ターシャ・テューダーの生き方に憧れた「ある写真家の庭づくり」/バーモントの片隅に暮らす(11)

「50代は十分若いわ。やりたいと思ったらやりなさい」。ターシャ・テューダーにそう言われ、アメリカのバーモント州を舞台に「夢」を追い続ける写真家、リチャード・W・ブラウン。ターシャの生き方に憧れ、彼女の暮らしを約10年間撮影し続けた彼の感性と、現在75歳になる彼の生き方は、きっと私たちの人生にも一石を投じてくれるはずです。彼の著書『ターシャ・テューダーが愛した写真家 バーモントの片隅に暮らす』(KADOKAWA)より、彼の独特な生活の様子を、美しい写真とともに12日間連続でご紹介します。

ターシャ・テューダーの生き方に憧れた「ある写真家の庭づくり」/バーモントの片隅に暮らす(11) niwa_main.jpg自宅の庭全景。

農業に取り組む

前に、ぼくが現在持っている30万坪の土地は、3分の1が森林、3分の1が耕作地、3分の1が草地であると述べたが、森林の大部分はメープル林である。

樹液を採るタップは全体で1100個ほど付けられる。

そんなに大規模ではないが、ぼくが樹液集めをやめてからも、毎年、希望者が採取しに来る。

ぼくには権利料が入る。

トウモロコシ、大豆、牧草の畑は、今もほかの農家に使ってもらっている。

メープルは森で自然に育っているのでそもそもオーガニックだが、農場としてもオーガニック農法の登録をしているので、畑も化学肥料を使わないで耕作している。

牧草は、厩肥と石灰で育てている。

土壌が酸性なので、5~10年に一度、石灰を施してアルカリ性にする必要があるのだ。

石灰は、石灰石の採石場から調達する。

以前は、自分たちが食べる野菜を自宅の庭で育てていた。

庭で野菜が育つのを見るのは楽しかった。

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野菜畑のスーザンとバーニー。

夕方、夕食に必要なインゲンやレタス、マスクメロンなどを採りに行ったものだが、マメコガネに悩まされた。

これは日本から渡来した害虫で、アメリカには天敵が少ないので大繁殖し、うちではインゲンやラズベリー、それに花壇の花が大被害に遭った。

また、菜園の世話はどうしても妻のスーザンの役目になり、全部収穫しなければならないときはぼくも手伝ったが、ふたりとも仕事を持っていたし、出張も多かったので、続けられなくなった。

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庭作業をするスーザン。

今は、地元の農家を応援したいので、野菜は地元で購入している。

近所に、よく知っている農家の無人スタンドがあるので、そこで購入する。

家の周りの花壇は、レイアウトはぼくがデザインしたが、植物の世話はスーザンが全部やっている。

彼女はとくに鉢植えの腕がすばらしい。

おかげで家の中にはいつも、みごとな鉢植えが飾られている。

ブリックハウスの周辺の花壇は、ターシャの庭からインスピレーションを得て、ぼくが大変な意気込みでつくったものの、ほとんどの植物をだめにしてしまった。

ガーデニングがこんなに難しいものだとは思わなかったし、片手間ではできない仕事だと実感している。

またもや〝知らぬが仏〟だったわけだ。

ターシャがどうしてあんなにすばらしい庭がつくれたのか、あらためて感心する。

ターシャ・テューダーの生き方に憧れた「ある写真家の庭づくり」/バーモントの片隅に暮らす(11) スイカズラ.jpg

スイカズラとバラ。

【まとめ】『バーモントの片隅に暮らす』記事リスト

ターシャ・テューダーの生き方に憧れた「ある写真家の庭づくり」/バーモントの片隅に暮らす(11) バーモント書影.jpgターシャ・テューダーとのエピソードやバーモント州の自然の中で暮らす様子が、数々の美しい写真とともに4章にわたって紹介されています

 

 

リチャード・W・ブラウン
写真家。ハーバード大学で美術を学んだ後、教師をへて写真家に。ターシャと同じボストン出身、バーモント在住。1990年から2007年にかけて、ターシャを何度も訪ねて庭や暮らしを撮影し、『暖炉の火のそばで』『ターシャ・テューダーの世界』『ターシャの庭』『ターシャの家』など多数の写真集を出版。これらの写真集によってターシャ・テューダーの美しい庭やナチュラルライフが広く知られるようになった。ニューイングランドの自然や人々の暮らしをとらえた写真集も定評がある。


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『ターシャ・テューダーが愛した写真家 バーモントの片隅に暮らす』

(リチャード・W・ブラウン/KADOKAWA)

ターシャ・テューダーの生き方に憧れ、ターシャの暮らしを約10年間撮影し続けた筆者は、27歳からターシャと同じバーモント州に住み、広大な自然を守りながら、半自給自足の生活を送ってきました。充実の晩年を送る彼の家・仕事・趣味・病・バーモントへの思い・ターシャへの尊敬の念などを、多数の美しい写真とともに紹介している一冊です。

※この記事は『ターシャ・テューダーが愛した写真家 バーモントの片隅に暮らす』(リチャード・W・ブラウン/KADOKAWA)からの抜粋です。

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