「心臓弁膜症」をご存じですか? 最近では、エドワーズライフサイエンス株式会社が、心臓弁膜症に関する理解促進と啓発を目的に、5月からテレビCMの放送を開始しました。年々、患者数が増加する心臓弁膜症の早期発見、早期治療が呼びかけられています。そこで今回は、東京大学大学院 医学系研究科 循環器内科学 教授の小室一成(こむろ・いっせい)先生に「心臓弁膜症」についてお聞きしました。
心臓弁膜症とは?
心臓には、血液が逆流せずに一方向に流れるよう、右心室と左心室の入り口と出口に合わせて4つの弁があります(図参照)。この弁に不具合が起こるのが心臓弁膜症。
心臓弁膜症には、大きく分けて、狭窄症と閉鎖不全症の2タイプがあります。
狭窄症の弁
弁が正常に開かず、出入り口が狭くなって血液が流れにくくなる状態。
閉鎖不全症の弁
弁がしっかり閉まらず、血液が逆流してしまう状態。
こんな症状ありませんか?
□ 散歩の途中で立ち止まるようになった
□ 階段を上るだけで、息切れが長引くことがある
□ 坂道や階段のある場所を避けてしまう
□ 早足で歩くと、胸が痛むことがある
□ 突然、気を失ってしまうことがある
一つでも思い当たることがあったら、早めに医療機関を受診しましょう。
手術は?
カテーテル治療
太ももの付け根の動脈から医療用の細い管(カテーテル)を心臓まで届かせて不具合のある弁を人工弁に取り換える治療。体への負担は少なめ。
外科手術
全身麻酔で胸を開き悪くなった弁の機能を回復させる治療。体への負担の少ない低侵襲手術もあり。
心臓弁膜症の患者数は、年齢とともに上がる傾向にあります。
日本では、65~74歳で約150万人、75歳以上は約235万人と推測されています。
加齢が主な原因とされますが、初期には症状に気付きにくく、見逃されがちだと小室一成先生。
「"洗濯物を干すときに息切れがする" "散歩の途中で立ち止まる"など、これまでと違う症状があったら、かかりつけ医を受診してください。聴診を受けることで、病気の発見につながります。また、健康診断で心雑音が指摘された場合は、循環器専門の医師に相談を。心臓弁膜症は心不全の原因にもなります。心不全は、心臓弁膜症をはじめさまざまな心臓の病気が最終的に至る状態です。早期に発見し、適切に治療することで、心不全の予防や進行防止に役立ちます」
心臓弁膜症の診断の確定は、心エコー図検査(超音波検査)で行います。
検査は痛みを伴わず、30分程度で終わる簡単なもの。
発症すると進行する病気のため、心エコー図検査を用いての定期的な確認が必要です。
症状が軽いうちは、薬によって症状を緩和させ経過観察を行います。
重症になると手術が必要です。
「カテーテル治療は胸を開く必要がなく、開胸手術に比べて手術時間、入院期間ともに短く、体への負担も少ないのが特徴です」(小室先生)
気になる症状がある人は、一度医師による聴診を受けることをおすすめします。
取材・文/寳田真由美(オフィス・エム) イラスト/坂木浩子