何かとストレスが溜まるコロナ禍での自粛生活。食生活の乱れや運動不足で高血糖状態になり、糖尿病を発症するリスクが上昇しているといいます。そこで今回は、栗原クリニック東京・日本橋院長の栗原 毅(くりはら・たけし)先生に、血糖対策の重要指標「HbA1c」についてお聞きしました。
自粛生活中の食生活の乱れや
運動不足で高血糖状態に
糖尿病を診断する数値に「血糖値」がありますが、実はもう一つ重要な数値があります。
それが、「HbA1c」。
HbA1cって何?
過去1~2カ月の平均的な血糖の状態を表す数値。血液中の赤血球に存在するヘモグロビンに血液中の過剰なブドウ糖がくっついたもので、血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)が高いほどヘモグロビンにくっつくブドウ糖の量が多くなり、HbA1cが高くなります。
《数値の見方》
日本人間ドック学会の指標によると、HbA1cの数値が5.6%以上の場合は要注意。食習慣や運動不足などを改善し、基準範囲を目指します。改めて健康診断の結果を確認してみましょう。
※1 将来、脳・心血管疾患を発症し得る可能性を考慮した基準範囲。
「血糖値は日々の食事内容や食前・後で変動しますが、HbA1cは過去1~2カ月の平均した血糖を表す数値。日常の血糖の状態を知ることができ、糖尿病の早期発見に役立ちます」と、栗原毅先生。
HbA1cを基準範囲にするには、「食生活の改善の他、 血糖値スパイクを起こさない食べ方を心がけましょう。特に50代以上の女性はパンや果物、間食など糖質を摂り過ぎています。また、中性脂肪が高いと糖尿病のリスクも高まるので要注意です」(※2)
※2 血糖値スパイクとは、食後の短時間に血糖値が急上昇すること。普段の血糖値が正常な場合でも起こり、主な原因は糖質の多いメニュー、空腹時のドカ食い、早食いなど。血糖値スパイクを繰り返すと、HbA1cの数値も高くなる。
HbA1c・血糖値を下げる生活習慣
【食事編】
炭水化物(糖質)は10%程度を減らし、炭水化物5:たんぱく質3:脂質2の割合が理想的。
夏は、糖質が多いそうめん、スイカ、スポーツドリンクやジュースの摂り過ぎにも注意を。
1.グラム数を意識する
たんぱく質は"体重のグラム数"を
肉や卵など、糖質が少なく、筋力を強くするたんぱく質は積極的に摂りたい栄養素。体重60kgの人なら、1日に60g以上を。
1日25gの高カカオチョコレート
カカオ成分70%以上のチョコレートに多く含まれるポリフェノールが、インスリンの働きを改善。食物繊維も豊富です。
2.腸に良い食品を摂る
食物繊維はたっぷりと
食物繊維は消化器官の中をゆっくり進みながら、糖質を包み込んで消化吸収を遅らせます。カロリーもほぼ0kcal。
ヨーグルトで腸内環境を整える
腸内環境を整えてくれる他、ヨーグルトに含まれる「ホエイプロテイン」がインスリンの分泌を促進。無糖のものを。
3.食べ方に注意する
ひと口につきかむのは31回
ゆっくり食べると糖質の吸収が緩やかに。ひと口ごとによくかみ、その間は箸をテーブルの上に置くと良いでしょう。
食べる順番も大切です
野菜→肉・魚などのおかず→汁もの→主食の順に食べて血糖値の上昇を抑えます。少食の人は先に肉や魚などを食べます。
【生活編】
血糖対策には運動が不可欠。筋肉が増えるとエネルギーの必要量も増え、ブドウ糖を消費するため、血糖値が上がりにくくなります。
歯周病も糖尿病の大敵なので、歯磨きは入念に。
4.運動と歯周病を気にする
1日10回のスロースクワット
まず体の中で最大の筋肉である太もも表側の大腿四頭筋を強化。5秒で腰を下ろし、5秒で上げます。朝5回、夜5回。
歯磨きは10分以上だらだらと
歯周病を治すとHbA1cが下がり、糖尿病が改善することが分かっています。テレビなどを見ながら時間をかけて。
取材・文/岡田知子(BLOOM) イラスト/タチバナミー