23年9月に行われた調査によると、「薬を飲み込みにくいと感じる人」のうち、「砕いて飲む」など不適切な飲み方をしている人は2割超に。
また、倉田なおみ先生らの調査でも、薬を服用している介護施設利用者の2割超が、薬を砕いて飲んでいるという実態が明らかになっています。
「加齢などで飲み込む力が衰え、薬が飲み込みにくくなる症状を錠剤嚥下(えんげ)障害といい、50歳頃から多くなります。ただ、食べ物は普通に飲み込めるため、医師や薬剤師に相談することなく、"薬を砕いて飲む"などで対応している人が多いことが分かっています」と、倉田先生。
「薬を砕くと、薬の苦みが増したり、においなどの刺激でさらに薬を飲みにくくしたり、薬が効き過ぎて副作用や苦痛が生じることもあります。なかでも、徐放性製剤という種類の薬をつぶして飲むと、呼吸困難など、命に関わる副作用につながることもあります」
では、薬をうまく飲めない場合、どうしたら良いのでしょう?
「少量の水や唾液で速やかに溶ける口腔内崩壊錠(OD錠)など、いまは飲みやすさを考えた剤形の薬もあります。嚥下機能に応じた薬を選んでもらってください」
思わぬトラブルを招く薬の粉砕。思い当たる人は、まずは医師や薬剤師に相談を。
構成・取材・文/寳田真由美(オフィス・エム) イラスト/坂木浩子