50~60代での発症が多い、原因不明の難病「パーキンソン病」の基礎知識

「パーキンソン病」をご存じでしょうか? 脳の異常のために、体の動きに障害が現れる病気で、日本での患者数は約20万人ほどと言われています。原因は不明で、難病指定されていますが、適切な対処法はある、といいます。そこで、東京医科大学病院 脳神経内科主任教授の相澤仁志(あいざわ・ひとし)先生に、その仕組みや症状について教えていただきました。

体を動かすときの脳の働き

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パーキンソン病になると...50~60代での発症が多い、原因不明の難病「パーキンソン病」の基礎知識 2008_P086_002.jpg

運動の指令が全身にうまく伝わらなくなり、体の動きに障害が現れます

歩みが遅い、手が震える。気になるときは即受診

家族や友人など誰かと一緒に歩いているときに、気が付けば遅れて距離が開いてしまうようなことはありませんか? 

歩幅が狭くなって歩みが遅れるようなことは、運動不足や加齢でも生じます。

一見「年のせい」と勘違いされるような症状ですが、パーキンソン病でも起こるのです。

「パーキンソン病は、65歳以上の発症率が高く、日本では増加傾向にあります。高齢での症状は、『年のせい』と見過ごされてしまうことがあるのです。パーキンソン病は、原因不明で難病指定されていますが、上手に付き合えば、パーキンソン病以外の人と変わらない生活ができるといわれています。早めに診断・治療を受けることが大切です」と相澤仁志先生は説明します。

パーキンソン病は、脳の黒質という部分で、神経伝達物質のドパミンを作る神経細胞が減少・消失します。

ドパミンは運動の神経に関わるため神経細胞が減って運動の指令がうまく伝わらなくなると、動作がゆっくりになってしまう運動緩慢、手が震える(振戦)などの症状が現れます。

とはいえ、パーキンソン病は、神経細胞が少しずつ減少していくため、急に手の震えなどの症状が出るわけではありません。

人によって症状の出方も異なり、うつ病のように、別の病気の症状と重なることもあります。

例えば「最近、うつっぽい」との理由から医療機関を受診し、パーキンソン病と診断された人もいました。

気になるときには脳神経内科を受診しましょう。

「歩みが遅い、あるいは手が震えるといった運動症状が気になって受診される方が多いのですが、運動症状の前に、匂いが分からなくなる嗅覚障害や、便秘、就寝中に夢で見たことに反応して大声を出すなどのレム睡眠行動異常症が起こる人もいます」。

夢を見ているときには、脳は活動しているけれども体は休んでいるため、夢で見たことに対して行動が連動することはないのが一般的です。

ところが、レム睡眠行動異常症では、行動も伴ってしまうのです。

仮にケンカをしている夢を見たとすると、大声を出し、実際に横に寝ている家族を手で殴る、足で蹴るといった行動に結びついてしまうのです。

そのような症状が続くことで受診し、パーキンソン病と診断される方もいます。

「嗅覚障害は、パーキンソン病の患者さんの7~8割に生じ、慢性的に続く症状といえます。一方、レム睡眠行動異常症は、運動症状の出る前触れの可能性が指摘されています」と相澤先生は説明します。

パーキンソン病の仕組み、患者数は?

●中脳のドパミン神経細胞が減少し、ドパミンが十分に作られなくなる。その結果、運動の調節がうまくいかなくなり、体の動きに障害が現れる。

●日本での患者数は約20万人(人口10万人あたり100~180人程度)

●50~60代で発症することが多い

パーキンソン病の主な症状は?

●振戦(しんせん)

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手、足、あごなどが震える

ジッとしているときに手が震え、何かをするために手を動かすと手の震えが止まる。指先の細かい動作が苦手になった。

無動(むどう)

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全身の動作が鈍くなる
動き出しや、動くのに時間がかかる。歩く速度が遅くなる。歩幅が小さくなった。

●筋強剛(きんきょうごう)

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筋肉が硬くなる
他人が腕や足を動かそうとすると、関節がカクカクするような抵抗を感じる(自分では分かりにくい)。手足の筋肉が硬くこわばるように感じる。

●姿勢反射障害

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バランスが取れない
重心がぐらついたときに、姿勢を立て直すことができず、そのまま倒れてしまう。転びやすくなった。

そのほか「レム睡眠行動異常症」も
例えば戦う夢を見ているときに、大声を発し、足を動かす、手で殴るような動作や足で蹴るような動作を実際に行ってしまう症状で、繰り返して起こります。

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取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史

 

<教えてくれた人>
東京医科大学病院 脳神経内科主任教授
相澤仁志(あいざわ・ひとし)先生
1982年旭川医科大学卒。東京大学医学部神経内科、ハーバード大学・マサチューセッツ総合病院、旭川医科大学神経内科、国立病院機構東京病院などを経て2013年より現職。

この記事は『毎日が発見』2020年8月号に掲載の情報です。

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