「迷わない」ってスゴイこと! テーマパークの園内マップに学ぶ「分かりやすさ」の極意

仕事や家庭で、自分の言いたいことがうまく伝えられない。それは、「正しい伝え方」ができていないからかもしれません。そんな悩みが解決できるテクニックがまとめられた書籍『新装版「分かりやすい表現」の技術 意図を正しく伝えるための16のルール』(藤沢浩治/文響社)から、「正しく伝わる表現方法」を一部抜粋してご紹介します。

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テーマパークではなぜ全体地図が配られるか

情報発信とは、ある事柄を知らない人に、その事柄を教えることです。

これは、初めてテーマパークを訪れた人にその中を案内(ガイド)することに似ています。

テーマパークの入り口では、たいてい、テーマパーク全体の地図を渡してくれます。

全体の概観をあらかじめ入場者に教え、迷わせないためです。

その概観地図によって、入場者は常に「全体図」と自分の「現在地」を把握し続けることができ、迷わないのです。

逆に言えば、この二つのいずれか一方でも見失えば、迷った状態になるわけです。

運動会などではプログラムが配られます。

これも時間的空間での全体地図と現在地を与えるためです。

「分かりやすい表現」の秘訣の一つとして、この全体地図と現在地を情報の受け手が常に把握できるように配慮することが大切です。

敷地全体の地図を持たないでテーマパークを歩けば当然迷います。

テーマパークでなら、迷っても楽しい迷いですから、それも、まあよいでしょう。

では、多機能電子レンジの取扱説明書を読む場合を想定してください。

これも、「電子レンジの使い方」という一種のテーマパークに入場するようなものです。

膨大な量の情報がただゴチャゴチャと羅列、展示されているだけで、適切なガイドがなければ、入場者は迷います。

いくら展示されている情報が正しいものばかりでも、入場者には効率よく情報が伝わりません。

しかも、入場者は娯楽を目的としてこの展示場に入ったわけではありませんから、適切なガイドがなく迷わせられれば怒ります。

よほど几帳面な人でもない限り、取扱説明書を小説のように初めから順に読んでいくことはまずありません。

自分の知りたいことのために、一時的に取扱説明書を開くのが普通です。

したがって取扱説明書では、知りたい情報を効率よく見つけてもらうため、簡単に検索できることが大切になります。

「あいうえお」順、または「ABC」順で検索できるようにしたり、関連用語の索引を巻末に付けたり、いろいろ工夫されています。

よい構成がよいもくじを生む

しかし、取扱説明書の場合、索引は、検索しやすさの補助的手段であって、抜本策ではありません。

抜本策は、よい「全体地図」を与えることです。

取扱説明書のような場合、よい全体地図とは、よいもくじに他なりません。

そして、よいもくじはよい構成から導かれる結果にすぎません。

ということは、取扱説明書は、何よりもまず、よい構成を出発点としなければならないのです。

構成、配列が悪い場合、どう工夫しても、よいもくじなど生み出しようがありません。

逆に、構成さえしっかりしていれば、よいもくじを生み出すのは簡単なはずです。

では「よい構成」とは、なんでしょうか。

「『分かりやすい』の原点は『分ける』こと」と述べました。

よい構成とは「よく分けてある構成」のことなのです。

例3―9を見てください。

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違反例も改善例も、最終的な項目の数は二〇個です。

同じ項目数を水平方向(大→中→小項目)と垂直方向(同レベルの項目)の拡がりに分類しているわけです。

この両者を比較して何に気づきましたか。

水平方向の拡がりと垂直方向の拡がりのバランスでしょうか。

確かに改善例のほうがバランスがいいですね。

しかし、ここでの核心は別のところにあります。

それは「選択肢の個数」です。

もくじの中で、あるものを探す場合、大項目から順に小項目へと向かって行きます。

この場合、大項目でも、中項目でも、どの場所でも、ある数の選択肢の中から当てはまるものを探すことになります。

違反例では、大項目での選択肢の数は八個です。

一方、改善例の最大選択肢数は、小項目の四個です。

「四個の中から一個探す」ことと「八個の中から一個探す」ことを比較した場合、どちらが簡単ですか。

「少ない数の中から探すほうが楽」というのは単純な原理です。

つまり、改善例の構成のほうが、最大選択肢数が小さいので、検索しやすい構成ということになります。

もちろん最大選択肢数ではなく、平均選択肢数を指標にしてもよいでしょう。

電子レンジの取扱説明書などの場合、この改善例のような構成をもくじにすれば、それは全体地図を把握させるよいガイドになります。

電話機のように、伝えたい情報の総量、内容がすでに決まっている場合、それをどう料理(構成)するかが「表現の鉄人」にとって、腕の見せどころです。

解説書の類では、一冊の展示場の分かりやすさは、その内容よりもガイド役であるもくじ、すなわち構成で勝負の大半が決まるのです。

【最初から読む】大切なのはサービス精神!読み手への配慮がわかりやすさを生む

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ベストセラーの新装版。分かりにくい表現16の原因と解決方法を全4章で紹介しています

 

藤沢浩治(ふじさわ・こうじ)
慶應義塾大学卒業。「分かりやすく伝える技術」をテーマに企業向けの研修や講演などで活躍中。『「分かりやすい説明」の技術』、『「分かりやすい文章」の技術』、『「分かりやすい表現」の技術』など、講談社・ブルーバックスのシリーズが合計65万部を超える。3部作のほかに『頭のいい段取り・すぐできるコツ』(三笠書房)、など著書多数。

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『新装版「分かりやすい表現」の技術 意図を正しく伝えるための16のルール』

(藤沢浩治/文響社)

抽象的でわからない、図解が見づらいなど言われたことはありませんか?そのままでは伝えたい情報が正しく伝わらず、誤解を招きかねません。情報を正しく伝えられない16の原因を知れば、わかりやすい表現が見えてきます。表現の達人になれる極意を教える新装版です。

※この記事は『新装版「分かりやすい表現」の技術 意図を正しく伝えるための16のルール』(藤沢浩治/文響社)からの抜粋です。

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