ご存じですか?「風邪」をひきにくくなる上咽頭の治療法「EAT」とは

皆さん「鼻うがい」って聞いたことありますか? 医学博士・堀田修先生は「上咽頭のウイルスを洗い流してくれるこの『鼻うがい』こそ、ウイルスなどの感染予防の新定番になるはず」と言います。そこで、堀田先生の著書『ウイルスを寄せつけない! 痛くない鼻うがい』(KADOKAWA)より、鼻うがいのチカラや、「痛くない」「手軽な」やり方をご紹介します。

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一年中風邪をひいている「慢性風邪」が治る

この連載のメインテーマは、新型コロナウイルス感染症の対策に通じるであろう「鼻うがいによる風邪予防」です。

そして上咽頭は、重要なキーワードです。

ここからは上咽頭の治療について掘り下げてみたいと思います。

私は外来の診療をしていて、「一年中風邪をひいている」「季節の変わり目には必ず風邪をひく」「周りの人の風邪をすぐもらう」と話す患者さんが少なからずいることに気づきました。

そういう人は、他人の風邪はすぐもらってしまうのに自分の風邪は人にうつさない、という特徴があります。

このような人を調べてみると、風邪をひいていないときも激しい慢性上咽頭炎がみられることが分かりました。

つまり、風邪を引き起こしているのはウイルスではないのです。

もともと慢性上咽頭炎を起こしていて、寒さや過労などで慢性上咽頭炎が悪化したときに、風邪をひいたと感じているのです。

そして、慢性上咽頭炎の治療を続けて上咽頭の状態が改善することで、風邪をひかなくなります。

EAT(※)はもともと、ウイルスによる急性の風邪によく効く治療です。

上咽頭擦過療法(Epipharyngeal Abrasive Therapy)、通称EAT(イート)。

急性の風邪であれ慢性の風邪であれ、EATは「風邪」に有効な治療法だといえます。

鼻うがいを習慣化した患者さんは、風邪をひきにくくなったと感じることが多いようです。

これは、鼻うがいでウイルスなどによる急性の風邪を予防できていることと、慢性上咽頭炎の状態が以前より改善したことの両方が関係していると考えられます。

私の外来には、EATによって慢性上咽頭炎の症状が改善した後も、健康維持を目的として月に1回程度の割合でEATを受けに来る患者さんが相当数います。

これらの患者さんが共通して口にするのは「風邪をひかなくなった」という言葉です。

私の知る限り、EATを日常診療に取り入れている医師の多くは、EATを行うことで患者さんが風邪をひきにくくなったという印象をもっているようです。

普段の上咽頭の状態が、風邪のひきやすさと密接に関連しているのだと考えられます。

では次に、そのEATについて説明します。

EATを行うとさまざまな症状が改善

上咽頭擦過療法(Epipharyngeal Abrasive Therapy)、通称EAT(イート)は、0・5~1%の塩化亜鉛溶液を浸した綿棒を鼻と口から入れて、咽頭をこする単純な治療です。


EAT(上咽頭擦過療法)のやり方

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上咽頭擦過療法=Epipharyngeal Abrasive Therapy(EAT)

最初は綿棒の先端に塩化亜鉛溶液を付けて鼻から挿入し、上咽頭を強めにこする。次に口か
らも挿入して上咽頭を強めにこする。痛みが強いときは鼻からの挿入だけを行う場合もある。


EATを行うことによって、上咽頭にたまっていた不要な血液と病原体やサイトカインなどの炎症物質が排出され、上咽頭のうっ血とむくみが改善します。

また、EATにより脳神経のひとつである迷走神経が刺激され、免疫機能と脳機能にも良い影響を及ぼします。


EATは炎症物質や病原体などを排出

入稿_鼻うがい-71.jpgEATを行うことで、不要にたまっていた血液とともに、サイトカインなどの炎症物質やウイルスが排出されてむくみが改善する。(Hotta O 2017を改変)


EATは炎症があると痛いのですが、副作用のほとんどない安全な治療だといえます。

治療自体は単純ですが、医療行為なので実施できるのは医師のみです。

炎症があると、治療中にしばしば咳が出ます。

EATを行うことで、次のような症状の改善が望めます。

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①上咽頭の炎症そのものによる症状
頭痛/後鼻漏/咳/発熱/のどの痛み/のどがつまった感じ/鼻づまり/嗄声(声がれ)/
首・肩こり など

②自律神経障害による症状
慢性疲労/倦怠感/めまい/朝の起床困難/胃のもたれ/下痢/腹痛/集中力低下/過呼吸
/しゃっくり など

③免疫の異常による症状・病気
●IgA腎症...免疫グロブリンA(IgA)が、腎臓の糸球体に沈着して血尿が出る病気
●掌蹠膿疱症...手のひら、足の裏にうみをもった水ぶくれができる病気
●ネフローゼ症候群...腎臓の糸球体から尿の中に多量のたんぱく質が漏れ出る病気
●炎症性腸疾患...自分の免疫細胞が腸の細胞を攻撃して起こる、潰瘍性大腸炎とクローン病
●関節炎...関節が炎症を起こして痛みが出て関節の変形が起こる病気
●アトピー性皮膚炎 など

このように、実にさまざまな症状の改善につながります。

症状の改善までにどれくらいの期間を要するかに関しては、即効性のあるものから、1年以上かかるものまであります。

例えば、頭痛、のどの痛み、首・肩こりなどは、週に1回のEATを行うと数回で改善することが多いです。

一方、鼻水が鼻から出ないでのどの方に流れ落ちる後鼻漏は、改善を自覚するまで半年から1年ぐらいかかることがしばしばあります。

EATは上咽頭に炎症があると痛みの強い治療ですが、炎症が改善するにつれて治療のときの痛みも少なくなります。

完全に症状がなくならなくても、10回ぐらい行うと患者さんは治療前より症状が改善したと自覚することが多いようです。

私は「だんだん症状が軽くなりますので、まずは10回がんばりましょう」と患者さんを励ましながら治療を行うようにしています。

【まとめ読み】『痛くない鼻うがい』記事リスト

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簡単鼻うがいで、感染症からしっかり身を守れる方法を、6章にわたって分かりやすく解説

 

堀田修(ほった・おさむ)
防衛医科大学校卒業、医学博士。医療法人モクシン堀田修クリニック院長、認定NPO法人日本病巣疾患研究会理事長、IgA腎症根治治療ネットワーク代表、日本腎臓学会評議員。

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『ウイルスを寄せつけない! 痛くない鼻うがい』

(堀田修/KADOKAWA)

新型コロナウイルスを撲滅するのは難しく、「いかに感染を防いで共存するか」に注目したいこの時代。マスク、手洗い、密を避ける、換気といった従来の予防策に加え、上咽頭のウイルスを洗い流してくれる「鼻うがい」こそ、感染予防の新定番になるはず。withコロナ時代における、注目の一冊です!

※この記事は『ウイルスを寄せつけない! 痛くない鼻うがい』(堀田修/KADOKAWA)からの抜粋です。
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