経験豊富な登山者も発症⁉ ブームの影で注目される「高山病」/やさしい家庭の医学

pixta_30237354_S.jpg病気やけがをしたとき、それに関する用語(病名・症状など)の意味をそもそも知らなかった、なんてことはありませんか? また、時代の流れとともに「ADHD」「ノロウィルス」など新しい用語もどんどん現れています。

書籍『やさしい家庭の医学 早わかり事典』で、病気や健康分野の正しい知識を身につけ、いざというときに役立てましょう。

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低酸素がもたらすさまざまな症状

「高山病」

●エベレストの酸素は地上の3分の1

「高山病」とは、低酸素の環境に身を置くことによって生じる症候群で、慢性と急性とに分かれますが、一般に高山病という場合は急性の高山病をさしています。

かつては一部の登山家や調査を目的とする学者などしか高い山に登ることはありませんでしたが、現在では登山ブームや航空機関の発達により、一般の人でも気軽にそこへ行くことができるようになりました。

ですが、高山病は一般的に2000メートル付近の高地であれば、誰もが罹(かか)りうる症状です。世界遺産に登録されたことによって国内外からの登山者が急増している富士山の場合、頂上は3776メートルと十分に高山病の可能性がある高地ですが、5合目でも2300メートルに達しますので、これまた高山病に罹る恐れがあるということになります。

 

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高山病の症状は、高地に到達後8~48時間以内に発症するケースが多く、頭痛にはじまり、吐き気や倦怠(けんたい)感、睡眠障害、めまいなどの症状が伴います。安静にしていれば回復傾向に進みますが、急性高山病の場合は、肺に水がたまる高地肺水腫(すいしゅ)という病気に進行することも少なくなく、最悪の場合は死に至ります。とくに、3000メートルに近い高地まで登る人は、この病に罹る可能性は少なくありません。

では、どのような人が高山病に罹りやすいのかというと、実はこれといって条件はありません。つまり、高地に登ってみないと高山病に罹るかどうかは分からないのです。これは、十分に高地に馴(な)れた人であっても、その日の体調は異なりますし、体力がある人だからといって高山病に罹らないとはいえないためです。

高山病に罹らないようにするためには、高度順応といって、徐々に高度を上げていく方法があります。飛行機で急に2000メートルを超える場所まで飛び、そこからトレッキングするといったことは極力控え、2~3日かけて徐々にその高度まで上げていくことが必要です。

また、もし高山病に罹ってしまったら、その場に留まらず、とにかく下山するのが先決です。高山病に罹ると意識障害が現れるようになるため、自力で下山することが困難になるためです。

高地の酸素は、一般的に、高度3000メートルでは地上の3分の2、5000メートルで半分、エベレストの頂上(8848メートル)では3分の1ともいわれています。高地への登山やトレッキングに出かける人は、高山病のリスクを十分に理解したうえで望むことが必要になるでしょう。

 

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中原 英臣(なかはら・ひでおみ)

1945年、東京生まれ。医学博士。ニューヨーク科学アカデミー会員。東京慈恵会医科大学卒業。77 年から2 年間、アメリカ(セントルイス)のワシントン大学にてバイオ研究に取り組む。その後、山梨医科大学助教授、山野美容芸術短期大学教授を経て、現在、新渡戸文化短期大学学長、早稲田大学講師。おもな著書に『ウイルス感染から身を守る方法』(河出書房新社)、『こんな健康法はおやめなさい』(PHP 研究所)、『テレビじゃ言えない健康話のウソ』(文藝春秋)などがある。


 

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『やさしい家庭の医学 早わかり事典』

(中原英臣[監修]/KADOKAWA)

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この記事は書籍 『やさしい家庭の医学 早わかり事典』からの抜粋です
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