食べすぎが内臓の疲労を招くんです。糖尿病医が伝えたい「一日3食が健康にいい、は思い込みです」

コロナ禍によって外出活動が減るなか、食事の量が増えていませんか? 糖尿病医の青木厚先生は「モノを食べない時間を作ることが、健康の維持につながります」と言います。その先生の著書『がんを克服した糖尿病医が考案! 弱った体を修復する内臓リセット健康法』(アスコム)より、空腹時間を設けることで細胞活性化を促すメカニズムや健康維持に必要な筋肉の作り方など手軽にできる体内リセットのやり方をご紹介します。

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「一日3食」の習慣は「食べすぎ」と内臓の疲労を招く

◎「一日3食は健康にいい」は、ただの思い込みだった

ここからは、まとまった空腹の時間を作ることで、なぜ、どのような内臓リセット効果が得られるのか、もう少し詳しくお話ししたいと思います。

その前にまず、「現代人の食生活」にどのような問題があり、私たちの体がどのようなダメージを受けているかを、みなさんに知っておいていただく必要があります。

現代人の食生活にはさまざまな問題がありますが、私が特に「体に与えるダメージが大きい」と感じているのが、「一日3食」の習慣です。

私たちは子どものころから「健康のために、一日3食、しっかり食べましょう」という言葉をしょっちゅう聞かされています。

そのため、「一日3食が理想的な食事のとり方である」と思い込んでいる人も少なくないでしょう。

しかし、「一日3食が理想的である」という考え方に確固たる裏付けはありません。

日本で一日3食の習慣が広まったのは、江戸時代からとも、明治維新以降ともいわれています。

いずれにせよ、つい最近のことであり、それまでは一日2食が一般的だったのです。

また、1935(昭和10)年に、国立栄養研究所の佐伯矩(さいきただす)医学博士が「日本男子が一日に必要とするエネルギーは2500~2700キロカロリーである」「それを2食でとるのは難しく、3分割しバランスよくとることで、最も健康に生きることができる」と提唱したことも、一日3食が定着する要因になったといわれています。

これについても、そもそも「2500~2700キロカロリー」という数字自体が少々多すぎるのではないかと、私は思っています。

日本医師会が発表している基礎代謝量(内臓を動かす、体温を維持するなど、生きるうえで最低限必要な活動に消費するエネルギー量)は、最も高い15~17歳の男性でも一日1610キロカロリー。

18~29歳の男性で1520キロカロリー、30~49歳の男性で1530キロカロリー、50~69歳の男性で1400キロカロリーであり、女性は各年代とも、男性より100~400キロカロリー少なめです。

もちろん個人差はありますが、運動などによって消費するエネルギーを考慮しても、成人が一日に必要とするカロリーは、現在では1800~2200キロカロリー前後であると、一般的に考えられています。

ただでさえ運動不足傾向が強く、消費カロリーが少ない現代日本人は、わざわざ一日3度の食事によって、2500~2700キロカロリーものエネルギーをとる必要はありません。

それどころか、たとえば牛丼1杯で約800キロカロリー、ハンバーガーとポテトフライとドリンクのセットで1000キロカロリーを超えるなど、現代人、特に外食が多い人の食事は高カロリーになりやすく、こうした食事を一日3回とることは、明らかに「食べすぎ」「カロリーのとりすぎ」になってしまうのです。

さらに、一日3食は内臓を疲れさせます。

胃腸や肝臓は、私たちが食べたものを何時間もかけて消化します。

たとえば、食べものが胃の中に滞在する時間(消化されるまでの時間)は平均2~3時間、脂肪分の多いものだと4~5時間程度であるといわれています。

また小腸は、胃で消化されたものを5~8時間かけて分解し、水分と栄養分の8割を吸収し、大腸は、小腸で吸収されなかった水分を15~20時間かけて吸収します。

ところが、一日3度食事をすると、朝食から昼食までの間隔は4~5時間、昼食から夕食までの間隔は6~7時間程度となり、前の食事がまだ胃や腸に残っている間に、次の食べものが運ばれてきてしまいます。

