「50代は十分若いわ。やりたいと思ったらやりなさい」。ターシャ・テューダーにそう言われ、アメリカのバーモント州を舞台に「夢」を追い続ける写真家、リチャード・W・ブラウン。ターシャの生き方に憧れ、彼女の暮らしを約10年間撮影し続けた彼の感性と、現在75歳になる彼の生き方は、きっと私たちの人生にも一石を投じてくれるはずです。彼の著書『ターシャ・テューダーが愛した写真家 バーモントの片隅に暮らす』(KADOKAWA)より、彼の独特な生活の様子を、美しい写真とともに12日間連続でご紹介します。
自宅の庭全景。
農業に取り組む
前に、ぼくが現在持っている30万坪の土地は、3分の1が森林、3分の1が耕作地、3分の1が草地であると述べたが、森林の大部分はメープル林である。
樹液を採るタップは全体で1100個ほど付けられる。
そんなに大規模ではないが、ぼくが樹液集めをやめてからも、毎年、希望者が採取しに来る。
ぼくには権利料が入る。
トウモロコシ、大豆、牧草の畑は、今もほかの農家に使ってもらっている。
メープルは森で自然に育っているのでそもそもオーガニックだが、農場としてもオーガニック農法の登録をしているので、畑も化学肥料を使わないで耕作している。
牧草は、厩肥と石灰で育てている。
土壌が酸性なので、5~10年に一度、石灰を施してアルカリ性にする必要があるのだ。
石灰は、石灰石の採石場から調達する。
以前は、自分たちが食べる野菜を自宅の庭で育てていた。
庭で野菜が育つのを見るのは楽しかった。
野菜畑のスーザンとバーニー。
夕方、夕食に必要なインゲンやレタス、マスクメロンなどを採りに行ったものだが、マメコガネに悩まされた。
これは日本から渡来した害虫で、アメリカには天敵が少ないので大繁殖し、うちではインゲンやラズベリー、それに花壇の花が大被害に遭った。
また、菜園の世話はどうしても妻のスーザンの役目になり、全部収穫しなければならないときはぼくも手伝ったが、ふたりとも仕事を持っていたし、出張も多かったので、続けられなくなった。
庭作業をするスーザン。
今は、地元の農家を応援したいので、野菜は地元で購入している。
近所に、よく知っている農家の無人スタンドがあるので、そこで購入する。
家の周りの花壇は、レイアウトはぼくがデザインしたが、植物の世話はスーザンが全部やっている。
彼女はとくに鉢植えの腕がすばらしい。
おかげで家の中にはいつも、みごとな鉢植えが飾られている。
ブリックハウスの周辺の花壇は、ターシャの庭からインスピレーションを得て、ぼくが大変な意気込みでつくったものの、ほとんどの植物をだめにしてしまった。
ガーデニングがこんなに難しいものだとは思わなかったし、片手間ではできない仕事だと実感している。
またもや〝知らぬが仏〟だったわけだ。
ターシャがどうしてあんなにすばらしい庭がつくれたのか、あらためて感心する。
スイカズラとバラ。
ターシャ・テューダーとのエピソードやバーモント州の自然の中で暮らす様子が、数々の美しい写真とともに4章にわたって紹介されています