目が開けにくい、視野が狭い...上まぶたが下がる「眼瞼下垂」を医師の村上正洋先生が解説

眼瞼下垂(がんけんかすい)は上まぶたの筋肉の劣化により視界が狭まる状態で、多くは加齢が原因ですが、緊急を要する場合もあります。主に眼瞼挙筋の問題で、治療は手術により行われ、生活に支障を感じた際に受診が推奨されます。

この記事は月刊誌『毎日が発見』2024年3月号に掲載の情報です。

主な原因
・加齢
・ハードコンタクトレンズの長期装用
・一部の緑内障点眼薬の使用

主な治療・改善法
・手術治療

眼瞼下垂は、さまざまな原因によって上まぶたが下がり、視野が狭くなったり、外見が悪くなったりする不具合を生じる状態をいいます。

まぶたを上げる筋肉は眼瞼挙筋を中心に構成され、膜状の挙筋腱膜(けんまく)を介してまぶたの縁にある瞼板(けんばん)という組織につながっています。

眼瞼挙筋が収縮すると、挙筋腱膜に引っ張られるようにして瞼板が持ち上がり、目が開きます。

この挙筋腱膜が劣化すると、まぶたを上げるのが困難になり眼瞼下垂を引き起こすのです。

本来、目を開いた状態だと上まぶたは角膜(黒目)の上縁に少しかかる程度ですが、それが黒目の中心にある瞳孔(ひとみ)に近づき始めると眼瞼下垂を疑います。

原因の多くは加齢ですが、他にハードコンタクトレンズの長期装用、一部の緑内障点眼薬の使用、白内障などの手術によっても生じます。

多くの場合、治療の緊急性はありませんが、まれに重大な病気が隠れていることもあるため、特に短期間で症状が現れた場合は、放置せずに医療機関への受診をおすすめします(後述※参照)。

受診する医療機関選びで大切なことは、診療科によらず眼科と形成外科の両方の知識と技術を持った医師を探すことです。

視機能の改善はもちろん、見た目にも配慮する必要があるからです。

治療は原則的に手術で、「眼瞼挙筋前転法」という術式が一般的です。

局所麻酔で所要時間は片目で30分程度、ほとんどが日帰りで行われます。

術後、目の周りに内出血が広がる場合がありますが、2週間ほどで落ち着きます。

手術を受けるタイミングは、一般的には中等度以上の眼瞼下垂になったときとされます(健康保険適用になる目安)。

但し、本人の生活スタイルにもよるので、日常生活に何らかの不都合を感じ始めてからでも間に合います。

あなたのまぶたは大丈夫?

<正常>
・まぶたが瞳孔(ひとみ・黒目の中心)にかかることなく、視界が保たれる

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<軽度>
・まぶたが瞳孔の上縁にかかる手前
・視界の狭さはほとんど感じない

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<中等度>
・まぶたが瞳孔の上縁から中央の間にかかる
・上方が見えにくくなる

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<重度>
・まぶたが瞳孔の中央より下がる
・あごを上げないと上方が見にくい

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<教えてくれた人>

まぶたとヒフのクリニック 千駄木プラザ形成外科 院長
村上正洋(むらかみ・まさひろ)先生

1989年日本医科大学卒業。医学博士。日本医科大学武蔵小杉病院形成外科教授、眼科講師を経て、2023年より現職。視機能と整容の両立を目指す眼瞼形成手術を広める。

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