ヨード液を利用して「鼻うがい」をしてもいいの?/鼻うがいQ&A(2)

皆さん「鼻うがい」って聞いたことありますか? 医学博士・堀田修先生は「上咽頭のウイルスを洗い流してくれるこの『鼻うがい』こそ、ウイルスなどの感染予防の新定番になるはず」と言います。そこで、堀田先生の著書『ウイルスを寄せつけない! 痛くない鼻うがい』(KADOKAWA)より、鼻うがいのチカラや、「痛くない」「手軽な」やり方をご紹介します。

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Q.鼻うがいの洗浄液を作るとき、水に入れるのはどんな塩がおすすめですか?

A.最も安全なのは、医療用の「日本薬局方 塩化ナトリウム」ですが、手に入りにくいのが難点。「精製塩」を使うと良いでしょう。

食品を安全に摂るために、日本には食品や添加物などの基準、検査などを定めた「食品衛生法」があります。

ところが、この食品衛生法では食用塩の品質規格が定められていません。

食塩の種類はさまざまで、食塩を固まりにくくするために炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムを添加したり、湿気を防ぐためにクエン酸鉄アンモニウムや塩化マグネシウムなどを添加したタイプも市販されています。

医療用の塩化ナトリウムに最も近いものは「精製塩」(塩化ナトリウム純度99%以上)。

しかも最も安価なので鼻うがい用の塩としておすすめです。

しかし、塩化ナトリウムの純度が高くないと鼻うがいに適さないというわけではありません。

海外では塩化ナトリウム以外にミネラルなどを含んだ海水を薄めたものが鼻うがい用の洗浄液として市販されていて、生理食塩水よりも効果が優れているという報告もあります(KoksalT2016)。

実際、日本でも海水を煮詰めて作られた「塩の精」を鼻うがいに使う人がいます。

また、熱を加えない常温瞬間空中結晶製塩法で沖縄の海水から作られた「ぬちまーす」などを、鼻うがいに愛用している人もいます。

鼻うがいに使うのに絶対に安全だといえるのは、医師の処方が必要な「日本薬局方 塩化ナトリウム」だけですが、入手が難しく、毎日行う手軽な鼻うがいには不向きです。

それ以外の塩は、鼻うがい用としての安全を担保するエビデンスが現状ではありません。

ただし先ほども触れたように、塩は食品衛生法では品質規格がありませんが、コーデックスという食品の国際規格(世界的に通用する食品規格)では定められています。

それを満たして市販されている塩であれば、「鼻うがい」に使用可能と思われます。

Q.洗浄液にポビドンヨード製剤(ヨード液)を入れたら治療効果が高まりますか?

A.鼻うがい洗浄液にヨード液はNG。鼻うがいには推奨できません。

「細菌、ウイルス、真菌に対して殺菌作用のあるヨード液を混ぜれば、鼻うがいの効果が高まるのでは?」という発想をする人もいるかもしれません。

一時期、ヨード液でガラガラ口うがいをすれば、新型コロナウイルス感染症の重症化を防げるのではないか、と話題になりました。

しかし、鼻うがいには推奨できない理由がいくつかあります。

第一は甲状腺への影響です。

私たちが体内で甲状腺ホルモンを作るには、1日0・05~0・15mg程度の微量のヨードが必要ですが、過剰なヨードの摂取は甲状腺機能を弱めることにつながります。

ヨード液の消毒成分の主体はヨードです。

例えば、ポビドンヨード製剤の医療用のうがい液である「イソジンガーグル」には、1ml当たり7mgのヨードが含まれています。

成人が1日に必要とするヨードはせいぜい0・2mg ですから、実に35倍ものヨードが1mlのうがい液の中に含まれていることになります。

ガラガラ口うがいであれば全部吐き出すので問題なさそうですが、それでも一部は粘膜から吸収され、毎日うがいするとヨード過剰状態を生じる危険性があります。

実際に、毎日数回ヨード液でうがいをする習慣のある人が、ヨード過剰状態となったことで生じた甲状腺機能低下症例が報告されています(SatoK2007)。

風邪や扁桃炎でヨード液を使ったうがいを一時的に行うことは、甲状腺の病気やヨードアレルギーの人以外では、問題はありません。

しかし、風邪や扁桃炎が治っても使い続けたり、日常的に使うことは、原則として避けるのが妥当とされています。

口に含んだうがい液を全部吐き出すガラガラ口うがいでも、このようなリスクがあるのですから、洗浄液を一部飲み込んでしまう鼻うがいでは、当然のことながらヨード過剰摂取のリスクが高まります。

一時的でも避けた方が無難です。

第二に、ヨード液を用いることによる風邪の予防効果そのものに対する疑問です。

水でのガラガラ口うがいで認められた風邪の予防効果が、意外なことにポビドンヨード製剤を用いたうがいでは認められませんでした。

関連記事:どんな効果があるの? 鼻うがい「4つのメカニズム」とは

この理由として、免疫に役立っている口腔内の常在細菌叢(口腔内フローラ)をヨードが破壊してしまうことが挙げられています。

鼻や上咽頭にも常在細菌叢はありますので、ヨード液の鼻うがいでも同じようなことが起こる可能性があると思われます。

食塩水には抗ウイルス作用があるので、殺菌作用を強化する目的であれば、鼻うがいで使う洗浄液の食塩濃度を高めるのが最も効果的な方法だと思います。

風邪予防のためなら違和感が最も少ない生理食塩水の濃度(0・9%)で良いと思いますが、風邪の治療が目的であれば1・5%~2・5%程度の高張食塩水(濃い食塩水)がおすすめです。

【まとめ読み】『痛くない鼻うがい』記事リスト

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簡単鼻うがいで、感染症からしっかり身を守れる方法を、6章にわたって分かりやすく解説

 

堀田修(ほった・おさむ)
防衛医科大学校卒業、医学博士。医療法人モクシン堀田修クリニック院長、認定NPO法人日本病巣疾患研究会理事長、IgA腎症根治治療ネットワーク代表、日本腎臓学会評議員。

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『ウイルスを寄せつけない! 痛くない鼻うがい』

(堀田修/KADOKAWA)

新型コロナウイルスを撲滅するのは難しく、「いかに感染を防いで共存するか」に注目したいこの時代。マスク、手洗い、密を避ける、換気といった従来の予防策に加え、上咽頭のウイルスを洗い流してくれる「鼻うがい」こそ、感染予防の新定番になるはず。withコロナ時代における、注目の一冊です!

※この記事は『ウイルスを寄せつけない! 痛くない鼻うがい』(堀田修/KADOKAWA)からの抜粋です。
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