40代半ばを過ぎて妙にイライラすると感じたら、更年期が始まっているかもしれません。更年期は、思春期と並ぶホルモンの大変動期で、疲労や肩こり、のぼせなど、これまで感じなかったさまざまな不調が起こりやすくなります。ひどくなると、更年期障害と呼ばれ、日常生活に支障をきたすこともあります。
この大変動期をできるだけ心地よく過ごすにはどうしたらよいのか、飯田橋レディースクリニック院長の岡野浩哉先生にお伺いしました。今回はその3回目です。
前の記事「ホルモンバランスの変化と更年期症状/更年期障害(2)」はこちら。
原因不明の不調は、更年期のせい?
更年期によく現れる原因不明の何となく不調を更年期症状といいます。更年期症状は、ホットフラッシュと呼ばれるのぼせやほてりといった症状のほか、動悸(どうき)、疲労感、抑うつ症状、関節痛、イライラ、耳鳴り、冷えなど、多種多様です。これらの症状のうち日常生活に支障をきたす場合を「更年期障害」と呼んでいます。下記に、更年期に感じる代表的な症状を挙げてみました。自分に該当する項目があるかどうか、チェックしてみましょう。
●更年期に感じる代表的な症状
□顔や上半身がほてる(のぼせる)
□汗をかきやすくなった
□夜間、のぼせや汗で目が覚めるようになった
□動悸を感じるようになった
□疲れやすくなった
□やる気が出なくなった
□根気が続かなくなった
□集中力がなくなった
□物覚えが悪くなった、忘れやすくなった
□イライラしやすくなったり、怒りやすくなった
□涙もろくなった
□漠然とした不安を感じるようになった
□ささいなことが気になりくよくよする
□落ち込みやすくなった
□寝つきが悪くなった
□食欲がなくなってきた
□めまいや傾く感じがするようになった
□地に足が着いていないようなフワフワ感がある
□耳鳴りを感じるようになった
□目が乾くようになった
□口が乾くようになった
□手指が動かしにくい、またはしびれを感じる
□手指関節に痛みを感じるようになった
□肩や首がこるようになった
□頭が重く頭痛を感じるようになった
□皮膚の乾燥やかゆみを感じるようになった
□外陰部や膣の乾燥感がある
□性交時に痛みを感じるようになった
※飯田橋レディースクリニック院長 岡野浩哉先生作成
心当たりのある症状はありましたか? 該当する症状が一つでもあり、その症状が月経不順や閉経を機に始まった場合は、更年期症状の可能性が高いです。更年期症状が現れる最大の理由は、女性ホルモンの減少にあると前の記事でお話ししました。エストロゲンは、月経や妊娠だけでなく、脳機能や皮膚の代謝、血管や骨の健康維持など、体のさまざまな部位に作用しています。そのため、閉経によってそれらが急に作用しなくなることで、全身にさまざまな不調が現れます。
「更年期の症状は、個人差が大きく、症状が強く出る人もいれば、ほとんど出ない人もいます。また、症状の出方も多種多様なため、つらいと思っても我慢してしまったり、いざ受診しようと思ってもどこの病院のどの科で相談したらよいのか悩んでしまわれる方も多いようです。上記のような症状が、月経不順や閉経を機に始まった場合は、更年期かも?と考え、婦人科を受診してみてください」(飯田橋レディースクリニック院長 岡野浩哉先生)。
これまで感じたことのない体の変化に思い当たったら、手帳などにメモをするクセをつけておくこともおすすめです。その際は、「どんな不調を感じたか」「不調を感じるようになったのはいつ頃か」「月経不順や閉経を機に起こっているか」といったことを合わせて記入しておけば、医師に相談する際にも役立つことでしょう。
次の記事「更年期症状と更年期障害って、どう違うの?/更年期障害(4)」はこちら。
取材・文/笑(寶田真由美)
岡野 浩哉(おかの・ひろや)先生
飯田橋レディースクリニック院長。群馬大学医学部卒業後、同医学部附属病院産婦人科、 東京女子医科大学産婦人科などで臨床経験を経て、平成20年に飯田橋レディースクリニック設立。 「患者にやさしい医療」をモットーに、新聞・雑誌等メディアへ執筆多数。