左足の親指の付け根がぼこっと突き出したこの写真。これは「外反母趾」という、よくある足のトラブルの1つです。旅行や外食などの楽しいお出かけタイムを悩ませる、そんな足のトラブルの種類と予防法について、フットケアに詳しい医師の高山かおる先生に教えてもらいました。
ご存じですか? 「外反母趾」
第1(親指)のつけ根が曲がり、第5(小指)の方向へ向いていませんか? この変形を「外反母趾」といいます。
【どんな特徴があるの?】
・時間をかけて変形していくから気付きにくい
・押されなければ痛みがない
・進行すると、曲がった部分が靴に当たりタコやウオノメができる、炎症を起こすなどの症状も
・骨の変形が進むと、爪や皮膚の病気を合併しやすくなり、歩行困難、首や肩のこり、腰痛、ひざ痛などの影響が出る
【なりやすい人は?】
・歩き方、立ち方の癖 (X脚で脚が内側に倒れ、重心が足の親指にかかっている人)
・立つ、座るなどの動作で、ひざが内側に入る人
・つま先の細い靴や、 ハイヒールを履く人
・女性 (骨格や靱帯、筋肉が男性よりも弱い)
長年の習慣が悪化する原因になる
「足は、かかと、第1指の付け根、第5指の付け根の3カ所を基点に、アーチ状になっていることで、力を分散してバネのような働きをしています。このアーチが崩れると、足のトラブルにつながってしまいます」と高山先生は指摘します。
アーチが崩れて足の指が広がってしまう「開張足」は、女性の約9割に見られます。指を適切に使って歩かないことで、どんどん指の動きが悪くなり、骨を束ねている腱や動きをサポー トしている筋肉が衰えてしまうため、特に押される方向への指の変形がより進んでしまいます。指の骨の変形は第1指だけにとどまりません。第5指も変形し、第1指方向へと曲がっていきます。これを「内反小趾」といいます。
外反母趾の重症度をチェックしよう!
テーピングで横アーチを補正
開張足や外反母趾では、第1 指と第5指を基点とするアーチが崩れて、指全体が地面にベタッとつくように変形しています。 それを矯正するのがテーピング法です。幅3cmほどのテープや包帯を用意し、第1指と第5指の付け根を引き締めるように3 ~4回巻きます。足に少しアー チをつくり、固定するように巻くのがコツです。指の付け根で巻くと痛い場合には、巻く位置を下げて土踏まずの辺りを巻きましょう。サポーターやマジックテープ付きのバンドでもよいそうです。
サンダルやハイヒールは要注意。悪循環に陥る危険性もある
足が痛いと、サンダルのような開放的な履物を選びがちですが、足トラブルを悪化させることがあるのです。また、爪のケアも忘れてはいけません。地面からの力に爪も対応しているため、正しい姿勢で歩かないと、第1指の爪が変形してしまうのです。外反母趾では、爪の端が内側に巻き込まれる巻き爪を合併することが多いそうです。爪切りの際の深爪や爪の両端の角を斜めに切るバイアスカットでも生じやすいので、正しく爪を切ることも重要になります。
まずは歩き方から見直して!
外反母趾などの足のトラブルを防ぐには、(1)正しい歩き方 (2)足指ストレッチなどの足のケア (3)正しい靴の選び方を身に付けることが大切です。
1)歩き方を見直してみよう
外反母趾や開張足を予防するには、足のアーチを保つために、重心を足に正しくかけて立ち、足のバネを使って歩くことが大切になります。悪い歩き方や立ち方はすぐに改善しましょう。正しい歩き方を身に付ければ、ヒールの高い靴を履いても、足を痛めることは少なくなります。
2)足指ストレッチをしよう!
<足指ストレッチの仕方>
1 足の指の間に、足裏側から1本ずつ手の指を互い違いに入れる。
2 手の指をギュッと握り締めて、足首を大きく回す。
靴を長時間履いていた足は、指先の筋肉や腱が硬く緊張しています。帰宅後、足を洗った後に数分程度、足指のストレッチをしましょう。足の裏に手が回らないときには、足の甲の側から手の指を入れて行ってみてください。足の指をつまんで広げるストレッチも効果的です。
3)靴の正しい選び方
足に合わない靴を履いていると足のトラブルにつながります。靴を選ぶときには、ご自身の足に合わせて、足のサイズの大小1サイズずつも試して選びましょう。左右の足の形が異なる人も多いので、靴店のフィッティングサービスを利用すると、調整しやすくなります。
構成/高谷優一 取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史
高山かおる(たかやま・かおる)先生
医師。専門は、接触皮膚炎、フットケア、美容。埼玉県済生会川口総合病院、東京医科歯科大学附属病院勤務。フットケアの啓発活動を行う「足育研究会」代表。著書に『巻き爪、陥入爪、外反母趾の特効セルフケア』(マキノ出版)など。