高齢になると肺炎に気付きにくいケースあり。「過敏性肺炎」とその予防法を呼吸器内科の坂本先生が解説

風邪の症状だと思っていた熱や長引く咳が、実はアレルギー疾患の一種である過敏性肺炎であることも。夏型過敏性肺炎はクーラーや木造住宅のカビ、冬は加湿器の雑菌が原因で、適切な対策が必要です。今回は坂本晋(さかもと・すすむ)先生にお話をお聞きしました。

この記事は月刊誌『毎日が発見』2024年1月号に掲載の情報です。

【前回】過敏性肺炎のリスクあり。 加湿器の雑菌やクーラーなどのカビに注意【呼吸器内科の坂本先生が解説】

<達人のツボ>
過敏性肺炎が引き起こす「間質性肺炎」とは?

過敏性肺炎は、肺胞の壁「間質」に炎症が起こる「間質性肺炎」の一種です。炎症が続くと、やがて組織が硬くケロイドのように変性(線維化)し、正常な状態に戻らなくなり、肺機能が失われます。過敏性肺炎の治療を途中で中断して数年後に再び症状が悪化し、線維化が進んでしまうと、治療が効かなくなることも。そうなる前に、せきなどが続くときは、早めに呼吸器科などを受診して原因を突き止めることが大切です。

治療法を間違えると
別の病気が悪化する

過敏性肺炎はアレルギー疾患の一種なので、免疫反応を抑える薬によって治療します。

ですが、一般的な肺炎や肺がんの患者が免疫反応を抑える薬を使用すると、症状が悪化して逆効果となってしまいます。

きちんと診断した上で、適切な治療を行わなければなりません。

そのため、過敏性肺炎なのか肺炎なのか、診断が難しい多くの患者が、坂本先生がセンター長を務める東邦大学医療センター大森病院間質性肺炎センターを紹介され、来院するといいます。

近年は、加湿器需要の高まりに比例するように、加湿器肺炎の患者数も右肩上がりに。

「新型コロナウイルスが流行した当初は、水分によって空中に浮遊するウイルスを床に落とし、肺に吸い込みにくくするために加湿器を使用する家庭が増えました。結果として、加湿器肺炎にかかる人も増えたと考えられています。2019年に当センターで『加湿器肺炎』と診断した患者数と比べ、2021年は3倍以上になりました。診断が難しいので、かかりつけ医では診断されずに医療機関を転々とし、当センターが紹介されるケースも珍しいことではありません」と、坂本先生。

加湿器にはさまざまな種類があります。

ヒーターで水を加熱し、水蒸気を発生させる「加熱式」は水中の雑菌が繁殖しにくいですが、超音波振動で水を細かな粒子に分解し、霧のように噴出する「超音波式」は、水中の雑菌が繁殖しやすいので注意が必要です。

主な治療法

薬物療法
カビや雑菌に接触しないようにすれば症状は治まります。ただし、症状がひどい場合はステロイド治療や免疫抑制剤を使用。それでも線維化が悪化する場合は抗線維化薬を使うことも。

主な検査法

CT検査
胸部X線検査により過敏性肺炎が疑われるときには胸部CT検査でより詳しく肺の炎症の状態を診ます。同時に血液検査で病気のマーカー値も検査し、肺機能検査も行うことで診断します。

内視鏡検査
肺の状態をより詳しく調べるために、気管支鏡検査や胸腔鏡検査が行われることもあります。気管支鏡検査は局所麻酔で実施。胸腔鏡検査は全身麻酔が必要ですが、正確な診断に役立ちます。

 

東邦大学医療センター 大森病院  間質性肺炎センター長 呼吸器内科准教授
坂本 晋(さかもと・すすむ)先生

1997年、東京慈恵会医科大学卒。虎の門病院、東京慈恵会医科大学医学部呼吸器内科などを経て現職。びまん性肺疾患(間質性肺炎)の診断・治療・研究を行い、「加湿器肺に関する全国実態調査」の研究代表も務める。

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