19歳で母を亡くし、人生で最もつらかった時期の「意味」とは......。脚本家・中園ミホさんインタビュー

『花子とアン』『西郷どん』(ともにNHK)、『やまとなでしこ』(フジテレビ)など、数々の大ヒットドラマの脚本を手掛けてきた脚本家の中園ミホさん。14歳で勉強を始めたという「占い」の話題を中心に、10歳で父を、19歳で母を亡くしたつらい体験や、大ヒットドラマを紡いできた舞台裏について、お伺いしました。

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OL時代は失敗の連続。自分の事務能力に驚いた

数々の大ヒットドラマの脚本を手がける中園ミホさんは、占い師の経験もあるそう。近著の占い本が話題です。

私が占いに興味を持ち、母の友人の有名な占い師・今村宇太子先生に頼み勉強を始めたのが14歳。

占いに関わった時間の方が実は長いんです。

私は10歳の時に父を、19歳で母を亡くしています。

母が亡くなった当時、日本大学芸術学部の放送学科脚本コースに通っていましたが、書いた脚本は、卒論の代わりに提出した母のお葬式を題材にした1本だけです。

母が亡くなってからは、大学に通いながら今村先生のもとで占い師のアシスタントをしていました。

――OLの経験もあるそうですが、仕事はどうでしたか?

大学卒業後は広告代理店に就職しましたが、私は事務能力が低いようで、給茶器を壊す、同じ内容のFAXを取引先に大量に送付するなど、失敗を繰り返す日々でした。

「私はこんなに仕事ができなかったのか」と1年3カ月で退社。

そして、唯一手に職があった占い師の道に進むことに。

――占いの方法はどのようなものなのですか?

私の占いは、年・月・日・時刻の四つの柱で運命を見る、四柱推命です。

四柱推命では誰でも12年に一度、運気が停滞する空亡期というものが訪れます。

その時期は動かず、という占い師もいますが、私は自分に足りないことの準備をする「人生の修行をすべき」期間だと考えています。

うまくいっていたことがままならなくなり、不運なことが起きて気持ちが焦ることもあるでしょう。

しかし、それを乗り越えると、足腰が強くなって、より高い山に登れる。

ステージが上がると前向きにとらえてほしいと思います。

思えば、母を亡くしたのも空亡期で人生の中でいちばんつらかったです。

今村先生には「あなたは家庭のことで苦労をするけど、全て糧になる」と言われました。

あれから40余年、あの空亡期の意味がようやく分かったような気がしています。

大失恋の経験をバネに憧れていた脚本家の道へ

――中園さんが脚本家に転身されたのも、占いが関係しているのですか?

当時私は28歳で、空亡期の直前の年(老熟期)でした。

本来は良い運気の時期なのに、なぜか気持ちがむなしく、脚本家になりたいけれど、自分の才能に自信がない。

でも「やっぱり物書きになりたい」そう思っていた時、知り合いの脚本家さんが「刑事ドラマの脚本を書いてみないか」と誘ってくれたのです。

空亡期に入る前に踏ん張らなきゃ後悔する!と覚悟を決め、手取り足取り教えてもらい、なんとか書き上げました。

――脚本家になるための勉強は何かしていましたか?

26歳のとき脚本家の男性に一目惚れしたのですが、こっぴどく振られました。

でも諦めきれず「脚本家になったらまた会えるかも...」と思い、その人が書いた脚本を書き写すために、国立国会図書館に通ううち、脚本の構造やルールが少しずつ見えてきたのです。

恋愛もの、時代劇、文芸作品、アクションなど多ジャンルを書く人だったので、独学で脚本家修業ができたのは幸運でした。

結果、振られた2年後に脚本家デビューすることができたのですから、大失恋の力はすごいと思います。

取材で引き出した本音が視聴者の心を動かす

――脚本を書くときは、綿密な取材をされると聞きましたが本当ですか?

才能がないと思っているので、その分取材を徹底的にしています。

普段口に出せない本音を、ドラマの登場人物に言わせたいと思っているので取材が欠かせません。

私の取材はおいしいお酒を飲みながら、腹を割って本音で話す。

自分のみっともない話をすると、相手もいろんなことを話してくれます。

私がダメな人なので、安心して本音を晒してくれるのかもしれませんね。

――印象に残っている作品を教えていただけますか?

