「マイナス言葉」は使わないで。医師・鎌田實さんの「自画自賛」健康法

雑誌『毎日が発見』で好評連載中の、医師・作家の鎌田實さん「もっともっとおもしろく生きようよ」。今回は「自分をほめて、健康になろう!」です。

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何気ない毎日を"意識化"する

毎日の生活は「起伏」がなくて、ちょっと退屈だなあと感じていませんか。

ぼくは、無意識にやっている生活動作を意識化することで、この"日常退屈問題"に対処しています。

たとえば、ごはんを食べたら、「おいしい!」と声に出します。

言葉にしてみると、「まあまあ」のごはんでも、おいしさが倍増して感じられるものです。

お蕎麦屋さんに入ったときも、食べ終わった後、「オヤジさん、おいしかったよ」と必ず言うようにしています。

オヤジさんから笑顔が返って来ると、胃袋も心も満たされるような気がします。

また、その日の目標も「今日はこれを仕上げるぞ」「移動中に、この本を読み切ろう」などと言葉にします。

頭の中にあるぼんやりとした目標も、いったん声に出すと意識化できるので、より明確になり、行動に移しやすくなるのです。

ぼくはスキーが好きですが、この冬は「今日は高速パラレルをしっかりやる」と自分に言い聞かせる日が続きました。

そう声に出した瞬間から、スキー場に行くまで頭の中で高速パラレルのシミュレーションができるので、成功することが多いのです。

達成できたときも、声に出して自分をほめてやります。

最高の気分です。

「マイナス言葉」は使わないで。医師・鎌田實さんの「自画自賛」健康法 kamata03.jpg60キロのバーベルを担いでスクワット。「上げられる!」と言い聞かせながらしている

マイナス言葉は言わない

言葉は大切です。

外来で患者さんを診察するときには、できるだけ否定的な言葉は使わないようにしてきました。

糖尿病の患者さんで、肥満を改善したほうがいい場合でも、「肥満はダメ」とは言いません。

「体重が減ると、血糖値も下がりやすいので、少し体重を減らしていきましょう」という言い方をしています。

「ダメ」というマイナス言葉は、患者さんを非難し、否定しているように聞こえるからです。

人間、非難されたり、否定されたりすると反発心が先行してしまい、生活習慣を改めようという気にはなれないのです。

夫が失敗したとき、「だからあんたは偉くなれないのよ」なんてマイナス言葉を言うと、本当に男は自信をなくして、窓際族になったりするのです。

健康によい食事について講演したり、本に書いたりするときも、ぼくは「食べてはいけない」という言葉は使いません。

塩分を摂りすぎないようにしようとは繰り返し言っていますが、それ以外は「食べたいものは食べていい」という考え方です。

ただし、どうせ食べるなら、健康によい食材も一緒にとろうという提案をすることにしています。

たとえば、ラーメンが食べたければ食べていいのです。

その代わり、ショウガやネギなどの薬味をたっぷり載せたり、味付け卵を追加してタンパク質を摂り、炭水化物に偏らないようにしよう、ということです。

人から「これはダメ」と言われて、それに従うのではストレスがたまります。

自分の体の操縦者は自分なのですから、やはり、自分の意思で少しずつ習慣を変えて、健康的な食生活に近づいていってもらいたいと思っています。

「実感する」「思い込む」の力

健康寿命の測定方法には、いろいろな方法がありますが、そのなかに「あなたの健康状態はいかがですか」と尋ねたものを集計したものがあります。

客観的な指標で健康を判定するのではなく、本人の主観に基づいて判定しているのです。

主観的なものは、あまり精度が高くないのではないかと思われがちですが、そんなことはありません。

「自分は健康だ」と実感できる人は、やはり実際に健康であることが多く、逆に、「健康ではない」という人は、病気になる率や死亡率が高くなるのです。

ちなみに、長野県は約3年おきの調査で、2010年から4回連続、健康寿命日本一になっています。

これは、国民健康保険中央会が「要介護1以下を日常生活動作が自立している期間」とする客観的な指標を用いて算出したものです。

全国一位になった長野県の健康寿命は男性80.7歳、女性84.7歳でした。

しかし、主観的に測定する健康寿命の調査では、長野県は上位にランキングされていません。

今後、長野県民が、健康の自己評価を高め、「私は健康です」と実感できる人が多くなれば、長野県のランキングも上がっていくのではないでしょうか。

健康は、自分をご機嫌にすることから

ぼくは、朝起きたら、「今日も調子がいい」「ぼくは元気だ」と自分に言い聞かせています。

顔を洗って、身支度をしているときに鏡を見ながら、最高の笑顔をつくります。

だれかに見せるための笑顔ではありません。

自分自身をご機嫌にさせるための笑顔です。

「マイナス言葉」は使わないで。医師・鎌田實さんの「自画自賛」健康法 kamata02.jpg自分が自分にいい笑顔をする。

このほかにも、スキーでいいターンができたら、「若い人にも負けてないぞ」と心のなかでガッツポーズをします。

自画自賛。

これでもいいのです。

人間は、人からほめられるとうれしいものですが、自分で自分をほめても、うれしいものです。

快感ホルモンのドーパミンが分泌されるからです。

こうやって自分をほめて、ご機嫌にすると、心が元気になっていきます。

そして、心が体にいい影響を及ぼし、体も元気になっていくのです。

「今日も、スクワットとかかと落としをやったぞ。私ってえらい!」 

毎日のちょっとしたことでもいいからどんどん自分をほめましょう。

子どもをほめて育てるように、たくさん自分をほめて、ますます健康になってください。

鎌田實さんの人気連載「もっともっとおもしろく生きようよ」その他の記事はこちら

 

<教えてくれた人>

鎌田 實(かまた・みのる)さん

1948 年生まれ。医師、作家、諏訪中央病院名誉院長。チェルノブイリ、イラクへの医療支援、東日本大震災被災地支援などに取り組んでいる。『だまされない』(KADOKAWA)など著書多数。

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「ぼくは67歳で筋トレを始めてから、人生が変わった!」と話し、ご自身を「スクワット伝道師」という鎌田實先生(71歳)の健康法を大公開。「スクワット」や「かかと落とし」など無理なくできる「筋トレ」の方法をはじめ、ゆで卵やジュースなどの「若返りごはん」レシピ、「心の若返り方」や、若々しい先生の「着こなしの極意」まで、盛りだくさん。保存版の一冊です!!

この記事は『毎日が発見』2020年3月号に掲載の情報です。

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