40~60代で発症する人も多いんです。「ぜんそく」の基礎知識

最近どうも咳が抜けない...、という人はいませんか? 実は、大人になってから発症する「ぜんそく」には注意が必要なんです。そこで、池袋大谷クリニック 院長の大谷義夫(おおたに・よしお)先生に、「ぜんそくの基礎知識」について教えていただきました。

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2週間以上続く咳を放置してはいけない

空気が乾燥する時期には、のどの粘膜の潤いも失われ、風邪のウイルス感染などで炎症が生じやすくなります。

今年は例年よりも、新型コロナ対策でマスク着用の機会が増え、のどの乾燥は防ぎやすい状況ですが、夜布団に入ってから咳が止まらない、といったことが起こることも。

中には、押し寄せる止まらない咳で、夜中に目覚めて眠りを妨げられてしまう人もいるのです。

そんな咳には、通常の風邪とは異なる原因が潜みます。

「2週間以上も続く咳は、単なる風邪ではなく、それ以外の病気の可能性が高くなります。長引く咳で最も多い原因は、咳ぜんそくといえます」と大谷義夫先生は解説します。

気道の粘膜は、表面が繊毛という細かい毛で覆われ、異物をキャッチすると口の方へ戻す仕組みがあります。

それをサポートするのが咳です。

肺からの空気の勢いで、一気に異物を口の方へ押し出します。

風邪を引いたときには、のどの粘膜のウイルス感染で炎症が生じるため、排除しようと咳が連続して出やすくなります。

一方、咳ぜんそくは、気道が過敏になることで、温度差や湯気などわずかな刺激に反応して咳が出ます。

それを繰り返すうちに気道の粘膜が炎症を起こし、さらに過敏性が増して咳が生じやすくなるのです。

「風邪をきっかけに咳ぜんそくになる人もいます。その状態を放置すると、約30%の人は気管支ぜんそくに移行するので注意が必要です」

一般的に「ぜんそく」というと、小学校に上がる前の子どもがかかりやすいイメージが持たれています。

ところが、子どもの頃はぜんそくでなくても、大人になってから発症する人が実は多いのです。

「成人ぜんそく全体の6~7割は、大人になってからぜんそくになった患者さんです。その中で最も発症するのが多い年代が40~60代です。気管支ぜんそくは、悪化すると呼吸困難になり、命に関わることもあるのです」と大谷先生は話します。

長引く咳を侮ってはいけません。

肺がんなどの別の怖い病気が原因のこともあります。

●あなたの咳は...

□ 夜中に咳が出る
□ 明け方に咳が出る
□ 冷気で咳が出る
□ 会話中や笑ったりすると咳が出る
□ エアコンをつけると咳が出る
□ 電車に乗ると咳が出る
□ 香水やお線香の香りを嗅ぐと咳が出る
□ お風呂の湯気などで咳が出る
□ 咳が出だすと止まらない

当てはまる項目が一つでもある場合は、気道が過敏になっている可能性があります。発熱や痰などの症状も見ながら医師に相談しましょう。

ぜんそくとは?

気道(肺につながる空気の通り道)に炎症が起こり狭くなっている状態で、ちょっとした刺激で気管支を取り囲む筋肉が収縮し、空気の通り道が狭くなる「気道閉塞」が起こりやすいこと。

一般的には「ぜんそく=気管支ぜんそく」を指します。

風邪などの後に咳が長引く「咳ぜんそく」はぜんそくの亜型(亜種)で、気管支ぜんそくの前段階とも位置づけられます。

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ハウスダストなどのアレルゲン(抗原)や温度差などに反応して気道に炎症が起こり続け、気道が狭くなる発作を繰り返します。

●ぜんそくの人の気道

40~60代で発症する人も多いんです。「ぜんそく」の基礎知識 2012_P087_01.jpg●こんな病気の可能性もある

【副鼻腔炎】
副鼻腔に炎症が起こり、鼻水や副鼻腔にたまった膿がのどに流れることで咳も出ます。

【逆流性食道炎】
食道に胃酸が逆流する病気です。逆流した胃酸が気道を刺激することで咳が出ます。

【COPD(慢性閉塞性肺疾患)】
喫煙を主な原因とし、煙によって気道や肺が炎症を起こし、肺の機能が低下する病気です。

【肺マック症】
ガーデニングなどでマック菌を肺に吸い込んで感染。やせ形中高年女性に多い病気です。

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取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史

 

<教えてくれた人>
池袋大谷クリニック 院長
大谷義夫(おおたに・よしお)先生
2005年、東京医科歯科大学呼吸器内科医局長に就任。米国ミシガン大学留学などを経て09年より現職。『絶対に休めない医師がやっている最強の体調管理』など著書多数。

この記事は『毎日が発見』2020年12月号に掲載の情報です。

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