みなさんは、自分のうんち(便)をしっかり観察していますか? うんちの色やにおい、回数、量をチェックすることで、腸内環境だけでなく、体の内部の健康状態を知ることができます。うんちとは何か、いいうんちとはどんなうんちか、慶應義塾大学先端生命科学研究所(山形県鶴岡市)特任准教授の福田真嗣先生に解説していただきました。
うんちって何? 実は大部分が腸内細菌。うんちは「究極の個人情報」です!
みなさんは自分のうんち(便)の正体をご存じですか? 人によって割合はそれぞれですが、まずは水分。そして、水分以外の半分~1/3は腸内細菌で、残りが食物繊維をはじめとする消化されなかった食べ物などです。
つまり、日々、目にするうんちの大部分は、腸内細菌によるもの。そして、うんちに含まれる腸内細菌の約2/3が死骸で、残りはまだ生きた状態であることも、近年の研究から分かっています。
「うんちの中には、腸内フローラの遺伝子や代謝物質など、あらゆる情報が詰まっています。これらの情報から、個人の健康状態や病気のリスクを評価できる可能性があるのですから、うんちは究極の個人情報といえるはず。その情報を基に生活習慣を改めることで、健康を手に入れられたり、健康寿命を延ばせたりする可能性も。そう考えると、うんちには値を付けられないほどの価値があるので、私はうんちを"茶色い宝石"と呼んでいるんですよ」と福田真嗣先生。
では、どんなうんちが理想的かというと、"バナナのような大きさ、形、太さ、色はフレッシュな黄褐色"だそう。
「日々観察する中で、健康的な色、形、においの排便があったら、前日や前々日に食べたものを思い出してください。できれば、普段の食事を写真に撮り、その写真を参考にして食生活を改善していけば、健康的な体に近づいていけるはずです」と、福田先生はいいます。
色・形・ においは? 自分の「うんちのタイプ」をチェック!
みなさんは、排便後の「うんち(便)」をしっかり観察していますか?
「うんちの観察は、できれば毎日行ってください。一瞬見るだけでも、毎日続けられれば、体に異変があったときに気づくことができます。なかでも特に気をつけたいのは、色とにおい。生まれてから見たことのない色のうんちや、嗅いだことのないにおいを感じたら、医療機関で検査を受けることをおすすめします」と福田先生。
うんちをチェックする際のポイントは、色、形、におい、回数、量。うんちの色は、黄褐色っぽいものが健康的。食べ物がうんちになるまでの間に、胆汁が正常に分泌され、その後の過程で血液など別の色のものが混ざらなかった証しといえます。形は水分量によって異なります。
最も軟らかいのは水様状のもの。ジャーッと滝のような下痢便が出る場合、感染症の疑いが。水様状ではなく、軟便ぐらいであれば心配ありません。ただし、水様状のうんちや軟便と一緒に、ぽろぽろと日焼けした皮がむけたようなものが排せつされた場合は、腸内環境があまりよくない状態というサイン。原因は主に脂肪の取り過ぎで、消化吸収しきれなかった脂肪が常温で固形化し、便として排せつされているのだとか。
一方、硬い便もいい状態ではありません。色も黒っぽく、大半は便秘状態。発酵食品や食物繊維の多い雑穀類、整腸作用のあるヨーグルトなど、腸のバランスが整う食生活を心がけましょう。
●ココをおさえて! 「うんちのタイプ」チェックポイント
うんち(便)の色は【何色?】
うんちの色は大腸の通過時間でおおよそが決まります。通過時間が短いほど明るい黄色で、長くなるほど黒褐色に。黄褐色から茶褐色までは、健康な便と考えて問題ないでしょう。
うんち(便)の【形は?】
水分量70~80%で、バナナ状の形をした便が1~2本程度スムーズに出て、肛門を拭かなくてもいいくらいが理想的。水様状ではなく、半練り状と思えるぐらいはそれほど心配ありません。
うんち(便)の【においは?】
朝いちばんのうんちに、いままで体験したことのないにおいを感じたら要注意。前夜にお酒の飲み過ぎや揚げ物の食べ過ぎがあれば、原因は飲食したものの可能性が高いので様子を見て。食生活に原因が見つからないときは、体調不良のアラームかも。
危ないのはどんなうんち? うんちの種類でセルフ健康診断
では、どんなうんち(便)が「健康」で、どんなうんちが危ないのでしょう?自分で簡単にできる、うんちのチェック方法を福田先生に教えていただきました。
まずは自分のうんちのタイプを押さえましょう
バナナうんち
バナナ2本分ぐらいの黄褐色~黄土色のうんちは健康の証しです
カチカチうんち
色は黒っぽい茶色で、硬め。便秘が続くとこんな状態になりやすいです
コロコロうんち
うさぎの便のような硬いうんち。ストレスがたまっているかも?
ネットリ半練りうんち
色は黒っぽい茶色でネットリ。肉をたくさん食べた後に出やすいようです
ドロドロうんち
下痢のときのうんち。長く続く場合は、病院で診断を受けましょう
水様状うんち
このうんちが出たら要注意。感染症の疑いがあるので必ず病院へ
【注意】こんなうんちは病のサイン!?
