専門医が伝えたい「関節リウマチにとって、関節を動かすことが大切」ということ

患者&予備軍が700万人に上るといわれ、痛みとともに手指が曲がってしまう難病の「関節リウマチ」。これまで「不治の病」と思われてきたこの病気の治療法は、実は新薬の登場で劇的に変化しているのだそうです。そこで、10万人の患者を救ってきたリウマチの専門医・湯川宗之助さんの著書『リウマチは治せる! 日本一の専門医が教える「特効ストレッチ&最新治療」』(KADOKAWA) より、「リウマチを治すための最新情報」をご紹介します。

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簡単手軽なストレッチで関節・筋肉の機能低下を予防

関節リウマチになると、痛み・腫れ・こわばりなどの影響で、関節を動かしづらくなります。

しかし、まったく動かさずにいれば、関節を動かせる範囲(可動域)はますます狭まり、関節を動かすための筋肉は機能低下や萎縮を起こしてしまいます。

そうならないためには、リウマチを発症した初期の段階から、無理のない範囲で関節を動かすことが大切です。

ただし、ここでどうしても、ひとつの問題が出てきます。

手の指に症状が現れたかたの場合を、例に挙げましょう。

まず、発症したばかりの早期のかたにとっては、家事・仕事・趣味などで指をさまざまに動かすことが、「最適な運動療法」になります。

しかし、ある程度進行したかたにとっては、そうした動きをうまくできないケースも少なくありません。

また、普段からほとんど動かさない関節に症状が現れた場合は、日常生活動作をするだけでは、十分な対策を取れないことになってしまいます。

関節リウマチは、人によって症状の現れる部位が異なる疾患です。

ですから、手の指に症状がある場合は、家事などでの指の動きが運動療法になるのですが、日常生活であまり動かさない関節に症状が出た場合、無意識のうちに運動療法をすることは非常に難しいのです。

さらに言うと、利便性が向上した現代生活では、〝関節を動かさない危機〟が迫っています。

ですからやはり、日常生活動作だけにとどまらず、普段からなるべく関節を動かす意識を持つことが重要になるわけです。

そもそも人間の体、特に運動器と呼ばれる「関節」「骨」「筋肉」などは、運動している(動かしている)ことで正常な機能や新陳代謝を維持し続けていることも、忘れてはいけない事実です。

こうしたさまざまな事情を考慮したうえで、私が皆さんにお勧めしたいのが、「ゆるストレッチ」なのです。

安全で続けやすく、効果も現れやすい

関節は、骨と骨との〝接続部分〟です。

骨にくっついた筋肉が収縮・弛緩を繰り返し、骨と骨から構成された関節がきちんと動くことによって、私たちは滑らかな動きを行うことができます。

これは、関節のサイズを問わず共通するメカニズムです。

ですから、リウマチで症状が現れた関節についても、スムーズな動きを実現するためには、「関節の可動域」と「筋肉の機能」を維持・向上させることが大きなカギになります。

こうした内容を患者さんにお話しすると、「では、リウマチ体操をすればいいんですよね?」という答えがよく返ってきます。

確かに、従来からよく知られている「リウマチ体操」にも、関節の可動域・筋肉の機能について、好影響を与えるメリットはあります。

すでに医師から関節リウマチの診断を受けているかたならば、リウマチ体操のことはご存じでしょう。

医療関係機関から渡される冊子、一般販売されているリウマチ関連の本などに必ずといっていいほど掲載され、インターネットで具体的なリウマチ対策を検索してもすぐに目にする体操です。

日本では何十年もの間、つまり〝リウマチは治らない病〟とまで言われた時代から、このリウマチ体操が推奨されてきました。

しかし、このように〝昔からあるリウマチ体操〟を行うと、関節にかかる負荷が少し大きく設定されているため、「人によっては炎症が悪化する」というケースがあります。

これは、患者さんにとってはデメリットになってしまいます。

そして、炎症が悪化するということは、痛みや腫れがひどくなることに直結していますから、実際にリウマチの症状を抱えたかたにとっては〝悩みのタネ〟が増えてしまいます。

事実、私のクリニックの患者さんたちからも、リウマチ体操についての質問や疑問を数えきれないほど受けてきました。

そこで、本書の出版を機に考案したのが「ゆるストレッチ」です。

こちらは、その名のとおり、関節への負荷を極力少なくしてデメリットを排除し、関節可動域の維持や拡大、筋肉機能の維持や向上というメリットを残せるものを考案しました。

ストレッチのやり方は非常にシンプルで簡単。

1つのストレッチを行うのにかかる時間も、短いものなら10秒、長いものでも1分程度。

いくつかを組み合わせたとしても、3分もあれば行えます。

ですから、既存のリウマチ体操よりも安全で続けやすく、効果も現れやすいメソッドであると自負しています。

実際、当院の患者さんたちにも、できるだけ実践するようにお伝えしているもので、効果があったという声をいただいているのです。

【まとめ読み】『リウマチは治せる!』記事リストはこちら

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関節リウマチの正しい知識や、最新治療を受けるためのアドバイスを5章にわたって解説

 

湯川宗之助(ゆかわ・そうのすけ)
湯川リウマチ内科クリニック院長。父、兄ともにリウマチの専門医というリウマチ医一家に生まれる。2000年、東京医科大学医学部医学科卒業。親子2代で50年以上にわたりリウマチの研究を続け、患者数や症例数は日本一を誇る。日本リウマチ学会専門医・評議員。

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『リウマチは治せる! 日本一の専門医が教える「特効ストレッチ&最新治療」』

(湯川宗之助/KADOKAWA)

患者と予備軍をあわせて約700万人に上るといわれる関節リウマチは、痛みとともに手指が曲がってしまう“難病”として多くの人に知られています。しかし、新薬の登場で関節リウマチの治療法は大きく変化しているそう。関節リウマチの正しい知識や、最新治療を受けるためのアドバイス、病院選びのポイントや、痛みを悪化させない生活習慣のコツなど、「リウマチを治すための最新情報」が満載の一冊!

※この記事は『リウマチは治せる! 日本一の専門医が教える「特効ストレッチ&最新治療」』(湯川宗之助/KADOKAWA) からの抜粋です。
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