軽妙な語り口でおなじみの森永卓郎さんは、実は「余命6カ月」と宣告された糖尿病を克服した経験の持ち主。そんな困難を乗り越えたからこその提言を聞いてきました。「日本経済」「年金」、そして「糖尿病の克服」。今回は日本経済が失速した理由について、です。
日本のGDPシェアは20年で3分の1に転落
──昨年発売の『なぜ日本だけが成長できないのか』では、平成の時代、日本経済はどう変化したのかを独自の視点で解説されました。元号も変わるいま、私たちは時代の変化にどう対応したらよいのでしょう?
世界の中で日本経済が占めるGDPのシェアは、1995年に約18%あったんですが、なんと現在は約6%、わずか20年で約3分の1に転落しているんです。このことは裏返すと、普通に経済成長していたら、いま頃我々の所得は3倍になっていたということなんですよ」
──なぜそんなことが起こったのでしょう?
この期間、人口も労働力も増えている。ではなぜかというと、端的には構造改革がもたらしたものだと思います。典型的には、小泉政権時代に起こったことですが、日本が戦後営々と築いてきた大切な企業資産を、不良債権処理というお題目で、二束三文でハゲタカに売り渡したんですね。
身近なところでいうと、ゴルフ場。
現在、日本のゴルフ場の最大のオーナーはハゲタカ・ファンド(外資系企業)です。ゴルフ場を作るのには100億円ほどかかるんですが、不良債権処理の過程で、わずか数億円で売り渡されてしまった。同様に、都心の不動産も軒並み二束三文でハゲタカに売り渡されてしまったんです。そういうことが企業レベルでいっぱい起こったのです。だから、日本の企業が日本のものではなくなってしまい、おのずと経済は失速したのです
──その後の時代に、どう影響したのでしょう。
国民が構造改革と不良債権処理という小泉劇場に熱狂している間に、それをうまく利用して、本来ならば生き残っているべき企業が、まるでマグロの解体ショーのように次々と売り渡されたというのが平成の時代に起こった事態です。実は、二束三文で売り飛ばされた不良債権企業の大半は黒字だったんです。でもそういうことはほとんど伝わらなかったんですよね。
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取材・文/笑(寳田真由美) 撮影/松本順子