日本私立歯科大学協会が行った「歯科診療」に関する意識調査によると、「マスクをするようになって、自分の口の臭いが気になるようになった」人は約4割。マスク着用が日常のいま、どんな対策が有効なのでしょうか。そこで今回は、松本歯科大学歯科保存学講座教授の亀山敦史(かめやま・あつし)先生に「マスク口臭」についてお聞きしました。
コロナ禍でマスクの着用が当たり前となり、口の臭いが気になるようになったという人が増えています。
「唾液は本来無臭ですが、会話をすることなどでマスクに付着した唾液には、口の中にいる多くの雑菌が含まれています。そのため、雑菌が作り出す臭い成分が唾液とともにマスクに付着。さらに、付着した唾液が呼気で温められて唾液中の水分が蒸発するため、臭い成分が濃縮され、口の臭いが強くなったと感じてしまいます」と、亀山先生。
口臭の原因は?
口臭のほとんどは、粘膜からはがれ落ちた垢や唾液などに含まれるたんぱく質が、口の中にいる細菌によって分解・発酵される過程で出るガスです。口臭の素となるガスには硫黄成分が含まれており、不快な臭いを発します。
口臭は、起床時に最も強くなる
口の臭いは唾液の分泌に影響されます。睡眠中は、唾液腺が刺激されないため唾液の分泌量が減少。加えて、口内の雑菌が徐々に増え始めるため、起床時は一日の中で最も口臭が強くなります。就寝時に口呼吸になる人は、さらに口の中が乾きやすく、雑菌も増えやすいため、非常に口臭が発生しやすくなります。
予防方法は?
朝食を取る
朝食を抜いて、空腹のまま過ごしていると、起床時の口臭の強さがその後も持続されやすくなってしまいます。
口を潤す
口が乾くと口臭が出やすくなります。気付いたときに水や緑茶で口を潤すよう、心がけるようにしましょう。
口臭ケアグッズを活用
マウスウォッシュとブラッシングを組み合わせて使用を。「塩化セチルピリジニウム(CPC)」という成分は、口の中の雑菌を減らすのに有効。「塩化亜鉛」「グルコン酸銅」は口臭の原因となるガスと結合し、臭いを発生しにくくします。
では、どのような対策ができるのでしょう?
「まずはどんなときに口臭が出やすいかを知ることが大切です。口臭のレベルは一日の中で大きく変動しますが、特に空腹時は唾液の分泌が少なくなることから、強くなります。また、緊張しているときや運動時、疲労時も強くなります」
日常的にできる対策は、第一に口の乾燥を防ぐことだと亀山先生。
「食事を取れば唾液が出ますし、食べ物を飲み込む際は、口の中の雑菌や口臭の素となるたんぱく成分も共に飲み込むため、口臭レベルは一気に低下します。気付いたときに水分を摂ることも有効。他に、市販の口臭ケアグッズの利用も効果的です」
ただし、歯周病や粘膜の炎症などが原因で起こる口臭は、適切な治療が必要です。
口臭が気になる人は、歯科のある大学病院や、口臭の専門外来のある医療機関で、相談してみるといいでしょう。
取材・文/オフィス・エム(寳田真由美) イラスト/坂木浩子