突然、倒れて命を失う。助かっても寝たきりになることも...。そうならないためには、どうすればいいのでしょうか? IMSグループ横浜新都市脳神経外科病院院長の森本将史(もりもと・まさふみ)先生に、「脳梗塞と後遺症」についてお聞きしました。
脳梗塞は人生を変えてしまう病気です
脳梗塞、脳出血、くも膜下出血を総称して脳卒中といいます。
1960年代までは、塩分の取り過ぎなどにより、脳卒中のなかでも脳出血を発症する人が圧倒的多数でした。
健康意識が高まり脳出血の発症数は減りましたが、今度は脂質や糖分の多い食事が増えた「食の欧米化」を背景に、近年では脳卒中の約7割が脳梗塞になりました。
脳梗塞で亡くなった患者数は、年間約5万9000人(令和元年人口動態統計の概況より)。
治療が発達したので、昔に比べると死亡率はかなり減り、発症しても約半数の人は社会復帰しています。
とはいえ、寝たきりや認知症など要介護になる原因で一番多いのは、脳梗塞を含む脳卒中なのです。
平成28年度厚生労働省「国民生活基礎調査」より
令和2年度厚生労働省「人口動態統計」より
後遺症によって要介護のリスク大
脳梗塞は、脳の血管が詰まったり狭くなったりして、脳の細胞に血液が流れなくなった結果、その部分が死滅してしまう病気です。
脳梗塞が怖いのは、命の危険があることはもちろん、助かったとしても、要介護になる可能性が高いということ。
介護が必要になると、本人だけでなく、家族の人生もガラリと変わってしまいます。
「後遺症が残るかどうかは、どれだけ早く症状に気付くことができるか、最新治療を施せる病院に搬送できるか、リハビリを適切に行えるかで、大きく違ってきます。治療ができたとしても、重い意識障害が起こるとリハビリで体を動かすことができません。普段は健脚自慢でも、1~2週間ベッドで安静にしただけで筋力が落ち、歩けなくなることがあるのです。そしてそのまま寝たきりになることもあります。また、脳の障害から認知症を発症することもあります。それが脳梗塞の怖いところです」(森本先生)
《脳梗塞の主な後遺症》
片麻痺
左右どちらかの手足が動かない。または動かしにくくなる。
複視
物を見たときに上下か左右、斜めなどにずれてダブって見える。
失語症
思ったように話せない、話せるが相手の話は理解できないなど。
構音障害
口や舌、声帯などに障害が起こり、うまく発声ができなくなる。
高次脳機能障害
記憶力や注意力、感情のコントロールなどが難しくなる。
感覚障害
体の左右どちらかの感覚が分かりにくくなる。
嚥下障害
飲食物をうまく飲み込めない。誤嚥性肺炎を引き起こすことがある。
半側空間無視
左右どちらかの空間が認知できず、片方の視野が欠けてしまう。
取材・文/石井信子 イラスト/ノグチユミコ