ベストセラーの新装版。分かりにくい表現16の原因と解決方法を全4章で紹介しています