心不全の前段階「心肥大」は生活習慣で対策を! 猪又教授に教わる「心臓にいいウォーキング」

がんと並んで大人世代になると怖い病気のひとつに、心不全があります。この心不全の前段階の原因の1つには「心肥大」があり、これは生活習慣の管理・対策が有効です。今回は、新潟大学大学院 医歯学総合研究科 循環器内科学 主任教授の猪又孝元(いのまた・たかゆき)先生に「心肥大の原因、悪化させない生活習慣や治療法」について教えてもらいました。

心肥大の主な原因
・高血圧
・心臓弁膜症
・肥大型心筋症

主な治療法・予防法
・生活習慣の管理
・運動

心肥大はどんな状態?

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正常な心臓
握りこぶし大のサイズで胸の真ん中にあり、心臓の筋肉(心筋)が縮んだり(収縮)、広がったり(拡張)する動きによって、全身に血液を送り届けるポンプの役割がある。

心肥大
心臓の筋肉の壁が厚くなる
心臓が懸命に血液を送り続けた結果、心筋が鍛えられて厚くなった状態。

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心拡大
心臓の内腔が大きくなる
ポンプ機能の低下を補うために、心臓を大きくして血液をより多く送り出そうとする。

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健康診断や人間ドックの検査結果で「心肥大の疑いあり」と指摘されたことがある人がいると思いますが、じつは胸部レントゲンや心電図の検査だけでは正確に診断することはできません。

正確に診断するためには、心臓超音波検査(エコー検査)が必須です。

簡便で痛みもX線の被曝(ひばく)もない検査で、心臓の4つの部屋の大きさ、形、動きなどを確認することができます。

心肥大と心拡大は混同しがちですが、心肥大は心臓の筋肉の壁が分厚くなっている状態、心拡大は心臓の内腔(内部)の容積が増えて心臓が大きくなっている状態をいいます。

心肥大の原因で最も多いのは高血圧です。

その他、心臓弁膜症や肥大型心筋症などがあります。

心肥大が進行すると、拡張する力が弱まり、筋肉が傷んできて、将来的に心不全を生じます。

心不全は心臓の機能が悪化するために、むくみや息切れが起こり、じわじわと進行しながら、命を縮める病気です。

心肥大の段階では心不全の症状はまだ表面化していませんが("かくれ心不全"といいます)、この段階できちんと対処し、これ以上進行させないことが重要です。


《心肥大を起こす病気》

高血圧

高血圧があると、心臓は絶えず強い圧力をかけて血液を送り出さなければならず、心臓に過度な負担がかかるようになる。やがて負担増により心筋が硬く厚くなり、心肥大を引き起こす。

心臓弁膜症

心臓には血液の流れをコントロールするための弁が4つある(上記参照)。加齢などが原因で弁に異常が生じて、血液の滞りや逆流が起こる病気。心臓に負担がかかり、心臓が肥大する。

肥大型心筋症

心臓の心室の壁(心筋)が異常に厚くなり、心臓の機能障害をきたす病気。高血圧や心臓弁膜症などの原因を特定できないものを指す。多くの場合、遺伝性の原因が推定されている。

《心肥大を悪化させないためにできること》

◎血圧測定を毎日の習慣にする
家庭で毎日朝晩の血圧を測定し、高めの場合は医療機関に相談を

◎濃い味付けや塩分を控えたバランスの良い食事を取る
漬物・梅干し・佃煮などは控えめに。塩分の1日の摂取量を6g未満に

◎体重を減らす(肥満の場合)
メタボ体形や肥満は高血圧になりやすい

◎有酸素運動を定期的に行う
ウォーキング、スイミングなど30〜60分程度の運動をできれば週5日以上行う

◎アルコールの量を減らす
ビール大瓶1本または日本酒1合が1日の目安(心肥大の発症後は禁酒が望ましい)

◎ストレスをためない
ストレスは交感神経を刺激し、血圧を上げる原因となる

【心臓にいいウォーキング】

・はじめての人は1回10分×1日2回から
・開始5分はゆっくりと息が切れない程度の速度で歩く
・調子が良ければ20分の速足を交えると効果的

姿勢に気を付ける
・肩甲骨を寄せ、20m先を見る
・腕を振る。特に後ろに振る

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治療は心肥大を起こす原因疾患に対する処置が原則です。

これ以上肥大させないためには、生活習慣の改善と運動が有効です。

上記で紹介した方法を試してみてください。

心不全はがんよりも予後が悪い(治療後の経過あるいはその見通しが良くないこと)上、心臓は再生能力がなく、鍛えることができない臓器です。

一度心臓を傷めてしまったら、二度と取り戻すことができません。

生まれ持った"貯金"で、いかに目減りを最小限にするかが重要です。

胸部レントゲンや心電図は心臓病を発見する第一歩です。

健診などで異常を指摘されたら、早めに循環器内科を受診し、対処することが大切です。

取材・文/古谷玲子 イラスト/片岡圭子

 

<教えてくれた人>

新潟大学大学院 医歯学総合研究科 循環器内科学 主任教授
猪又孝元(いのまた・たかゆき)先生

1989年新潟大学医学部卒業、96年同大学大学院修了、北里大学医学部循環器内科学教授等を経て2021年より現職。心不全の啓発・発信の重要性を強く訴える。

この記事は『毎日が発見』2023年4月号に掲載の情報です。

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