1日17時間の「空腹の時間」と週2回の「簡単な運動」。舌がんを克服した医師が実践する健康法とは

コロナ禍によって外出活動が減るなか、食事の量が増えていませんか? 糖尿病医の青木厚先生は「モノを食べない時間を作ることが、健康の維持につながります」と言います。その先生の著書『がんを克服した糖尿病医が考案! 弱った体を修復する内臓リセット健康法』(アスコム)より、空腹時間を設けることで細胞活性化を促すメカニズムや健康維持に必要な筋肉の作り方など手軽にできる体内リセットのやり方をご紹介します。

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最新医学がたどりついた健康の新常識。
内臓リセット健康法で細胞がよみがえる

みなさん、こんにちは。

青木厚です。

私は内分泌代謝や糖尿病を専門とする医師です。

大学病院などでの勤務を経て、2015年、さいたま市にクリニックを開設し、日々、風邪をひかれた方から生活習慣病の方まで、数多くの患者さんの体と向き合っています。

糖尿病などに関する研究や、患者さんの治療を通して学んだこと、私自身が舌がんになった際の経験などを踏まえて2019年に出版した『「空腹」こそ最強のクスリ』(アスコム刊)はおかげさまで版を重ね、2020年9月時点で発行部数は22万部となりました。

『「空腹」こそ最強のクスリ』は、一日3食の生活によって体が受けるダメージや、一日に16時間の「空腹の時間」を作って「オートファジー」を誘導することにより、心身にもたらされるさまざまなメリットについて書いた本です。

オートファジーとは、簡単に言うと、「古くなったり壊れたりした細胞内のタンパク質を集め、分解し、それらをもとにエネルギーを作る」という、体のシステムのことです。

オートファジーが起こると、古くなった細胞内のミトコンドリア(呼吸を行い、エネルギーを作り出す重要な器官)も分解されて生まれ変わり、体にとって不要なものや老廃物が一掃され、細胞や組織、器官の機能が活性化します。

そして、『内臓リセット健康法』は、『「空腹」こそ最強のクスリ』の実践編となっています。

前著を執筆した時点では明らかになっていなかった、最新医学による研究などを踏まえ、より良いオートファジーの誘導の仕方や、空腹の時間を作りつつ科学的に正しい運動を行い、筋肉量を保ち、内臓の働きを活発にし、免疫力を高めることの重要性などをお伝えしていきます。

まず、次の図をご覧ください。

一日のタイムスケジュール

1日17時間の「空腹の時間」と週2回の「簡単な運動」。舌がんを克服した医師が実践する健康法とは naizou_001_016.jpgこれは、私の一日のタイムスケジュールです。

もしかしたらみなさんは、「普通に朝起きて、仕事して寝ているだけじゃないか」と思われるかもしれませんね。

しかしここには、オートファジーを誘導し、細胞を生まれ変わらせるための重要な、しかし誰にでもできる簡単なポイントが詰まっています。

そのポイントとは、「食事をとるタイミング」です。

・朝食は毎日カット。

・月~土曜日の昼食は13時半ごろ、夕食は20時ごろに食べる。

・日曜日は昼食もカット。

つまり私は、月~土曜日に17時間程度、日曜日に24時間の「空腹の時間」を作っているのです。

ちなみに、以前は月~土曜日は朝食をとり、昼食をカットしていたのですが、最近は、患者さんが多い午前中に頭をすっきりさせ、パフォーマンスを上げるため、朝食をカットし、簡単な昼食をとっています。

オートファジーは、最後にものを食べてから12時間が経過したころから始まります。

このタイムスケジュールでいうと、月~土曜日の夕食の食べ終わりが20時過ぎになりますので、翌日の朝8時過ぎからオートファジーが始まり、昼食を食べるころには、体内のあらゆるところでオートファジーが起きていることになります。

いかがでしょう。

朝食をカットする。

ただそれだけで、人体の奇跡ともいえるオートファジーが働き、午前中いっぱい、体の中の細胞が新しく生まれ変わり、細胞内のゴミ(不要なものや老廃物)が除去され、さまざまな内臓の不調がリセットされます。

