「ひざの水」の正体って何? ひざに溜まった水を抜くとクセになると言われる「本当の理由」

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『整形外科医が教える 家族の身体を守る医学的ライフハック』 (おると/KADOKAWA)第7回【全11回】

マッサージの効果から湿布の貼り方、薬の飲み方まで、私たちの日常には多くの医学知識が必要とされています。しかし、それらを正しく実践できている人は意外と少ないかもしれません。X(旧Twitter)で医療情報を発信し、フォロワー数12万(2024年2月時点)を有する話題の整形外科専門医・おると先生による『整形外科医が教える 家族の身体を守る医学的ライフハック』は、勘違いしがちな日常の中の医学知識を、丁寧に解説してくれます。自分の習慣は問題がないのか、一度チェックしてみましょう。

※本記事はおると著の書籍『整形外科医が教える 家族の身体を守る医学的ライフハック』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。


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ひざの水を抜くとクセになる?

<Check>
・ひざの水の正体は関節液。炎症が起こっているために関節液が余分につくられている
・ひざの水を抜いてもクセにはならない
・原因に対する治療がなされなければ、ひざの水はまた溜まる

外来でひざ関節痛がある患者さんからよく聞かれるのが、「ひざの水を抜くとクセになりますか?」という質問です。結論からいえば、「クセにはなりません」。

ひざに溜まっている水は、医学的には「関節液」という液体になります。ひざ関節は関節包という袋状の膜で包まれています。この関節包の内側に、滑膜という組織があり、滑膜から分泌(ぶんぴつ)されているのが関節液なのです。

関節液の役割は主に2つあります。

1つは、軟骨同士がスムーズに動くための潤滑油の役割、もう1つが、関節軟骨などに栄養を与える役割です。健康なひざでは滑膜から分泌された関節液は役割を果たしたあと吸収されるため、関節包の中の関節液は一定量に保たれています。

ところが、なんらかの原因によって、滑膜に炎症が起こると、滑膜が通常量以上の関節液を分泌するようになり、関節液の吸収が追いつかなくなり、ひざに水が溜まってくることになります。

ひざに水が溜まってしまう病気は数多く存在します。中高年以降の方の場合、ひざに水が溜まる原因として多いのが、変形性膝関節症です。変形性膝関節症を発症し、軟骨などの組織がすり減ると、そのかけらが滑膜を刺激し、滑膜に炎症が起こります。ほかに半月板や靭帯(じんたい)の損傷や、軟骨の外傷、関節リウマチなどによっても、同様に滑膜の炎症が起こることがあります。

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おると
整形外科専門医。診療にあたりながら、自身の転職経験をもとにしたブログ「フリドク」やX(旧Twitter)を2018年より開始。正しい医療をわかりやすく発信するスタイルや世間のネットニュースについての専門医目線での解説、ニセ医療解説などが大きな反響を呼び、現在12万人を超えるフォロワーを有する(2024年2月時点)

※本記事はおると著の書籍『整形外科医が教える 家族の身体を守る医学的ライフハック』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。
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