ワクチン接種が始まり、ニュースで耳にすることも多いアナフィラキシー。また、感染拡大が不安視される変異ウイルスについて、米国立研究機関博士研究員の峰 宗太郎(みね・そうたろう)先生に伺いました。今回は、前編をお届けします。
【疑問】日本人は接種後のアナフィラキシーが多いって本当ですか?
「アメリカなどでは、ワクチン接種後のアナフィラキシーの基準が明確です。具体的には、湿疹などの皮膚疾患プラス循環器症状、呼吸器症状など二つ以上の症状がみられた場合とされますが、日本の場合はその場で医師が"アナフィラキシーっぽい"と判断した事例全てが報告されているため、数が多くなっていると考えられます。また、医療従事者から先行接種していることも理由の一つ。実は一般の方よりも医療従事者の方がワクチン接種後のアナフィラキシーが多いのは、アメリカも同じ。理由は明確ではありませんが、mRNAワクチンに含まれるPEG(ポリエチレングリコール)という成分が原因と考えられています。PEGは、医薬品や化粧品、日用品に多く含まれ、そういったものに普段から触れている人の方がアレルギーが起こりやすいのではないかと考えられます。そのため、普段からPEGの含まれたものに触れる機会の多い医療従事者は、PEGに過敏になっている人の割合が高い可能性があります。また、今回のmRNAワクチンでアナフィラキシーを起こすのは女性が圧倒的に多いと言われますが、これも女性の方が、化粧品などPEGの含まれたものに触れている機会が多いせいと考えられます。ただ、アナフィラキシーは対処可能なものなので、過度に恐れる必要はありません」
【疑問】薬でアナフィラキシーを起こしたことがあっても大丈夫ですか?
「今回のワクチンで注意が必要なのは、PEGへのアレルギーがある人。要するに、mRNAワクチンの1回目を接種後、アナフィラキシー反応が出た人は、2回目は打ってはいけないということです。それ以外の食べ物や花粉症などのアレルギーがある人、抗生物質などでアナフィラキシーが出たことのある人は、心配ありません。また、アナフィラキシーは、原因となる成分を投与したり、接種してから30分以内に生じるのが一般的で、それより後に出ることはほぼありません。過去にアナフィラキシーを起こしたことがあって心配な方は、接種後30分はその場で様子をみるようにしてください」
《アナフィラキシーの診断基準って?》
ワクチン接種後、数分~数時間以内に、下記のうちの二つ以上の症状が現れる。
または、急速に血圧が低下するとアナフィラキシーと診断されます。
消化器系
・腹痛が続く
・嘔吐が続く
皮膚・粘膜
・じんましん
・かゆみ
・赤くなる
・まぶたがはれる
など
全身
・血圧低下
・意識を失う
・倒れる
呼吸器系
・息切れ
・せき
・ゼーゼー、ヒューヒューする
参考:日本アレルギー学会「アナフィラキシーガイドライン」
※掲載内容は、4月12日時点の情報に基づいています。
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取材・文/寳田真由美 イラスト/上路ナオ子