心身の不調や病気、老化現象の多くは、細胞が劣化したり、働きが悪くなったり、細胞内にゴミがたまったりすることで起こります。

しかし、まとまった空腹の時間を作り、オートファジーを誘導することで、それらを遠ざけることができるのです。

なお、私は、かつて舌がんを患ったことがあり、がんの再発を防ぎたいという思いもあって、毎日この生活を続けていますが、みなさんがいきなり毎日、朝食をカットするのは難しいでしょうし、無理をして体を壊したり、すぐにやめてしまったりしては、元も子もありません。

まずは週に一日、土日いずれかの朝食をカットし、まとまった空腹の時間を作ってみることをおすすめします。

「空腹の時間」×「科学的に正しい運動」が人を最も健康にする

さて、ここまでは、空腹の時間を作り、オートファジーを誘導することのメリットについて、簡単にお話ししてきましたが、オートファジーに関する研究で、新たにわかってきたことがあります。

それは、「空腹の時間を作ると同時に、運動をすること」の重要性です。

実は、空腹の時間中に運動を行うとオートファジーが活発化すること、運動によって筋肉を動かすと、その部分にオートファジーが起こりやすくなることが、近年明らかになってきたのです。

運動といっても、アスリートのように本格的な筋トレをしたり、走ったりする必要はありません。

1回あたり20分程度、全身の筋肉を軽く動かす程度の運動を、土日いずれかの空腹の時間中に1回と、平日に1回やれば十分です。

それだけで、オートファジーが全身に、活発に起こるようになります。

なお、週に2回、簡単な運動を行う目的は、ほかにもあります。

その目的とは「筋肉量の低下を防ぐこと」です。

空腹の時間を作り、オートファジーを誘導したり、内臓を休めたりすることは、健康面に大きなメリットをもたらしますが、一つだけ欠点があります。

それは、筋肉量が低下することです。

私たちの体は、ふだん、食べものによって得た糖質を分解し、活動のためのエネルギー源としています。

糖質はタンパク質などに比べて分解されやすく、エネルギーに変わりやすいからです。

しかし、ものを食べない時間が長く続くと、血液や筋肉、あるいは肝臓の中に蓄えられていた糖質が分解され、枯渇します。

すると体は、今度は筋肉(タンパク質)を分解してエネルギー源にしようとするため、筋肉が落ちてしまうのです。

そして、筋肉量が低下すると、体には「疲れやすくなる」「基礎代謝量が落ち、体温が下がって免疫力が低下したり、太りやすくなったりする」「姿勢が悪くなり、内臓の働きも悪くなる」「骨がもろくなる」など、さまざまな影響が表れます。

せっかくオートファジーによって細胞が生まれ変わっても、筋肉量が低下し、体を壊してしまったら、意味がありません。

また、筋肉量は加齢によっても低下します。

高齢者の場合、筋肉量が低下すると外出がおっくうになり、体を動かさなくなるため、ますます筋肉量が低下する......といった悪循環が起こりやすく、その結果、寝たきりになってしまう人もいます。

空腹の時間を作ることや加齢に伴う筋肉量の低下を防ぎながら、オートファジーをよりいっそう促し、健康を維持する。

そのためには、全身の筋肉を動かすことができる、科学的に正しい簡単な運動を、定期的に、継続して行う必要があるのです。

舌がんになった私もこの方法で健康を取り戻した

ちなみに、私も「空腹の時間」によって、健康な体を手に入れた一人です。

私が空腹の時間の重要性を知り、日々の生活に取り入れるようになったのは、2010年、40歳のときに、舌がんになったのがきっかけでした。

幸い、ステージ1の早期で発見できたため、がん自体は手術によって取り除くことができましたが、「舌がんが再発したらどうしよう」「ほかのがんにかかったらどうしよう」という不安は、どうしてもつきまといます。

そこで私は、PubMed(アメリカ国立衛生研究所のアメリカ国立医学図書館)の医学論文のうち、「がん予防」に関するものを読みあさり、「どうすれば、がんの再発や、新たながんの発症を防ぐことができるか」を必死で調べ、がんを発症する主な原因が「細胞の質の劣化」と「免疫力の低下」にあると知りました。

