大人世代になると心配になってくる病気が「動脈硬化」「脳梗塞」「心筋梗塞」。これらは硬い血管が原因の1つと考えられ、柔らかい血管にすれば防ぐことが可能です。立命館大学 スポーツ健康科学部 教授の家光素行(いえみつ・もとゆき)先生に、血管がやわらかくなる「伸ばすだけ脚ストレッチ」について教えてもらいました。
体が硬いと血管も硬くなります
思い当たること、ありませんか?
□ 前屈をしたとき、足の指先に手の指がつかない
□ 若い頃に比べて、血圧が高くなった
□ 手足の指先が冷える
□ 最近、疲れやすくなった
□ なかなか眠れない
当てはまることがあったら血管が硬くなっている可能性大です!
筋肉をじっくり伸ばしてやわらかな血管を取り戻す
若い頃と比べて明らかに体が硬くなったと思う人や、上記の質問に該当項目がある人は、思いのほか血管が硬くなり、動脈硬化が進んでいる可能性が否めません。
家光先生が参画した研究では、60歳以上の132人を体の硬いグループとやわらかいグループに分けて動脈硬化を測定したところ、体の硬いグループの方が、動脈硬化度が高い(硬化が進んでいる)という結果に。
動脈硬化は、放置すると重大な病気を招くことがありますが、血管を若返らせることで老化を最小限に抑えて、不調を予防できると家光先生。
「硬くなった血管を若返らせるためには、血管の中に一酸化窒素(NO(エヌオー))をはじめとした血管拡張成分をたくさん分泌させることが必要です。効果的なのが、筋肉をゆっくりと伸ばす静的ストレッチです。ストレッチによって血流を良くすることで、NOが分泌されやすくなります。また、筋肉を伸ばすと、伸ばした部位の血管も一緒に伸ばすことができます。すると、次第に血管もやわらかくなっていきます」
血管がやわらかくなると、高血圧や冷え性、眠れないなど、さまざまな不調の改善を期待できます。
脚ストレッチは、毎日行うことが重要。
無理なく続けられるものを選んで始めましょう。
NOが増えると血管の筋肉が緩む
血管(動脈)の内膜にある内皮細胞は、血液が流れることでの刺激や血液中に含まれるホルモンから刺激を受けると、血管の拡張を促す作用のあるNO(一酸化窒素)などを分泌、血管内の筋肉である平滑筋に緩むように働きかけます。平滑筋が緩むことで血管が広がり、やわらかくなります。
筋肉の伸び縮みで血流が良くなる(静脈)
筋肉は収縮したり、緩んだりを繰り返すことで、ポンプのように静脈の中の血液を心臓に押し戻す働きを助けます。ストレッチを行うと、この作用がより働きやすくなるため、血流がアップします。
【筋肉が緩んだとき】
【筋肉が収縮したとき】
体を伸ばすと血管も伸びてやわらかく
ストレッチをすると筋肉が伸びますが、実は、伸ばした部位の血管も一緒に伸びることが分かっています。研究では、ストレッチ後は血管が徐々に緩んでやわらかくなりますが、30分後辺りから硬さが元に戻っていきます。これは、ストレッチで得た柔軟性は長時間維持できないからだと考えられます。だからこそ、日々の繰り返しが大切です。