すると胃腸は、休む間もなく消化活動をしなければならず、疲弊していきます。

年齢を重ねれば重ねるほど、消化液の分泌も胃腸の働きも悪くなりますから、ますます消化に時間がかかるようになり、胃腸も疲れやすくなるという悪循環が起こってしまうのです。

◎胃腸や肝臓の疲れが、さまざまな体の不調や病気を招く

では、内臓が疲れると、体にはどのような影響が表れるのでしょう。

胃が疲れると、胸焼けや胃もたれなども起こりやすくなりますし、腸が疲れ、働きが悪くなると、消化しきれなかった食べものが腸内に残るようになります。

それらはやがて腐敗し、アンモニアなどの有害物質を発生させます。

腸の中には、

・消化を助け健康を維持する働きをする善玉菌

・腸内を腐敗させ病気の原因を作る悪玉菌

・体が弱ると悪玉菌に変わる日和見菌(ひよりみきん)

といった腸内細菌がおり、健康なときは善玉菌が優勢なのですが、腸の中に老廃物や体にとって不要なもの、有害物質などがたまり、腸内環境が悪化すると、悪玉菌が優勢になります。

悪玉菌が優勢になると、腸の働きが悪くなって腸内環境がますます悪化するという悪循環が起こり、便秘や下痢などが起こりやすくなります。

腸内環境が悪化すると、インスリン抵抗性が増大して肥満になりやすく、糖尿病や高血圧などを発症しやすくなりますし、大腸がんを発症するリスクも高くなります。

また、腸で発生した有害物質が血流に乗って全身にまわると、肌荒れがひどくなったり体臭がきつくなったり、ときにはがんなどの病気が起こる原因となったりします。

それだけではありません。

腸には、体内に侵入した異物(ウイルスや毒素など)や、発生したがん細胞などを排除する免疫細胞の6割以上が存在しているといわれています。

つまり、腸の機能が衰え、腸内環境が悪化すると、免疫力が低下し、風邪や肺炎などの感染症にかかりやすくなったり、アレルギーがひどくなったり、がんなどの病気が発生するリスクが高まったりするのです。

一日3食によって疲れてしまうのは、肝臓も同じです。

肝臓は、腎臓とともに「沈黙の臓器」といわれることが多く、胃腸と違って、ふだん、その存在が意識されることはあまりありませんが、実に働き者です。

・食後、体に入ってきた栄養を、体内で必要なエネルギーに変える。

・消費されずに残った余分なエネルギーを蓄える。

・食べものに含まれていたアルコールやアンモニアなどの毒素を処理する。

・脂肪の消化吸収を助ける胆汁を作る。

など、消化に関するさまざまな役割を一手に担っているのが、肝臓なのです。

そのため、食事の間隔が短く、次から次へと食べものが体内に入ってくると、肝臓はやはり休む間もなく働かなければならず、どんどん疲弊していきます。

疲れにより肝臓の働きが悪くなると、体の調子が悪くなったり、疲れやすくなったりしますし、お酒がおいしく感じられなくなる、食欲が低下する、といったことも起こりやすくなります。

「食べる」という行為は、「食べものを口に入れたら終わり」ではありません。

その後、体の中では、食べものを分解し、栄養を吸収したり不要なものを排出したりするため、さまざまな臓器が一生懸命に働いています。

体にとってはむしろ、食べものがのどを通過してからが「食事」の本番なのです。

そして、私たち人間にまとまった休息が必要であるのと同様、内臓にも、まとまった休息を定期的に与えてあげる必要があるのです。

◎食べすぎは活性酸素を増やし、血流を悪くする

さて、一日3食の弊害としては、ほかに「食べすぎに気づきにくい」ことが挙げられます。

一日3食だと、食事の間隔が短いため、特に前の食事で食べすぎたときや高カロリーなものを食べたときなどは、次の食事の時間がきても、「あまりお腹がすいていない」「体がエネルギーを必要としていない」ということが、しばしば起こります。

