文章を書く際には、読み手にとってわかりやすくするために、話の順番を決める、同じ話はまとめるなどの工夫をすることはご存じの方が多いと思います。しかし、接続詞についてはどうでしょうか? 接続詞は文章の筋道がわかりやすくなるような「道路標識」の役割をしている、と『文章が一瞬でロジカルになる接続詞の使い方』(吉岡友治/草思社)では紹介されています。この「道路標識」の役割とは、具体的にどのような役割なのでしょうか?
■接続詞の使い方を誤ると、誤解と悪印象を与える
「要するに」が会話の中に何度も出てくるわりに、結論や言いたいことを話さない人に出会ったことはありませんか? 本書の著者によれば、「要するに」という接続詞は、「いろいろ推論を重ねたあげくに、結局何が言えるか」を示す役割があります。
「要するに」を会話の中で使うと、聞き手は、話し手がこれから結論を述べるのだと期待します。しかし、この期待に反して結論以外のことが述べられると、聞き手は混乱し、話の内容をよく理解できなくなってしまうのです。最悪の場合、話し手の言いたいこととは真逆の内容だと誤解されてしまいかねません。同時に、「説明が下手な人だ」という悪印象を聞き手に持たれてしまいます。このように、接続詞の使い方を誤ると、聞き手に誤解を与えるだけではなく、悪印象まで持たれてしまいかねません。この例からわかるのは、接続詞には、話し手が、情報を伝えたい相手に対し、次に話すことの内容を予想させ、心構えをさせる役割があるということです。
■接続詞に注意を払うと、自然と文章が整理される
会話の中で接続詞の使い方を間違えている場合は、その場でどのような意味かを尋ねることができます。しかし、文章では、その場で書き手に意図を確認することはできません。したがって、文章を書く際には、読み手に誤解を与えないように、かつ、わかりやすく書く必要があるのです。接続詞に注意を払って文章をチェックすると、これらの問題は自然と解消されます。
実際に文章を書く際には、まず、下書き代わりの紙に思いつくままに文を書いていきます。次に、一つひとつの文の関係を確かめます。同じ内容が続くのか、逆の内容が続くのか、結論が示されるのかなどをチェックしましょう。そして、文の関係に合わせて、接続詞を吟味します。同じ内容が続く場合には、接続詞をつける必要はありません。接続詞は、読み手が次の文の内容に従い、あらかじめ頭の切り替えをしてもらうために使われるからです。頭の切り替えが必要でない部分では、不要ということになります。接続詞をつけてみてしっくりこない場合は、文の流れが間違っている、文と文との間に説明が必要である、もしくは接続詞が間違っている、のどれかです。
以上の手順で文章をチェックしていくと、言いたいことがはっきりするだけではなく、文章の流れがスムーズになり、自然と文章が整理されます。その結果、読み手にとっても読みやすく理解しやすい文章になるのです。
■「そして」「しかし」以外は知らない人が多い
著者によれば、学校教育の中では「そして」と「しかし」については習うものの、それ以外の接続詞については学んでいない人がほとんどなのだそうです。このため、私たちは「要するに」だけではなく、「むしろ」や「ただし」、「したがって」など、多くの接続詞については理解せずに使っているかもしれません。本書では、文章で使われる主要な接続詞について、一つひとつの意味と使い方が紹介されています。接続詞の意味や使い方は、辞書にも載っている場合がありますが、特に本書がおすすめである理由は、わかりやすい解説と文例が豊富なだけではなく、それぞれの接続詞のニュアンスについても解説されている点です。
文章を書く機会があるという方は、一度、本書を手に取ってみられることをおすすめします。
( 吉岡 友治 / 草思社)
文章は「接続詞」で変わる。書くときに接続詞を意識するだけで、自分の考えが整理され、何をどう伝えるべきかが見えてくる。簡潔に自分の考えをまとめるのが苦手という人に最適。レポートや小論文、企画書、報告書がたちまち見違える、ロジカルライティングの超入門書。