大正7年、社会的な力を持たない漁村のおかみさんたちが立ち上がり、世の中を変えるきっかけとなった富山の「米騒動」。映画『大(だい)コメ騒動』は、その実話が描かれ、富山出身の柴田理恵さんも出演。この映画への思いを伺いました。
女性の強さが世の中を変える
──映画の米騒動は、富山では有名な事件だそうですね。
歴史の授業で習うんですよ。
魚津のおっかさんたちが起こした米騒動だって。
全国的に知られているわけじゃないといま、初めて知りました(笑)。
──映画をご覧になって、いかがでしたか?
難しい歴史大作じゃなくて、ちゃんと庶民の話になっているのがいいなと思いました。
井上真央さんが演じている主人公のいとさんは、富山の農村の出身なんですね。
富山は農村部と漁村部で人の気質が違うんです。
私は山の方の出身なのですが、農村部は言葉もおっとりしているんですよ。
漁村の方が荒々しいんです。
食べることに困らない農村部で育った文学少女のいとさんが、その日のお米に困るような漁村にお嫁に来て、さぞかしびっくりしただろうなと。
その中でいとさんがたくましい女性に成長していくんです。
ほかの女性たちも世の中の理不尽にぶつかって、それぞれの立場でおかしいぞ!と声を上げ成長していく。
そういうところが、いいなぁと思いましたね。
──富山の女性の強さというのが、あるのでしょうか。
人によると思いますが(笑)、たしかにうちの祖母もはっきりものを言う人でしたね。
自分の息子が出征する時に「息子が戦死するかもしれないのに、万歳なんてするもんか」と言った人なんですよ。
皆が言えないことを言う、この映画で室井滋ちゃんがやった〝おばば〟みたいな人でした。
──おばばを筆頭に、村の女性たちが結集して、その中のひとりの浮気した夫をとっちめにいく場面が面白いです。
いいですねぇ、ああいうのは(笑)。
男たちもチームで漁をするから、女性たちも結束が固かったんでしょうね。
いまだから分かる故郷の良さ
──柴田さんと左時枝さんのシーンも楽しかったです。
本物の姉妹みたいでした。
同じような格好をしたら、本当に似ていましたね(笑)。
きっと富山顔なんだと思う(笑)。
時枝さんも富山出身。
──故郷への思いは、年齢とともに変わったりしますか?
若い頃は重苦しくて鬱陶しい存在でしたが、離れて良さが分かって、いまは帰ると落ち着きます。
故郷が自分を作ってくれたなと。
年を経て分かることがいっぱいあります。
──話は変わりますが、2020年を振り返っていかがですか?
所属するワハハ本舗の本公演が中止になったり、何カ月も仕事がゼロになって、私も落ち込んだことがありました。
でも、秋に久しぶりに舞台の稽古をしたら、ああやっぱり私はこの仕事が好きなんだなと。
大変な一年でしたが、自分の原点に立ち返ることができて。
喪失感だけだと前に進めないけれど、ここが自分の原点ということが一つでも発見できたら、次の年はそこから出発する気持ちでやれると思うんです。
年齢に対して弱気になっていた自分からも脱して、初心に帰れたのは良かったと思います。
──この映画の女性たちも崖っぷちでふんばっていて、本当にエネルギッシュです。
家族のためだけにがんばって、自分のことはお留守で。
女性はいつの時代も一緒だなと思いました。
大変な時、つらい時は、とにかく負けないことですよね。
勝たなくてもいいから。
この映画の女性たちもきっと同じだったと思います。
取材・文/多賀谷浩子