食物繊維たっぷりの「最強の健康食」。新潟のソウルフード「のっぺ」の魅力

平均寿命が80歳を超え、いまや長生きが目的ではなく、「いかに健康に生きるか」という時代に突入しています。全国を見渡すと、新潟県は高齢者の1人当たりの医療費が最も少ない地域。つまり、医者に頼らない、元気なお年寄りが多いところです。そこで、新潟県出身の循環器専門医・五十嵐祐子先生の著書『医師がすすめる新潟式食事術 長生きの秘けつがここにありました。』(アスコム)より、地元の伝統料理や食材と健康長寿の関係や健康的に長生きできるヒントをご紹介します。

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食物繊維は、医学的に証明されたご長寿栄養素

最強の健康食「のっぺ」をご存じですか?

新潟県民のソウルフードといえば「のっぺ」です。

新潟県民の認知率は子どもを除けば、ほぼ100%じゃないかと思います。

でも、私が東京に行って驚いたのは、のっぺが全国共通の料理ではなく、ほとんどの人が、こののっぺを知らなかったこと!

それからというもの、私はのっぺを日本全国の人に知ってもらいたいと思っていました。

あっ、これはなにも新潟の料理をただアピールしたいというだけではありませんよ。

のっぺは健康に必要な食材がたっぷり入っているスーパー健康料理だからです。

その必要な食材とは、根菜。

のっぺのよさはなんといっても「根菜がたくさん入っていること」です。

実は新潟は長寿食材ともいわれている根菜の消費量が日本一なんです!

根菜がなぜ健康にいいのか?

ここからその魅力を紹介していきますね。

読み終わったときには、根菜のすごさに皆さん驚かれるかと思います。

さて、まずは、その根菜にかかわる問題から始めてみましょう。

Q:2020年、国立がん研究センターの研究チームが、9万人の追跡調査で、根菜にたっぷり入っている、ある栄養素を多く摂取した人は、摂取していない人に比べて、死亡リスクが2割下がることを発表しました。その「ご長寿栄養素」は何でしょうか?

正解は食物繊維です!

そんな食物繊維をたっぷり含んだ根菜は、ご長寿野菜といっていい存在であり、根菜をたくさん食べられるのっぺは、本当にオススメの健康料理なのです。

食物繊維は、人間の消化酵素で分解されない食べ物の中の成分です。

この食物繊維を摂取した人の死亡リスクがなぜ減ったのか。

さまざまな理由があると思いますが、私は、食物繊維が腸内環境を整えてくれるからというのが一番の理由ではないかと考えています。

健康は、腸でつくられる

健康な食事、長生きのための食事といった観点で考えたときに、一番に意識したいのが、腸によい食事です。

なぜなら、腸は、健康にまつわる重要な役目を果たしており、なおかつ、食事によって影響を受けやすい。

だからこそ、腸によい食事をとることは、大切なのです。

腸の主な働きは大きくまとめると次の4つです。

・分解された栄養素や水分を吸収する。

・免疫細胞が集中しており、病原菌から体から守る免疫機能を司る。

・最後の消化を行ってくれる。

・不要な老廃物、毒素を便として排泄する。

腸がうまく機能しないと、どんなに健康的なものを食べても、その栄養素をうまく吸収できません。

そのため血管、内臓、骨、筋肉、体のあらゆるところが栄養不足で弱っていきます。

不要な老廃物や毒素が体にたまり、それがあちこちで悪さをし、健康とさらには、肌など美容の面にも大きな影響を及ぼします。

新型コロナウイルスの流行で、免疫の重要性が再認識されましたが、免疫を上げるためには、腸を元気にする(腸内環境を整える)ことが必要です。

そして、腸内環境を決めるのが腸内細菌です。

腸には、大きく分ければ、善玉菌と悪玉菌と日和見菌という3つの菌が共存しており、100兆個、約1・5kgもの腸内細菌がすんでいるといわれます。

簡単にいいますと、腸に有益な働きをするのが「善玉菌」、悪影響を及ぼすのが「悪玉菌」、どちらでもないのが「日和見菌」です。

その比率はだいたい2 :1 :7です。

最も多くを占めている日和見菌は、善玉菌が元気なときは、おとなしくしているのですが、悪玉菌が元気になっていくと、悪玉菌の味方についてしまい、一気に腸内環境が悪化してしまうのです。

