「最近、人の声が聞き取りづらくて・・・」その悩み、加齢によるものとあきらめていませんか? 実は、耳が遠くなるのは年を取った証拠ではないそうです。そこで、「難聴は治らないものではない」と言う聴力回復のエキスパート・今野清志さんの著書『耳は1分でよくなる!』(自由国民社)から、難聴の仕組みと薬も手術もいらない耳がよくなるトレーニング法を連載形式でお届けします。
難聴になったら、音をどんどん聞こう!
人間の体の機能は、どんなに健康な人でも、使わないとどんどん衰えます。
たとえば、足の骨を折って、ギブスで固定したとしましょう。
すると、1週間もしないうちに、動かさない足の筋肉が衰え、健康な足と比べてずいぶん細くなってしまいます。
これは、腕や足だけでなく、聴力などの五感でも同じです。
音を聞かなくなってしまうと、音を認識する脳の部位が、活動を低下させてしまうのです。
大阪大学の教授が、突発性難聴の患者さんに行った実験があります。
突発性難聴は、内耳の炎症が一因と考えられることが多く、これまではステロイド剤の点滴をし、あとは安静にする治療が多く行われていました。
ところがこの実験では、積極的に音を聞いてもらうようにしたのです。
突発性難聴は、通常、片方の耳だけに起こります。
するとたいていの患者さんは、聞こえる耳ばかりを使い、聞こえづらくなった耳は使わなくなります。
しかしこの実験では、ステロイド療法に加え、突発性難聴の患者さんの、聞こえている耳に耳栓をし、難聴が発症した耳で、1日6時間音楽を聞いてもらったのです。
すると3カ月後には、ステロイド療法のみの患者さんに比べ、聴力の回復が著しくアップしました。
また、音楽を聞き続けた患者さんたちは、入院時に衰えていた脳の働きが、3カ月後には、難聴でない人たちの平均に近づいたのです。
脳は自分の聞きたい音しか聞かない
人が話す声、車のクラクションの音、近所の犬が吠える声、テレビの音声、洗濯機などが動く音など、私たちの日常には、さまざまな音があふれています。
ところが、人間には、その多くの音の中から、好きな音だけ選んで聞くという能力が備わっています。
これは、耳が音を選択しているのではなく、耳から音を送り込まれた脳が、これまでの経験により判断しているのです。
たとえば、駅の雑踏や繁華街の人混みの中でも、自分の名前を呼ばれたら気づくことができる。
また、パーティなどの大勢の人が会話をしているところでも、自分が話をしている相手の声だけを、きちんと聞き分けられる。
こうして、人がたくさんいて、ざわざわしているところの音声を録音しても、誰がなにを話しているか、わからないでしょう。
実際には、私たちの耳も、レコーダーと同じように、あらゆる音を受け取っています。
ところが、人間は、聞きたい音だけを選択して聞いているのです。
これを「カクテルパーティ効果」と呼びます。
脳は自分が興味のある音、そして好きな音を優先して、注意を向けます。
そして嫌いな音は、不要であると判断し、「無視しろ」と指令を出すのです。
しかし「好きな音」「心地よい音」は、人によって千差万別です。
私の治療院では10種類以上の鈴を用意し、患者さんに聞かせますが、圧倒的多数の人が選ぶ鈴は、ひとつとしてありません。
必ずどの鈴の音も好きな人がいて、人はさまざまな音を好みます。
ですから、聞こえづらいときに、音を聞こうとするのであれば、まずは好きな音を探してみると効果的です。
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