仕事や家庭のストレスが引き金に...。40~60代に多い現代病「突発性難聴」の基礎知識

前触れなく、突然片耳の聞こえが悪くなる「突発性難聴」をご存じでしょうか? 以前は「発症後2週間以内に受診を」といわれていましたが、現在は「数日以内に受診し、一刻も早く治療を開始することが肝心」とされているそうなんです。そこで、JCHO 東京新宿メディカルセンター 耳鼻咽喉科診療部長の石井正則先生に、症状や治療法を教えていただきました。

突発性難聴の三大リスク

2011_P090_01.jpg

過度なストレスと切り離せない現代病

「突発性難聴」は何の前触れもなく突然片方の耳の聞こえが悪くなる病気です。

難聴の程度は個人差があり、全く聞こえなくなる人もいれば、高音だけが聞こえなくなる人もいます。

そのほか、耳の詰まった感じや、耳鳴り、めまい、吐き気を伴う場合もあります。

耳には音を感じ取って脳に伝える「有毛細胞」があり、この細胞が何らかの原因で傷つくことで発症します。

傷つく原因は、風邪などのウイルスが耳の神経細胞を破壊する「ウイルス感染」と、内耳の血行不良で急激に機能が悪くなる「血液循環障害」の二つの説が有力です。

最新の研究では、後者が多く報告されています。

ストレス、疲労、睡眠不足が発症の引き金となり、誰にでも起こり得る病気です。

特に40~60代に多いのは、仕事や家庭のストレスが過剰になりやすい年代だからだと推測されます。

知っておきたい「耳の構造」

音は、外耳から中耳まで空気の振動として伝わり、「蝸牛」という、かたつむりのような螺旋状をした器官へ入る。

2011_P091_01.jpg

【正常】蝸牛内部に約1万5千個並び、音の振動を電気信号に変えて脳に伝える。

【突発性難聴】何らかのストレスで傷つき、音を感じ取りにくくなる。

治療中は安静が基本。ストレスの軽減を

以前は発症後2週間以内に受診すれば良いと悠長に捉えられていましたが、いまは数日以内に受診し、一刻も早く治療を開始することが肝心とされています。

有毛細胞は一度破壊されると再生しないため、治療が遅れるほど聴力の回復が困難になるからです。

耳鼻咽喉科では、症状の問診の後、聴力検査が行われます。

似た症状でほかの病気と鑑別するために、頭部CTやMRI検査など画像検査を行うこともあります。

診断基準の見直しにより、低音部型の難聴は突発性難聴の定義から外れ、「急性低音障害型感音難聴」と区別するようになりました。

突発性難聴と違って再発が多く、めまいを繰り返し、「メニエール病」に移行することもあります。

突発性難聴の治療はステロイド薬のほか、内耳の血行を良くするための循環改善薬、神経の障害を和らげるビタミンB12薬、内耳の代謝を上げる代謝改善薬を内服する薬物療法が基本です。

効果が見られない場合は、ストレスを減らすためにも、入院して点滴治療をすることをおすすめします。

聴力が完全に回復する率と、聴力の改善が全く見られない率はそれぞれ3割弱、中間レベルまで症状が緩和する率は3割強といわれています。

突発性難聴にならないためには、「ストレスマネジメント」が重要です。

ストレスをため込む前に、上の「腹式呼吸法」などでうまくストレスをコントロールしましょう。

●あなたのストレス度はどれくらい?

□ いつも耳鳴りがしている
□ 息苦しくなることがある
□ 夏でも手足が冷える
□ 寝苦しい、寝つけない、すぐ目が覚める
□ 下痢、便秘、胃もたれ、胃痛がある
□ 頭痛、首痛、肩痛がある
□ 緊張で体の一部に汗をかく
□ 胸騒ぎや心臓がドキドキする
□ ふらつきや立ちくらみがある
□ 気候の変化で体の調子が変わる

※当てはまる項目が多いほどストレス度が高く、突発性難聴のリスクが高い

●突発性難聴にならないために

ストレス
リラックスできる時間をつくり、趣味などで気分転換を。ヨガ、太極拳、お笑い鑑賞が効果的。

食生活
適正な量をバランスよく食べる。おすすめは鶏の胸肉、マグロやサケなどの回遊魚(脳の神経細胞の疲労を回復させる)、海藻、豆、ゴマなどのマグネシウム(脳の細胞の代謝を良くする)、エビ、イカ、ホタテなどの魚介類(眠りを深くする効果がある)。

入浴法
夏場は40度、冬場は41度が適温。半身浴で10分がおすすめ。アロマや、マグネシウム入りの入浴剤も良い。


●自分でできる腹式呼吸法

リラックスするためには、「吐く」ことを意識した「腹式呼吸」が効果的です。

①あおむけになって両方の手のひらをおへそに置く。

2011_P091_02.jpg

②鼻から息を吸い込みながら、おなかが膨らんでいくのを手で確認する。2011_P091_03.jpg

③ゆっくりと息を吐きながら、おなかがへこんでいくのを手で確認する。

2011_P091_04.jpg※「3秒吸う→3秒止める→6秒吐く」を5分間続けることを目標に!

●「突発性難聴」まとめ

主な特徴
・前触れもなく突発的に起こる
・片耳だけの聞こえが悪くなる
・メニエール病とは違い、再発はしない

主な治療法
・ステロイド薬、循環改善薬、代謝改善薬などの薬物療法
・内服薬が効かない場合、入院して点滴治療も有効
・十分な睡眠とストレスをためない生活が大事

【記事リスト】「私たち世代の持病対策最前線」他の記事はこちら!

取材・文/古谷玲子(デコ) イラスト/片岡圭子

 

<教えてくれた人>
JCHO 東京新宿メディカルセンター 耳鼻咽喉科診療部長
石井正則(いしい・まさのり)先生
東京慈恵会医科大学卒業。同大耳鼻咽喉科医長、同大准教授を経て現職。『ストレスマネジメントでめまい・耳鳴り・難聴を自分で治す本』(二見書房)など著書多数。

この記事は『毎日が発見』2020年11月号に掲載の情報です。

この記事に関連する「健康」のキーワード

PAGE TOP