ワクチン接種が始まり、ニュースで耳にすることも多いアナフィラキシー。また、感染拡大が不安視される変異ウイルスについて、米国立研究機関博士研究員の峰 宗太郎(みね・そうたろう)先生に伺いました。今回は、後編をお届けします。
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【疑問】アナフィラキシーを起こしたらどんな治療が必要ですか?
「基本は、アドレナリンという薬を太ももの外側に注射します。人によっては、経過観察で入院が必要となる場合もありますが、適切な治療で症状は改善します」
【疑問】変異したウイルスと従来のウイルスは何が違うのですか?
「新型コロナウイルスの変異というのは、ウイルスの遺伝情報が書き換わってしまうことで、ウイルスのタンパク質の一部が変異することをいいます。日本でも話題になっている英国型や南アフリカ型、ブラジル型などは、新型コロナウイルスの表面にあるスパイクというタンパク質で変異が起きています。スパイクは、ウイルスがヒトの細胞に侵入する際、ヒトの細胞の表面にあるタンパク質とくっつく役割を担っています。
では、変異ウイルスの何が問題なのかというと、主に三つ考えられます。まず、ウイルスの変異によって感染が広がりやすくなること。次に、重症化率・致死率が上がる可能性があること。最後に、ワクチンや薬が効きにくくなることです。ただ、日本でも接種が始まったワクチンの効果が、失われたわけではありません。スパイクタンパク質は1273個のアミノ酸基が連なったもので、そのうちの数個の変異で効果が大きく変わるとは考えにくいものです。実際、mRNAワクチンについては、効果が極端に下がるようなものはないことが確認されています。また、ファイザーや(日本で接種予定の)モデルナでは、ともに変異ウイルスに対する新たなワクチン開発も始まっています。流行が続く限り、変異ウイルスは発生し続けます。変異ウイルスの出現を抑えるには、新型コロナウイルスの流行を抑えることが最も重要です」
《新型コロナウイルス変異の仕組み》
【新型コロナウイルス】
【変異で構造が変わることがある】
【疑問】変異ウイルスの流行を防ぐ方法はあるのでしょうか?
「変異ウイルスだからといって特別なことは必要ありません。マスクを装着する、3密を避ける、こまめに手洗いをする、できる限り外出を控えるといった、これまでやってきた基本的な感染対策をあらためて徹底するように心がけましょう。また、たとえワクチンを接種したとしても、まだ会食やカラオケ、サークル活動などを楽しめる段階ではないということを、覚えておいてください。高齢の方やハイリスクの方にまで、十分ワクチンが行き渡るまでは、油断せずに感染予防に努めることが大切です。計画通り(6月末までに65歳以上の高齢者全員分の必要量を供給見込み)にワクチンが供給されることを期待しつつ、この状況を乗り切りましょう」
※掲載内容は、4月12日時点の情報に基づいています。
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取材・文/寳田真由美 イラスト/上路ナオ子