こんな症状の人は気を付けて!「かくれ心不全」の原因となる病気

「かくれ心不全」という言葉を聞いたことがありますか? 「心不全」は心臓の働きが不十分なために、じわじわ命を縮める病気。「かくれ心不全」は、心不全のリスクはあるものの、自覚症状が出ていない「心不全予備軍」のことで、日本人に急増しているそうなんです。そこで、北里大学北里研究所病院の猪又孝元(いのまた・たかゆき)先生に、心不全と診断される前のステージ「かくれ心不全」の段階での対策について教えていただきました。

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心臓への負担となる要因を取り除く

「私は患者さんに、『心不全は予防が重要』と伝えています。しつこいくらい繰り返すのは、心不全は間違いなく予防できる病気だから。心不全と診断される前のステージA、Bの〝かくれ心不全〟の段階から対策を始めるべきといえます」とアドバイスする猪又先生。

心不全の〝入り口〟であるステージAは、心不全予防の第一の砦。

生活習慣病をきちんと治療することが、心不全予防につながります。

「なかでも高血圧は、心不全の大敵。血圧が高いと、つねに強い力で血液を送り出さなければならず、心臓への負担が大きくなります。けれども、血圧管理を続ければ、必ず効果はあります。血圧コントロールは、減塩と体重を減らすことが基本です。必要ならば医師の指導のもと降圧剤による治療を受けましょう」

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出典:〈厚生労働省〉脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る診療提供体制の在り方に関する検討会
「脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る診療提供体制の在り方について」(2017年7月 P35、図20より改変)


【ステージAで現れる生活習慣病】

●高血圧
血圧は、血液が流れるときに血管の壁にかかる力であり、高血圧は心不全の最大のリスクです。つねに高い血圧に逆らって血液を送り出す心臓への負荷は甚大。働き続ける心臓の筋肉は硬く厚くなり、ふくらみづらくなり、拡張不全を招きます。血圧の乱高下も心臓の働きに影響するため、血圧コントロールを良好に保つことが大切です。

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血圧低:血管壁が正常だと、心臓の負荷が少なくて済み、血流がスムーズ。2011_P042_02.jpg

血圧高:血管壁が厚くなると血管が細くなり、血液を流す圧力が高くなる。

●糖尿病
血液中のブドウ糖の量(血糖値)が多い状態。ドロドロ血液は、血管が硬くもろくなる動脈硬化を促し、心不全のリスクとなる心疾患の原因となります。血圧と同様、血糖値を管理する血糖コントロールが重要です。

●脂質異常症
血中のコレステロールや中性脂肪などが多い状態。心不全を招く動脈硬化を進めます。

●慢性腎臓病
血液を浄化する腎臓の働きが低下すると、心不全などの心臓血管病リスクが上がります。

●高尿酸血症
心不全リスクを上げる高血圧や糖尿病などの原因になり、心不全の合併症でもあります。

●そのほか...
・肥満 
・喫煙など


心臓の病気が現れているステージBは、心不全を防ぐ正念場です。

心臓病があっても、心不全の症状が出ていなければ、まだ十分回復のチャンスはあります。

「とくに気を付けたいのが、心臓の筋肉に血液を送る太い血管・冠動脈が狭くなる『狭心症』、血栓で血管が詰まる『心筋梗塞』。突然死にもつながる心筋梗塞により壊死してしまった心筋は元に戻りません。部分的であっても、心臓の機能低下は免れません」


【ステージBで現れる心臓の病気】

●心筋梗塞(狭心症)

2011_P043_01.jpg心筋に血液を送る冠動脈が詰まる(心筋梗塞)か、狭まる(狭心症)ことで血液が行き渡らず、その部分の心筋が壊死してしまう。死に至ることもあり、治療しても心不全リスクが高まります。

●心臓弁膜症
フタのように閉じたり開いたりして血流を制御する"弁"に不具合があり、血液の滞りや逆流が起こる病気です。心臓や肺に血液がたまるなどの血流障害が、心臓へ負荷をかけます。

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●心筋症

2011_P043_03.jpg心臓の筋肉が厚くなったり、のびきってしまい、うまくのび縮みができず、心臓のポンプ機能が低下。さまざまな症状が見られますが、息切れ、むくみなどが現れ、心不全へとつながります。

●不整脈
脈は心筋を動かす電気信号です。不整脈で信号が乱れると、心臓のポンプ機能に不調をきたします。脈が速くなる「頻脈」、脈が遅くなる「徐脈」、脈が飛ぶ「期外収縮」がありますが、心不全で注意したいのは頻脈と徐脈。

[不整脈の波形]

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病名ではありませんが、「心肥大」も心不全のリスクの一つにあげられます。

心臓が肥大すると、心臓の広がる力が衰え、心臓の働きが悪くなるほか、不整脈を起こしやすくなることも分かっています。

「心肥大は、心臓が懸命に血液を送り続けた結果、心筋が鍛えられて大きくなった状態です。過剰な筋トレが筋肉を硬く傷つきやすくするように、筋肉の質が悪いため、心機能が低下すると考えられます」

心肥大の主な原因も高血圧。

ステージAで生活習慣病を放置したことで、これらの病気を招くこともあるので要注意です。

[心肥大にご用心!]

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高血圧などが原因で、心臓が働き過ぎになり、心筋が鍛えられて厚く大きくなってしまうこと。収縮がうまくいかず心不全リスクが上がります。

【まとめ読み】特集「かくれ心不全にご注意!」記事リスト

取材・文/湊 香奈子 イラスト/角 裕美

 

<教えてくれた人>
北里大学北里研究所病院 循環器内科教授
猪又孝元(いのまた・たかゆき)先生
新潟大学医学部、同大学院医学研究科卒業後、ドイツのマックスプランク研究所へ留学。帰国後、北里大学病院循環器内科学講師を経て、現職に。心不全の診療ガイドライン作成にも関わる。心不全治療のスペシャリスト。

この記事は『毎日が発見』2020年11月号に掲載の情報です。

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