赤いうんち
多くは出血で、痔か大腸がんの可能性が。痔の場合、便表面に血が付着するのが大半。血液がマーブル状に混じる場合は大腸がんの心配も
緑のうんち
青汁など野菜ジュースを飲んでいないのに緑色の便が出た場合は、肝臓に問題が起きている心配が。続く場合は専門医の診断を受けましょう
黒いうんち
最も多いのは便秘です。万が一、タールのような黒さの便が出た場合は、大腸がんによる出血の可能性が考えられるので早めに受診を
水様状うんち
水分が主体のジャーッと出る便(下痢便)は、感染症の疑いが。長期間続いたり、下痢と便秘が繰り返し起こる場合は専門医に相談を
ぜひ今日から、自分のうんちを観察してみましょう。そしてたまには、家族やお友達と、排便のことを話題にしてみてください。恥ずかしくてなかなか言い出せないかもしれませんが、回数や色、においなどを話し合うことで、新たな気づきがあるかもしれません。
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腸内環境研究者の福田真嗣先生に聞きました! もっと知りたいうんちQ&A
普段、私たちは自分の体の内部を直接見ることはできません。しかし、体内を通ってくるうんち(便)には、体の内部を知るための情報がつまっているようです。
腸内環境研究者である福田真嗣先生に、いろいろ質問してみました。
Q. 最近耳にする"便移植"って何ですか?
A. 患者の腸に、健康な人の腸内フローラを移植する治療法。米国では偽膜性大腸炎(ぎまくせいだいちょうえん)の患者が特定の条件を満たす場合、治療の選択肢に。日本でも、慶應義塾大学医学部消化器内科・金井隆典教授らのグループが臨床試験を進めています
Q. うんちの色にグラデーションがかかっている気がします。心配ありませんか?
A. 健康的で長い棒のようなうんちが出た場合、すべてが同じ色ではない場合も。先に出た方はやや黒く、後に出たほうは黄色っぽくグラデーションを描いている場合があります。これは、下の方が大腸内の滞留時間が長い分、黒みがかかっており、上の方は滞留時間が短くフレッシュなので、鮮やかな黄褐色をしているんですよ
Q. 快便のために日本人の腸にあう食生活ってありますか?
A. 漬物やみそ、納豆などの発酵食品は、微生物の力が加わっているので多種類の栄養素を摂取できます。不溶性と水溶性の両方の繊維を含む大麦や海藻類もいい。古来食べ継がれてきた食品の多くは、腸内フローラの改善にいいものばかりですね
Q. 腸内環境がよくなると、アンチエイジングできますか?
A. 年齢と共に、腸内環境が変化することは、分かっています。腸内環境をコントロールすることで、老化を緩やかにできるのではないかと考え、現在、アンチエイジングと腸内フローラに関する研究も進めています
Q. 食生活によって快便傾向に変化しますか?
A. 長年の食習慣が腸内環境を決めています。食習慣で腸内環境を改善するならば、数日であきらめないこと。健康のためにいい働きをする腸内細菌が好むものを食べて、少しずつ腸内フローラのバランスを整えるのが快便への近道です
Q. 浮かぶうんちと沈むうんち、どっちがいいうんち?
A. 洋式トイレに排便をすると、大きさや硬さにかかわらず、たまっている水に浮く場合と沈む場合があります。水に浮くうんちは、繊維質を多く取っている証拠。豆類やイモ類などの不溶性の食物繊維を多く含むものを食べると、腸の中のガスや空気を抱え込み、便のかさが増し、ふわっと水に浮くように。
Q. 排便の頻度で注意が必要なのはどんなタイプ?
A. 3日以上うんちが出ない場合は便秘気味なので、食習慣の改善を心がけましょう。腸内に便が長時間滞留すると、本来排泄されるべきものが再び血液に乗って全身に回るため健康的とは言えません。お肌にも悪い影響が出やすくなります
Q. 腸内環境によいといわれるヨーグルト。自分に合ったものって、どうやって見つけたらいいの?
A. 同一銘柄のヨーグルトを最低でも2週間は食べ続けてください。途中で軟便になる、排便回数が増えるなどの変化が起こるかもしれませんが、次第に腸のコンディションが安定し、快調になればOK。あまり変化がなければ、違う銘柄を試しましょう
Q. 腸内環境と肌荒れ・にきびの関係って?
A. 腸内フローラからよくない物質が作られると、それらが腸から血中に移行し、全身へ。肌の細胞にも影響するため、肌がくすんだり、荒れたりしやすくなります。この状態が長く続くと、肌の状態が悪化し、老化につながる可能性も。食生活の改善や十分な睡眠を心がけてください。
あなたが気になっていた疑問はありましたか? こちらのQ&Aを参考に、腸内環境についての興味を深めてみてはいかがでしょうか。
<教えてくれた人>
福田真嗣(ふくだ しんじ)先生
腸内環境研究者。慶應義塾大学先端生命科学研究所 特任准教授。(株)メタジェン代表取締役社長CEO。
1977年、茨城生まれ。2006年、明治大学大学院農学研究科を卒業後、理化学研究所基礎科学特別研究員などを経て、2012年より現職。2015年より科学技術振興機構先駆け研究者、2016年より筑波大学医学医療系客員教授、2017年より神奈川県立産業技術総合研究所グループリーダーを兼任。