そのような場合、本当はちゃんとお腹がすくのを待ってから次の食事をとればいいのですが、決まった時間に食べることが習慣化していると、「今、空腹かどうか」「今、体がエネルギーを必要としているか」といったこととは関係なく食事をとるため、結果的に「食べすぎ」になってしまうことが多いのです。

しかも、胃には伸縮性があり、食べた量に合わせて膨らんでいきます。

ふだんから慢性的に食べすぎている人の場合、「胃が膨らんでいる状態」が当たり前になっていて、「本来、体が必要としている量」以上の食べものも、どんどん受け入れてしまうのです。

そして、食べすぎは体にさまざまなダメージを与えます。

食べる量が多ければ、消化するのに多くの時間とエネルギーが必要となり、どうしても胃腸や肝臓などに負担がかかります。

特に夜、食べすぎてしまうと、本来休まなければならない内臓が、寝ている間も働かなければならなくなり、睡眠の質も低下します。

食べすぎは、体内の活性酸素も増やします。

活性酸素には、「ものを酸化させる(錆びさせる)力」があり、それによって体内に侵入したウイルスや異物などを殺菌・排除しますが、一方で、活性酸素の攻撃は身内(体内のDNAや細胞)をも傷つけます。

活性酸素が増える原因には、ストレスや紫外線、ウイルスや細菌、毒物などといった異物の体内への侵入、過剰な運動など、さまざまなものがありますが、食べすぎも原因の一つだといわれています。

活性酸素が必要以上に増えると、細胞が酸化したり傷つけられたりするため、細胞の老化が進行し、シワやシミの原因になったり、がんなどさまざまな病気が引き起こされたりするおそれがあります。

また、食べものから得た栄養分は、血流に乗って全身に運ばれますが、食べすぎによって血液中の栄養分が過剰になると、血液や血管の状態も悪くなります。

食べすぎる人のほとんどは、ご飯や麺類、パン、甘いものなど糖質の多いものや、肉、油など脂質の多いものをとりすぎている傾向が強く、糖質や脂質を過剰にとれば、血液中の中性脂肪や「悪玉コレステロール」と呼ばれるLDL-コレステロールが増え、それらは血管壁に付着します。

その結果、血管が狭くなって血流が悪くなり、心臓の血流が悪くなれば狭心症、脳の血流が悪くなれば脳梗塞を引き起こすのです。

【まとめ読み】『内臓リセット健康法』記事リストはこちら!

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食生活を変えて内臓から健康を取り戻す方法を全5章にわたって解説しています。体を活性化させるための簡単な運動法も提案

 

青木厚(あおき・あつし)
あおき内科さいたま糖尿病クリニック院長/糖尿病患者の治療に「内臓リセット」の考え方を基にした食事術を取りいれ、インスリン離悦や薬を使わない治療に成功するなど成果を挙げている。自身も40歳のとき舌がんを患うも完治し、食事療法を実践してガンの再発を防いでいる。ライザップの医療監修のほか、メディアの活動も多数。

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『がんを克服した糖尿病医が考案! 弱った体を修復する内臓リセット健康法』

(青木 厚/アスコム)

栄養豊富な食べ物が手軽に手に入る現代において日本人は栄養過多、そして生活習慣病と隣り合わせ。その影響もあり、内臓はフル稼働しているような状態です。内臓は休む時間が少ないから細胞の入れ替わりが難しく、それが疲れやストレスが溜まる原因にもなっています。その仕組みをわかりやすく解説し、「内臓を上手にリセットしよう」と提唱している一冊です。何歳からでも健康的な体に生まれ変わりたい人にオススメ!

 

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※この記事は『がんを克服した糖尿病医が考案! 弱った体を修復する内臓リセット健康法』(青木厚/アスコム)からの抜粋です。

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