長寿の時代だからこそ! 「生と死」に向き合うヒントをくれる3冊

1808p076_01.jpgいかに生き、死ぬか。本を読む楽しさは、そのヒントと出合えることかもしれません。今回は「生と死」をテーマに読みたい作家を、日本文化研究の第一人者であり、稀代の読書家として知られる松岡正剛さんに選んでいただきました。

 

母を亡くした幼子に残した愛と生き方
『小さき者へ・生れ出づる悩み』
有島武郎 著 新潮文庫 340円+税

有島武郎(たけお)の『小さき者へ』は、幼くして母を亡くした自分の3人の息子に向けて、手紙形式で書かれた作品です。お前たちは不幸だが、人間は生まれる時も、死ぬ時も一人。孤独だが恐れずに歩めと説く親心は、哀切極まりなく、涙を誘います。有島は、生と死は一つのものということを思索し続けた作家でした。そして、妻の死から7年後、45歳で女性と心中してしまう。彼の作品から生と死を考えてみるのもおすすめです。

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生と死と美しさを男女の物語で描き続けた文豪
『雪国』
川端康成 著 角川文庫 362円+税

有島武郎はいかに生きるべきかを作品にしましたが、美しいものは儚(はかな)い[別れや死がある]ということを見事に男女の物語にしたのが川端康成です。『雪国』や『古都』、『美しさと哀しみと』などは、一度は読んでおくべき名作です。ノーベル文学賞受賞記念講演の『美しい日本の私』では、日本の伝統文化と日本の死生観を語り、自殺については懐疑的だった川端ですが、最期は自ら死を選んだ。本当に美しいものと、ともに滅びることが彼の美学だったのかもしれません。

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いま、再評価。死の香り漂う詩的な短編
『梶井基次郎全集 全一巻』
梶井基次郎 著 ちくま文庫 880円+税

「桜の樹の下には屍体が埋まっている! これは信じていいことなんだよ」と始まる『桜の樹の下には』。友人の死因を探り、月世界へ行ったと考える『Kの昇天』。丸善の棚に黄金色に輝く物を置き、突拍子もない想像をする『檸檬(れもん)』など、梶井基次郎の作品詩的で想像力豊かで、不思議な死の香りが漂っています。重度の肺結核を煩い、わずか20ほどの短編を残して31歳で夭折(ようせつ)した梶井。理系で詩人で、新たな文学を拓(ひら)いた夭折作家としては宮沢賢治と双璧。いま再評価されているので、ぜひ読んでほしい作家です。1808p076_04.jpg 

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取材・文/丸山佳子 


松岡正剛(まつおか・せいごう)

1944年、京都府生まれ。オブジェマガジン『遊(ゆう)』編集長、東京大学客員教授、帝塚山学院大学教授などを経て、現在、編集工学研究所所長、イシス編集学校校長。2000年にインターネット上でスタートした本の案内「千夜千冊」は、2018年7月現在で、1679冊を突破している。


 

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新刊『千夜千冊エディション デザイン知』

  『千夜千冊エディション 本から本へ』

  『千夜千冊エディション 文明の奥と底』

角川ソフィア文庫 各1,280円+税

松岡さんの書評『千夜千冊』から生まれた新シリーズが刊行中。『デザイン知』では昭和期の数寄屋大工の棟梁・平田雅哉(まさや)の『大工一代』、映画衣装デザインなどで活躍した石岡瑛子の『I DESIGN(私デザイン)』など35冊を解説。『本から本へ』では道元の『正法眼蔵』、ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』など24冊を紹介。8月25日刊行予定の『文明の奥と底』では、世界的なベストセラー『銃・病原菌・鉄』『文明の衝突』をはじめ歴史学や政治学、宗教学の名著26冊を取り上げています。

この記事は『毎日が発見』2018年8月号に掲載の情報です。

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