私たちの体の細胞は日々、分裂を繰り返しています。

分裂の際、細胞は遺伝子(DNA)が持つ情報にしたがって正確にコピーされるのですが、外部からの刺激や細胞の質の劣化などによってDNAがダメージを受けると、細胞のコピーミス(突然変異)が起こります。

突然変異を起こした細胞のうち、死ぬことができず、とめどなく分裂を繰り返すものが、がん細胞です。

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個人差はあるものの、人の体内では毎日、約5000個ものがん細胞が生まれています。

しかし、それらが塊としての「がん」にならないのは、免疫細胞の一種であるNK(ナチュラルキラー)細胞が、がん細胞を発見しては殺しているからです。

がんを予防するためには、・細胞の質の劣化を食い止め、細胞のがん化をできるだけ少なくすること・NK細胞の活性を上昇させることが重要だと気づいた私は、さらに研究を重ね、一日のうちに16時間程度、ものを食べない時間を作る「間欠的断食」(空腹の時間を作ること)によってオートファジーを誘導し、細胞を新たに生まれ変わらせることが、細胞の質の劣化を食い止めるうえでも、NK細胞の活性を高めるうえでも非常に効果的であるという結論にたどりつき、実践することにしました。

しかし、そのままではどんどん筋肉量が減ってしまうため、私は空腹の時間を作るのと並行して、朝と夜に、簡単な自重運動(腕立て伏せ、腹筋、背筋)をやることにしました。

さらに、さまざまな論文や文献を読んだところ、乾布摩擦や日光浴、深呼吸などが免疫力アップにつながることもわかったため、毎朝、それらを日課として必ず行うようにしています。

こうした生活を続けた結果、約10年たった今も、舌がんについては再発の兆候はありません。

また、舌がんを患ったころは17%だった体脂肪率が、現在は6・5%まで落ち、髪の毛も豊かになって、実年齢よりも若く見られるようになりました。

風邪もひかなくなりました。

かつての私は、月に一度は風邪をひいていましたが、空腹の時間を作るようになってからは風邪をひいたことも、インフルエンザにかかったこともありません。

これも、NK細胞の活性が上がり、ウイルスを退治してくれているからです。

なお、私が運動を始めたのは、あくまでも「筋肉量をキープするため」でしたが、すでにお伝えしたように、最新の研究で、「空腹時に運動を行うと、オートファジーがより活発化する」ことが明らかになっています。

空腹の時間を作り、オートファジーによって、古くなったり質が低下したりした細胞を新しく生まれ変わらせること       

  ×

科学的に正しい簡単な運動を行い、筋肉量をキープしつつ、オートファジーをより活発化させること

それこそが、私ががんを克服する過程で、さまざまな医学論文をもとにたどりついた、免疫力を高め、人を健康にする、最強の方法なのです。

【まとめ読み】『内臓リセット健康法』記事リストはこちら!

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食生活を変えて内臓から健康を取り戻す方法を全5章にわたって解説しています。体を活性化させるための簡単な運動法も提案

 

青木厚(あおき・あつし)
あおき内科さいたま糖尿病クリニック院長/糖尿病患者の治療に「内臓リセット」の考え方を基にした食事術を取りいれ、インスリン離悦や薬を使わない治療に成功するなど成果を挙げている。自身も40歳のとき舌がんを患うも完治し、食事療法を実践してガンの再発を防いでいる。ライザップの医療監修のほか、メディアの活動も多数。

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『がんを克服した糖尿病医が考案! 弱った体を修復する内臓リセット健康法』

(青木 厚/アスコム)

栄養豊富な食べ物が手軽に手に入る現代において日本人は栄養過多、そして生活習慣病と隣り合わせ。その影響もあり、内臓はフル稼働しているような状態です。内臓は休む時間が少ないから細胞の入れ替わりが難しく、それが疲れやストレスが溜まる原因にもなっています。その仕組みをわかりやすく解説し、「内臓を上手にリセットしよう」と提唱している一冊です。何歳からでも健康的な体に生まれ変わりたい人にオススメ!

 

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※この記事は『がんを克服した糖尿病医が考案! 弱った体を修復する内臓リセット健康法』(青木厚/アスコム)からの抜粋です。

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