そうならないためには、常に善玉菌が優勢な状態にしておくことが大切です。

そして、そのために必要な栄養素が食物繊維なのです。

食物繊維は、水に溶ける「水溶性食物繊維」と溶けない「不溶性食物繊維」の2つに分けられます。

水溶性食物繊維の主な役割としては、腸内で善玉菌のエサになり、善玉菌を増やす効果があるのです。

不溶性食物繊維は、水に溶けず体内で水分を吸収し、便の容積を増やしてくれます。

それによって大腸が刺激されて排便を促し、便秘を抑える働きがあります。

便は長く腸にとどまっていると、それがエサとなって「悪玉菌」が増殖しますので、便秘の解消は、腸内環境を整えるためにも必要です。

つまり、善玉菌を元気にする「水溶性食物繊維」と悪玉菌の増殖を防ぐ「不溶性食物繊維」。

この2つの食物繊維をバランスよくとることが、腸内環境を整えることに大いに役立つのです。

根菜の「ミックス食べ」で、食物繊維チャージ

最高の根菜健康料理「のっぺ」!

この2つの食物繊維をバランスよく含んでいる野菜が、根菜です。

だからこそ、根菜をたくさん食べてほしいのですが、野菜の中でも根菜は、外食や市販のお弁当などでは、摂取しにくい食材です。

根菜を豊富に使った料理といえば、大抵は、煮ものとか、きんぴらなどが、副菜に少しあるかないかぐらいではないでしょうか。

肉が足りなければ、焼き肉店やステーキ店、牛丼店などでとることができますし、葉野菜が足りないなと感じれば、コンビニなどで、サラダを買って食べる、そういった手軽さが根菜にはないのです。

だからこそ、健康のために、日々の家の食事で、意識的に根菜を使った料理をつくり、食べるようにしてほしいのです。

そして、根菜をまとめて摂取できる、とても素晴らしい健康料理が、冒頭で紹介した「のっぺ」です。

新潟でも地域によって具材が多少異なってくるのですが、サトイモのほか、ニンジン、ゴボウ、大根、レンコンなどを小さく刻み、だしで煮込むというところは、共通しています。

そのほか、こんにゃく、しいたけを小さく刻み、鶏肉や新潟の名産である鮭の切り身、イクラなどを入れるところもあるようです。

【まとめ読み】『医師がすすめる新潟式食事術』記事リスト

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全国有数の健康長寿を誇る新潟に注目し、全6章にわたって食と健康の関係を探っています。伝統料理「のっぺ」を使ったレシピも公開

 

五十嵐祐子(いがらし・ゆうこ)
循環器専門医/東京医科大学循環器内科兼任講師/2017年に欧州心臓病学会で「Best Poster賞」を受賞。生活習慣病の予防として「健康のベースは食事にある」という信念のもと、わかりやすい生活指導に定評がある。メディアへの出演、講演活動も広く行う。

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『医師がすすめる新潟式食事術 長生きの秘けつがここにありました。』

(五十嵐祐子/アスコム)

2018年の後期高齢者の医療費が最も低い新潟県。医者が不要で、元気なお年寄りが多い理由は日常の食生活にありました。根菜の消費量、豚国の消費量、枝豆の消費量が全国1位を誇り、生鮮野菜の消費量も全国屈指。新潟県出身の医師がそこに注目し、食と健康から健康長寿の秘密を解き明かした一冊です。管理栄養士と一緒にタッグを組み、新潟式の長生きレシピも30品以上盛り込んでいます。

※この記事は『医師がすすめる新潟式食事術 長生きの秘けつがここにありました。』(五十嵐祐子/アスコム)からの抜粋です。
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