命に関わるさまざまな病気を引き起こす高血圧。国内に4300万人はいると推計される一方、対策が続かなかったり放置したりしている人は3100万人。そこで10人の名医が本気ですすめる、最新の高血圧を治す方法をご紹介。今回は、自治医科大学内科学講座 循環器内科学部門 教授の苅尾七臣(かりお・かずおみ)先生が実践している「血圧を下げる方法」を教えてもらいました。
【前回】循環器系の名医の「血液を下げる方法」。しょうゆ+だし汁+酢の「マイ減塩しょうゆ」で塩分カット!
高血圧、動脈硬化、老年病学の権威
苅尾七臣先生
「生活のリズムを整えることが健康への近道です」
[食事]
海藻やナッツなどで塩分排出&血管強化
塩辛いものは全般的に控えています。塩分の摂り過ぎは、高血圧、心不全、脳卒中などのリスクになることが研究結果から明らかになっており、「食塩感受性(食塩摂取で血圧が上昇し、減塩で血圧が下降しやすいこと)」を防ぐためです。体重増加予防のため、カロリーの多いものも避けています。
よく食べているのは、カリウムを多く含む海藻類、緑色野菜、バナナなどの果物、マグネシウムやカルシウムの多いナッツ類。カリウムはナトリウム(食塩の主成分)の排出を促して、血圧を下げる働きがあり、血管の酸化ストレスの軽減に役立ちます。マグネシウムは血管の緊張を解いて、弾力性を保つ働きを持ち、「天然の降圧薬」と呼ばれる栄養素なんですよ。
[運動]
食後すぐの運動で血糖値上昇を防ぎます
血糖が上昇し始める食後30分以内に、すぐに体を動かすようにしています。通勤で20分、夜に20分、一日に計40分ほど早歩きをしています。休日は2時間の散歩をすることも。また、昼食後はできるだけ座らずに立位を保っています。
[予防のポイント]
血圧は最も身近な健康維持の指標です
最も大事なのは、生活のリズムを整えること。起床・就寝、食事の時間を決め、生活を一定に保つことにより自律神経が正常に働き、血圧を一定にコントロールできるのです。その土台の上にあるのが食事内容や運動です。
まずは日々の睡眠を見直し(下記)、減塩と体重コントロール、バランスの良い食事を心がけましょう。60歳を超えると歩行する力も重要となるので、無理なく楽しみながらできる運動も。まとめて行うより、一日一回でも10分でもこまめに行った方が効果的です。
血圧は食事、運動量、睡眠、ストレスなどの影響を受けて日々変化します。これを個人が身の回りの環境から受ける「ストレスのセンサー」だと捉え、決められた環境下で正しい知識を身に付け、できることを毎日繰り返し行うことが、結局、健康維持への近道です。
《私も実践しています》
良好な血圧を保つ「7時間」程度の睡眠
高血圧の改善には、規則正しい起床・就寝が不可欠。朝~昼は交感神経の働きで血圧が上がり、夜は副交感神経の働きで血圧が下がります。この2つの自律神経が適切なリズムで切り替わることにより血圧の正常パターンが保たれます。必ず24時前には床に就くこと。高血圧予防と健康維持には約7時間の睡眠が必要とされています。
取材・文/岡田知子(BLOOM) イラスト/鈴木衣津子