花粉症の人にとって、春先はつらい症状に悩まされる季節。花粉症は、花粉によって 起こされるアレルギー疾患で、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどの症状が現れます。
日本医科大学大学院医学研究科頭頸部・感覚器科学教授で、花粉症治療、特に舌下免疫療法の研究・治療に当たっている大久保公裕先生に、その原因などをお聞きしました。
前の記事「自宅で行える最新の花粉症治療。舌下免疫治療法/花粉症最新治療(5)」はこちら。
「舌下免疫療法」を始めるタイミングは、花粉の飛散が終わってから。スギ花粉の飛散時期に治療を始めると効果が現れにくく、副作用も起こりやすくなるため、治療の開始は、花粉が飛散していない時期に限られます。
大久保先生らの研究グループが行った調査によると、スギ花粉症の患者に舌下免疫療法を約2年間行った結果、7~8割の人の症状が大幅に改善したと報告されているそうです。
舌下免疫療法のスギ花粉エキスを処方できるのは、専門の医師に限られます。この治療法に興味のある人は、耳鼻咽喉科の担当医に相談してみるとよいでしょう。
最近では、スギ花粉の成分を含むコメを遺伝子組み換え技術で作る研究も進められており、このコメを食べ続けると体が花粉に慣れ、花粉症の症状が緩和すると期待されています。
「舌下免疫療法は自宅でできる手軽さはありますが、使用する花粉エキスの量を増やしていく手順を患者さん自身が行わなければいけません。花粉症の症状のない時期も毎日続ける必要があり、患者さんがこの治療法を正しく理解して始めることが求められます」(大久保先生)。
【治療その3-2 舌下免疫治療法】
*スギ花粉エキスを2週間かけて徐々に増量していき、その後は一定量を毎日使用する。
*1カ月ごとに受診・処方が必要(最初の1年間は2週間ごとの処方となる)。
▼舌下免疫療法のやり方
1日1回、舌の裏に花粉エキスをスプレーし、2分間なじませた後に飲み込む。
次の記事「鼻うがい、たまねぎ深呼吸...花粉症はセルフケアで予防!/花粉症最新治療(7)」はこちら。
取材・文/髙森千織子 イラスト/やまだやすこ
大久保公裕(おおくぼ・きみひろ)先生
日本医科大学大学院医学研究科頭頸部・感覚器科学教授。日本医科大学付属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科部長。日本医科大学大学院耳鼻咽喉科修了。米国立衛生研究所(NIH)に留学後、日本医科大学医学部准教授を経て現職。花粉症治療、特に舌下免疫療法の研究・治療に当たっている。