「腸内フローラ」とは、100兆個もの細菌で構成されたいわば腸のお花畑。食物繊維はこれを「美しいお花畑」とするために必要だと、京都府立医科大学大学院消化器内科学准教授の内藤裕二先生はいいます。
食物繊維には不溶性と水溶性があり、不溶性食物繊維は、穀類、野菜、豆類、きのこ類、甲殻類の殻、ココア、熟していない果実などに含まれ、水分を吸収して便のかさを増やし便通を改善します。さらに腸内の有害物質を吸収して便として排出したり、希釈することで、がん予防や血圧を下げる働きもあります。
また、水溶性食物繊維は、野菜、豆類、海藻類、熟した果実などに含まれ、腸の中で粘り気のあるゲル状になり、便をスムーズに移動しやすくします。それだけでなく腸内フローラの善玉菌のエサとなり「短鎖脂肪酸」が作られることで、腸の働きに大きく貢献していることが最近の研究で明らかになっています。
その短鎖脂肪酸は、腸の粘膜を作る細胞に吸収されて、新しい細胞を生成したり、腸の働きを整えるためのエネルギーに使われます。残った一部は、血液の中に取り込まれて筋肉、肝臓、腎臓など、全身のエネルギーとして利用されます。さらに有害菌(悪玉菌)が発生しにくいおなかの環境を保って、腸内フローラを"美しいお花畑"にしているのです。
毎日食べたい、食物繊維を多く含む食材
【オクラ】
初夏~夏を代表するぬめり野菜。100gあたりに含まれる水溶性食物繊維は1.4g(日本食品標準成分表による)。ぬめりの主な成分はペクチンなどの食物繊維で、整腸を促して、体内のコレステロールを排出する作用がある。
【きのこ類】
水溶性食物繊維よりも不溶性食物繊維のほうが多いのが特徴。不溶性食物繊維は水分を含んで大きく膨らみ、腸壁を刺激して腸のぜん動運動を盛んにする作用があり、自然なお通じを助ける。
【海藻類】
だしや汁物、煮物の具材など、和食の食材としてなじみ深い海藻類は、水溶性食物繊維が豊富。乾燥重量の40%以上が食物繊維であるともいわれ、低カロリーでミネラルを多く含んでいる。
【納豆】
これ以上ないくらい優れた健康食品が納豆。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維がバランスよく、しかも豊富に含まれていて、腸内環境の改善が期待できる。
【大麦】
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維がバランスよく含まれ、特に水溶性食物繊維であるβ-グルカンが豊富。精白米の約20倍、玄米の約3倍の食物繊維を含む。主食(麦ごはん)で取るのがムリなく続けられる。
【ごぼう】
食物繊維と同じく豊富に含まれているものに、抗酸化作用のあるクロロゲン酸(ポリフェノールの一種)がある。調理の際に、長く水にさらすと、クロロゲン酸が失われてしまうので注意しましょう。
――ちなみに、英語で「ダイエタリー・ファイバー」ともいわれる食物繊維は、ゴボウなど野菜の筋ではなく、実は炭水化物の一種。本来は穀類・豆類・海藻類などを多くとってきた、日本人の食事と深いかかわりがあったのです。食物繊維を多くとるように、食習慣を見直してみたいものですね。
内藤裕二(ないとう・ゆうじ)先生
京都府立医科大学大学院消化器内科学准教授。胃カメラなど内視鏡検査の達人として患者さんから厚い信頼が寄せられる。胃がん撲滅のための研究や、機能性食品の有用性を科学的に分析する研究でも有名。近著に『消化管(おなか)は泣いています』『人生を変える賢い腸のつくり方』(ともにダイヤモンド社)。