命の危険が大きい「大動脈瘤」は破裂するまで無症状がほとんど! 定期的な検査を怠らないで

自覚症状がないまま大きくなることが多い、大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)。そのままにしておくと、破裂して命の危険に関わることも。今回は、帝京大学医学部附属病院 心臓血管外科主任教授の下川智樹(しもかわ・ともき)先生に、「大動脈瘤」についてお聞きしました。

【前回】しゃがれた声が危険のサインかも。破裂したら死亡確率は8割!心臓の専門医による「大動脈瘤」を防ぐ方法

生活習慣病の改善が予防の最大のカギ

「大動脈瘤の最大の原因は生活習慣病により血管が硬くもろくなる動脈硬化です。高血圧や高血糖、高LDLコレステロールなどを放置し、知らぬ間に大動脈瘤が生じることがあります」と、下川先生は警鐘を鳴らします。

長らく続いたコロナ禍で、食生活が乱れて体重が増えたものの、健康診断などは感染予防の一環として控えた人もいるでしょう。

動脈硬化は加齢によっても進行しますが、高血圧などが悪化しているとさらに後押しをします。

もろくなった血管に血液が流れることで、大動脈瘤に加え、血管壁が裂けて重篤な事態につながる「大動脈解離」(下記)のリスクも高まります。

「高血圧の放置は、大動脈瘤破裂の引き金になるので特によくありません。降圧薬の適切な使用や食生活の改善に取り組みましょう」と下川先生。

すでに生活習慣病と診断されている人は、主治医の指導に従うことが肝心。

健康診断などの定期健診で体の状態を確認することも重要です。

「暴飲暴食や喫煙はやめ、ストレス発散も大切です。また、血管を柔軟に保つために運動習慣も維持していただきたいと思います」と、下川先生。

日頃の予防を心がけ、声などの異変も見逃さないようにしましょう。

《もう一つの重要な大動脈の疾患「大動脈解離」とは?》

血管壁は内側から「内膜」「中膜」「外膜」の3層から成ります。

大動脈解離は大動脈の「内膜」が裂け、その亀裂から「中膜」に血液が流れ込む病気。

これにより血管壁が膨らんで血流を悪くしたり、「外膜」が破れると、激痛とともに大出血によって突然死につながります。

ただし、血管壁が一部裂けただけでは、激痛はそのうち治まってしまいます。

治ったと思われがちですが、解離の状態は続いており、血圧の変動などで一気に「外膜」が破れる事態にもつながるので注意が必要です。

胸や背中にいつもと違う激痛を感じたら救急車を。

また、症状が治まっても、循環器内科や心臓血管外科を早めに受診しましょう。

異変を見逃さないようにすることが重要です。

「大動脈瘤」を予防する生活習慣

暴飲暴食はやめ、塩分や糖分を摂り過ぎない

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生活習慣病は大動脈瘤を進行させます。暴飲暴食は控え、魚や野菜などを含むバランスのよい食事を、1人前の適切な量で摂りましょう。酒、塩分、糖分を摂り過ぎないことも大切。

たばこを吸っている人は直ちにやめる

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たばこに含まれるニコチンなどの化学物質は、動脈硬化を促進させ、血圧も上昇させます。血管壁を変性させることで大動脈瘤や大動脈解離の引き金になります。すぐに禁煙を。

ストレス発散を心がける

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過度なストレスは動脈硬化を進行させ、血圧上昇も後押しします。ストレスから逃れることは難しいですが、日常生活の中でちょっとした楽しみを見つけるなどして発散しましょう。

有酸素運動を行うことを習慣化する

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ウォーキングなどの有酸素運動を行うと、血管壁を柔らかくする物質「NO」が生じるなどして動脈硬化の予防につながるといわれています。1日30分~1時間、無理のない範囲で。

※スクワットは軽めの負荷をかけて長めに行うことで、有酸素運動の効果を得ることができます。

大動脈瘤の治療法

人工血管置換術(手術)
コブの部分の大動脈を切除し、人工血管に置き換える手術。術後は破裂の心配はなくなりますが、手術自体は心臓を止めて人工心肺という医療機器を用いるなど大掛かりになります。

ステントグラフト内挿術
血管内に金属の筒「ステントグラフト」を置いて血管壁の血流を止め、コブを小さくします。開胸・開腹せず、体の負担も少なめですが、治療後にコブが再拡大することも。その場合は手術に。

薬物療法
破裂リスクが低い経過観察の際、降圧薬や脂質異常症の薬で動脈硬化の促進を抑制し、コブが大きくなるのを防ぎます。コブは小さくはならず、あくまでも大きくしないための治療となります。

取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史

 

帝京大学医学部附属病院 心臓血管外科主任教授 
下川智樹(しもかわ・ともき)先生

1992年、佐賀医科大学卒。榊原記念病院、佐賀医科大学胸部外科などを経て、2009年9月に帝京大学医学部心臓血管外科学講座主任教授、2019年4月に榊原記念病院成人心臓血管外科
主任部長(兼任)に就任し、現在に至る。

この記事は『毎日が発見』2023年3月号に掲載の情報です。

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