最近は「睡眠ファースト」という言葉が流行っています。ようするに、きちんと寝ることは脳や体の機能を休め、日中のパフォーマンス向上につながるのだそうです。そこで、睡眠の専門家・白濱龍太郎さんの著書『ぐっすり眠れる×最高の目覚め×最強のパフォーマンス が1冊で手に入る 熟睡法ベスト101』より、「快眠へ導く生活習慣」や「睡眠の新常識」など質の高い眠りを作るためのヒントをご紹介します。
太陽光は最強の「覚醒スイッチ」
朝、眠気を覚ますには、太陽光などの強い光をしっかり浴びるのがなにより重要。
睡眠から目覚めた直後の人間の身体は、エンジンをかけたばかりの自動車のようなもの。
わたしたちの身体では自律神経が働いていますが、エネルギッシュな活動の「アクセル」となる交感神経よりも、リラックスさせて身体の機能を休める「ブレーキ」役の副交感神経のほうが、優位な状態にあります。
では、どうすれば交感神経が優位な状態へとスムーズに切り替わるのでしょう?
そのために必要なのが、強い光による刺激です。
これがシグナルとなって、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌がストップして眠気が弱くなり、交感神経が優位な状態へと移行しやすくなります。
このメカニズムは、目覚まし時計などの音ではなく、外から差し込む太陽の光で起きるもの。
これが、目覚めをよくする秘訣です。
日当たりのいい環境ならば、カーテンを開けたままで就寝するといいでしょう。
真冬など、それでは寒いという場合には、目覚めたらすぐにカーテンを開けて、部屋の照明もオンにしてしまいましょう。
住居環境的に難しいなら、このところ注目を集めている「光で起こしてくれる目覚まし時計」を使うのもいいかもしれません。
朝のうちにしっかり太陽光を浴びることで、体内時計が調整されるというのも重要なポイントです。
睡眠時間のズレが生じた場合は、体内時計をしっかりと調整しなければどんどんズレていってしまう。
わかりやすくいえば、どんどん夜更かしする方向にズレていってしまうということです。
寝起きの悪さを感じている人は、これが原因である場合が少なくありません。
太陽光に直接あたらなくとも、強めの光を見るだけで効果はあります。
雨の日や、テレワークで自宅の外に出ないような日には、起床から4時間以内、午前中のうちに窓から外の景色を眺めてみてください。
これだけで、体内時計が調整されます。
熟睡をもたらす朝食は和食
朝食時、積極的に摂取したいのは、トリプトファンという栄養素を含む食材です。
トリプトファンは必須アミノ酸のひとつで、体内に入ると自律神経の働きを活性化させ、心のバランスを整える機能を持つセロトニンというホルモンに変わります。
そして、日中に体内で分泌されたセロトニンは、夜になると今度は酵素の働きによって、自然な睡眠をうながすホルモンであるメラトニンに変化。
この働きで、朝から一定の時間が経過すると、自然と眠気が訪れるメカニズムがあります。
トリプトファンを多く含む食品は、納豆やみそなどの大豆製品や、チーズやヨーグルトといった乳製品、卵、ナッツ類など。
トリプトファンはインスリンによって脳へと運ばれるので、糖となってインスリンの分泌をうながす白米もあわせて摂取するのがいいでしょう。
セロトニンの合成に不可欠なビタミンB6を多く含んでいるカツオ、マグロ、鮭といった魚を一緒に食べれば文句なしの朝食です。
この食品ラインナップからまず思い浮かぶのが、焼き鮭、みそ汁、納豆、白米といった典型的な和の朝食メニューでしょう。
これは、良質な睡眠を取るうえでは理想的といえる内容です。
洋の朝食がお好みならば、ベーコンエッグ、ヨーグルト、チーズトーストといったメニューがおすすめです。
ちゃんとした朝食をつくる時間がない人は、インスタントのものでかまいせんので、みそ汁だけでも飲むようにしてください。
大豆製品のみそには、トリプトファンがたっぷりと含まれています。
あとは、バナナを1本という朝食も意外に悪くありません。
トリプトファンの量は少なめですが、ビタミンB6が豊富で、インスリンの効果を高める働きがあるからです。
食物繊維も豊富で栄養価も高いすばらしい食品です。
また、規則正しい朝食には、体内時計を調整する効果もあります。
朝は太陽光をしっかり浴びて起床して、それから必ず1時間以内に朝食を済ませましょう。
毎日のヨーグルトが睡眠に効く
腸内環境を整えてくれるだけでなく、トリプトファンも豊富に含んでいるヨーグルトを、毎日食べる習慣は良質な睡眠につながります。
脳がつかさどる睡眠と腸内環境になんの関係があるのか?などと思われるかもしれませんが、このふたつは意外なほど深くかかわっています。
例えば、睡眠ホルモンであるメラトニンは脳の松果体で分泌されますが、その材料となるセロトニンというホルモンのほとんどは、腸内でつくられています。
この事実からも無関係ではないとわかってもらえるはずです。
腸という器官は、「第二の脳」とも呼ばれる独自の神経ネットワークを有しています。
通常の器官は、脳からの指令なしには活動できませんが、腸については話が別。
脳からの指令なしに活動できるどころか、腸の状態が脳の機能に影響を及ぼすという「逆ルート」すら存在します。
つまり、「脳→腸」という一方通行ではなく、両者は密接に関係しているということ。
これが、最近注目を集めている、「脳腸相関」と呼ばれるものです。
腸内にある菌には、身体にいい働きをする「善玉菌」と、逆に悪い働きをする「悪玉菌」、どちらにも属さず優勢なほうに加担する「日和見菌」の3種類が存在します。
腸内環境をよくするには、当然ながら善玉菌を増やしたほうがいい。
それにうってつけなのが、乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌を多く含むヨーグルトです。
量の目安としては、1日に200グラム取れれば十分です。
腸内でメラトニンを効率よくつくり出すには、朝と夜に100グラムずつ食べるのが理想的でしょう。
プレーンヨーグルトの酸っぱさが苦手ならば、ビフィズス菌が好んでエサとするオリゴ糖を少し加えたり、バナナやキウイ、メロンといった甘みのある果物とあわせて食べたりするのがおすすめです。
これらは、トリプトファンだけでなくビタミンB6も豊富に含んでおり、ヨーグルトと非常に相性がいい果物の代表格です。
快眠のための生活習慣や、睡眠の正しい知識などを全6章にわたって解説しています