実に患者数は国内に約16万人! パーキンソン病を改善する脳深部刺激療法とは?

パーキンソン病の症状を改善する脳深部刺激療法の機器に、脳波に応じて刺激を自動調整する機能が新たに搭載。この技術は世界に先駆けて日本で薬事承認され、2020年12月保険適用に。日本メドトロニック(※)が発表しました。そこで今回は、順天堂大学 医学部附属練馬病院 脳神経内科 教授の下 泰司(しも・やすし)先生に「パーキンソン病の症状や新しい治療法」についてお聞きしました。

※世界150カ国以上で医療技術、サービスなどを提供する医療機器の多国籍企業「メドトロニック」の日本法人。

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大多数の患者が原因不明というパーキンソン病。

発症すると運動障害が現れて生活の質が下がり、寝たきりになる人も。

「治療は基本的に薬物療法です。しかし、病気が進行し薬物でのコントロールが難しい場合は、脳深部刺激療法(DBS)が有効なケースもあります」と、下泰司先生。

脳深部刺激療法とは、ペースメーカーのような小さな機器を胸部に埋め込み、脳深部に埋め込んだ電極から微弱な電気刺激を送ることで、運動症状(手足の震えや体の動かしにくさ)を改善します。

適応は、特発性のパーキンソン病であること(治療薬であるレボドパに反応する)、ウェアリングオフ(薬が効かない時間が出る)やジスキネジア(薬が効き過ぎて意思に反して手足が勝手に動く)があること、明らかな認知症や精神症状がないことが条件。

「進行期の患者さんの中には、薬が1~2時間しか効かない、1日5回以上薬を飲んでいる、薬が効くとジスキネジアに、切れると動けなくなるなどの症状で困ることも。このような症状をお持ちの方は、DBSで症状がなだらかになり、薬の服用回数も減ります」。

最近では、埋め込んだ電極周囲の神経細胞活動をモニターしながら電流を流す機器もあり、症状の変化に応じた対応も可能に。

パーキンソン病は、的確な時期によい治療法を見出すことで、長く元気に暮らせます。

治療法にお悩みの方は、一度医師に相談を。


パーキンソン病の患者数は国内に約16万人

パーキンソン病は、脳の異常のために体の動きに障害が現れる病気です。

現在、日本では16万人以上の患者がいるとされ、高齢になるにつれて頻度が上昇するといわれています。

症状は?
・手足が震える
・動作が遅い・少ない、動きがなくなる
・筋肉が固まり、痛みやこわばりを感じる
・小刻みで足をすった歩き方になる

治療は?
薬物療法と手術療法があります

【薬物療法】
ドパミン系を補充する薬などさまざまな薬があり、年齢や症状により組み合わせて使います。運動機能の改善が期待できますが、長期間服用すると、効果が失われたり副作用が生じることがあります。

薬は3タイプ

[ドパミン補充薬]
ドパミンの働きを補う作用を持つ薬。
レボドパ、ドパミンアゴニスト

[非ドパミン系治療薬]
ドパミン不足で乱れた神経のバランスを整える

[補助薬]
上記と異なる作用で症状を軽減させるもの

【手術療法】
主流は脳深部刺激療法。脳の奥に電極を埋め込み、弱い電気刺激を与えることで運動機能を改善します。

脳深部刺激療法(DBS)の機器構成

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取材・文/オフィス・エム(寳田真由美) イラスト/坂木浩子

 

<教えてくれた人>
順天堂大学 医学部附属練馬病院 脳神経内科 教授
下 泰司(しも・やすし)先生
医学博士。1994年順天堂大学医学部卒業、2002年同大学医学部大学院医学研究科卒業。同年米国エモリー大学神経学講座留学、20年より現職。

この記事は『毎日が発見』2021年6月号に掲載の情報です。

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