未婚の母が主人公の連続ドラマ『For You』(フジテレビ)は、私がメインで初めて執筆しました。

自分も未婚の母として息子を育てていたので、日本のどの脚本家よりも取材ができていたと思っています。

保育園の先生たちとも何度も会い、取材しました。

派遣社員が主人公の『ハケンの品格』(日本テレビ)は、別ドラマの取材でOLさんたちに話を聞いているときに企画が浮かび、派遣社員に徹底取材をして書いたものです。

キャビンアテンダント(CA)が主人公の『やまとなでしこ』(フジテレビ)では、実際にCAとサラリーマンとの合コンに同席し、女性陣を観察していたのですが、お金持ちを見極めるのが車のキーだったのが面白かったので脚本に取り入れました。

また、主人公が男性に向けて言う「今夜はたった一人の人に巡り会えた気がする」というセリフも、取材の賜物です。

_AAA0013.JPG「運気が淀んできたら、憧れのアーティストの曲を聴いたり、好きな人が作った映画を見たり本を読んで、いい気の流れに触れましょう」

自分を見つめ直して空亡期明けのために準備

――大ヒットドラマの中には運気が落ちている時に書いたものもありますか?

実は『やまとなでしこ』や、連続テレビ小説『花子とアン』(NHK)、『ドクターX』(テレビ朝日)も、空亡期に書いた作品です。

『花子とアン』は準備から執筆を終えるまで2年弱かかり大変でした。

夜型から朝型の生活に変え、友人からの食事の誘いも断り、向き合いました。

かなりしんどかったですが、乗り越えることができたのは、自分の空亡期を知っていて、頑張ることが「神様から与えられた宿題」と覚悟できたからです。

中には、キャストやスタッフに空亡期の人が多かった作品もあります。

実際、天候不良でスケジュールにハラハラしたり、トラブル発生にドキドキしたりすることもありました。

でも、放送日は決まっているので、みんなで力を合わせて乗り越え、ヒット作になりました。

逆に運気が良いスタッフとキャストばかりを集めての作品作りも何度か試しましたが、撮影は順調で、みんな仲良く現場の雰囲気も良いのですが、どこかパンチが足りないのが気になります。

良い作品を生み出すためには、逆境も必要なのかもしれませんね。

――空亡期に入ったら、注意することは何かありますか?

12年に一度、誰にでも平等に巡ってくる空亡期は運気が停滞する時期ですが、恐れることはありません。

人生の節目なので、どう過ごすかがとても重要になります。

まず、自分に足りないことが何なのかを、考えてみてください。

そうすれば、神様から与えられた宿題が見えてきますし、自分の背中を押すこともできます。

空亡期の2年間、宿題から逃げずに必死に取り組むことが、厄落としにもなります。

空亡期に、家族の看病や親の介護などをすることになる人もいるかもしれません。

その場合もあらがわず、真摯に取り組むのがいいと思います。

困難からも逃げずに神様からの宿題をこなせば、空亡期を抜けた3~4年後には周りの景色が変わり、成長した自分にも気付くはずです。

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取材・文/マルヤマミエコ 撮影/吉原朱美

 

脚本家

中園ミホ(なかぞの・みほ)さん

1959年、東京都生まれ。87年『ニュータウン仮分署』(テレビ朝日)で脚本家デビュー。2007年『ハケンの品格』(日本テレビ)で放送文化基金賞、13年『はつ恋』(NHK)『、ドクターX 外科医・大門未知子』(テレビ朝日)で向田邦子賞と橋田賞を受賞。代表作に『花子とアン』(NHK)『、やまとなでしこ』(フジテレビ)、『西郷どん』(NHK)など。著書に『占いで強運をつかむ』などがある。

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『占いで強運をつかむ』

(中園ミホ/マガジンハウス

数々のヒットドラマを生んできた脚本家中園ミホさんの新著は、占いがテーマ。12年に一度訪れる空亡期との付き合い方や上手な占い活用術などを、占い師の経歴を持つ中園さんが教えてくれる。日頃の生活に占いを取り入れたい人にピッタリの一冊。

この記事は『毎日が発見』2020年8月号に掲載の情報です。

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