冬に入り、寒さから体調を崩したりして、どうしても胃腸が弱りがちになりやすいです。そんなときは日本流の薬膳ごはんを取り入れてはいかがでしょうか? 薬膳料理の大家・追立久夫さんのアイデアをもとに日常的な料理に落とし込んでいるのが、人気レストラン「然の膳」。その「然の膳」の著書『大人気レストラン「然の膳」の世界一美味しいカンタン薬膳ごはん』より、薬膳の基本から、中国と日本の薬膳料理の違い、かける薬膳の考え方や作り方など家庭でも気軽に実践できる「薬膳ごはん」情報をご紹介します。
皮や芯には栄養たっぷり!
環境にもお財布にもやさしい薬膳
薬膳料理を作るときに、大事なことは、食材を大切にすること。
「然の膳」の総料理長である追立久夫が、調理場に入って最初に見るのはゴミ箱。
そして、そこに捨てられている、玉ねぎの皮、ミカンの皮、またさまざまな野菜の根っこを見つけると、「もったいない」とひと言。
玉ねぎの皮は干してお茶にできるし、煮つければおいしいおかずになります。
ミカンの皮は生薬のひとつとして用いられるほどの栄養の宝庫。
白菜の芯は、スープに入れるとおいしいスープになります。
魚のウロコだって捨てません。
天日干しして、油で炒めると、天然素材のスパイスに早変わりします。
追立がよくいうのは、「野菜の顔は関係ない」。
野菜がどんなカタチをしていても、調理すれば、おいしい健康食材になります。
根っこも皮も捨てるところなどありません。
ただし、皮に関しては、無農薬栽培、有機栽培されていない場合は、よく洗ってから調理する必要があります。
そもそも野菜や果物の栄養分がたっぷり含まれているのは、実の部分ではなく、皮だったり、芯だったりします。
たとえば、とうもろこし。
茹でたり、焼いたりするとおいしいとうもろこしの実ですが、健康効果があるのは、実は、芯の部分。
夏になると、ごはんにとうもろこしの実を入れて、とうもろこしごはんを作る人もいると思いますが、芯も一緒に入れて炊いてみてください。
皮と芯、さらにひげとかつお節で煮立ててみてください。
これで、とうもろこしの効能を得られるごはんになるし、スープになります。
実だけを使ったスープが好きな人も多いでしょうが、健康効果は他の部分を使ったほうが高まります。
いつも捨てている部分を捨てずに料理に活かせば、食費を抑えることもできます。
なんでもぬか床に漬ければ、あっという間に作り置き薬膳
捨てるところがない食材を丸ごと使い切る方法として、おすすめなのが、ぬか床を使った、ぬか漬け。
ぬか床には、なにを入れてもかまいません。
野菜でも、果物でも、魚でも、昆布でも、好きなものを入れてください。
もちろん、ぬか床はそれぞれに変える必要はありますが、それぞれにまったく違ったぬか漬けができあがります。
米ぬかには玄米の栄養の90%以上が含まれていて、発酵させることでその効果がさらにアップします。
発酵食品に腸内環境を整えるはたらきがあることは、みなさんもご存じかもしれません。
うまく食材を組み合わせると、薬膳料理の一品として食卓に並べることもできます。
おすすめの食材は、夏の青いミカン。
秋になると、スーパーの店頭に黄色いおいしそうなミカンが並びますが、その前の青いミカンです。
その青いミカンを漢方薬の原料にもなるミカンの皮ごとぬか漬けにすることで、健康効果の高い薬膳料理になります。
近くにミカン農家がいる人は、青いままもぎられるミカンが必ずあるので、いただいてみてはどうでしょうか。
ぬか漬けのほかにも、食材を使い切るには、はちみつに漬けたり、焼いてスパイスにするなどの方法もあります。
先ほど魚のウロコをスパイスにする話をしましたが、なすの皮もみじん切りにして焼けば、スパイスとして使えます。
自然の食材を上手に組み合わせるのが、薬膳。
そのために食材をムダにせず、効能効果をしっかりいただくのは基本でもあります。
薬膳をいつもの献立に取り入れられるようになると、健康ごはんが毎日食べられるのはもちろん、食材の廃棄を減らすことで環境にやさしく、子どもたちに食の正しい知識を教え、育む「食育」にもつながります。
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日本の薬膳ごはんをコンセプトに薬膳の基本から考え方、作り方まで全4章にわたって解説。アイデアレシピ60品付き