患者の70%以上は中高年の女性。「ドライマウス」セルフチェック【専門医の見立英史先生】

患者の70%以上は中高年の女性といわれる「ドライマウス」。唾液の分泌減少により口内が乾燥し、食事の摂取に支障が出たり虫歯や歯周病になりやすくなります。今回はその原因や改善のためのマッサージ、セルフチェックなどについて専門医の見立英史先生にお話をうかがいました。

この記事は月刊誌『毎日が発見』2024年4月号に掲載の情報です。

主な原因
・薬の副作用
・ストレス
・加齢による筋力の衰え

主な治療・改善法
・唾液腺のマッサージ
・口の筋肉を意識的に動かす
・ 保湿剤の使用
・こまめな水分の摂取
・虫歯や歯周病の治療

ドライマウスは唾液の分泌量が減り、口の中が乾燥している状態をいいます。

口の中がネバネバする、パンなどの乾いた食べ物がのみ込みにくくなるなどの症状がよく見られます。

正常な人の唾液の分泌量は1日に1L~1.5Lですが、ドライマウスの人の分泌量は半分以下になります。

唾液には重要な役割がありますが、唾液の分泌量が減るとそれらの役割が果たせなくなり、さまざまな問題を引き起こします。

例えば、口内細菌が増えて虫歯や歯周病になりやすくなる、カンジダ菌(※)が急激に増え痛みを引き起こす、炎症が起きて味覚障害を引き起こすなどです。

ドライマウスの原因は、さまざまです。

降圧剤や抗アレルギー薬など服用している薬の副作用や、ストレスによるもの、自己免疫疾患であるシェーグレン症候群によるもの、糖尿病や甲状腺疾患による全身疾患などが考えられます。

他に、加齢による筋力の低下や、虫歯、合わない入れ歯の使用によってしっかり嚙めないこと、女性ホルモンの減少に伴い唾液の分泌量が低下することもあります。

患者の70%以上は中高年の女性です。

ドライマウスはセルフケアで改善が見られます。

日常的な口周りの刺激が大切です。

保湿剤も有効です。

タイプによって特徴があります。

マウスウォッシュやスプレータイプは簡便でさっぱりしていますが、効果の持続時間が短く、ジェルタイプは効果の持続時間は長いですが、粘つきが強くて不快に感じることもあります。

セルフケアを2週間以上続けても効果を感じなければ、受診をおすすめします。

口のことだけでなく原因に全身の病気が関係していることもあるので、できれば口腔外科がよいでしょう。

治療は、原因を取り除くことから行われます。

虫歯の治療・入れ歯の調整などもその一つです。

シェーグレン症候群の場合は唾液の分泌を促進させる薬が処方されます。

※体内に広く生息する常在菌の一つ。常在菌のバランスが乱れると痛みなどを引き起こす。

唾液には重要な役割があります

<唾液の出る場所>
唾液のおよそ9割は、耳下腺(じかせん)、顎下腺(がっかせん)、舌下腺(ぜっかせん)の三大唾液腺から分泌される。その他にも口の中には無数の小唾液腺がある。

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<主な役割>
・食べ物を湿らせてのみ込みやすくする
・味物質を溶かして味を感じやすくする
・消化酵素でデンプンを分解する
・口内細菌や外からの細菌の働きを抑制
・ミネラルが歯の再石灰化を促す
・酸性に傾いた口内環境を中和する
・食べかすなど口内の汚れを洗い流す

こんな症状があったらドライマウスかも

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・口の中がネバネバするようになり、話しにくい
・口の乾きが続いているように感じる
・義歯(入れ歯)で舌や頰など粘膜が傷つきやすい
・口内炎がよくできる
・のどが渇くタイミングが早い
・就寝中にのどの渇きで目が覚めることが多い
・パンやクッキーなどの乾いた食品が嚙みにくいと感じる
・乾いた食べ物をのみ込む際にしばしば水を飲む
・食べ物がのみ込みにくくなったと感じる
・口臭がある(あると指摘された)
・あごの下がいつも、もしくは時々腫れる。また腫れるのは片方ではなく両方のことが多い

 

<教えてくれた人>

金沢医科大学 顎口腔外科学講師
見立英史(みたて・えいじ)先生

2003年九州大学歯学部卒業。大学病院や開業医勤務を経て23年から現職。日本口腔外科学会指導医・専門医、日本口腔科学会指導医。専門分野は口腔粘膜疾患。

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