糖質制限、1日の水分補給量、がんは遺伝、仮眠の善し悪し...最近は健康情報がネットに溢れかえっています。そこで「食事」「運動」「睡眠」「生活習慣」などをテーマに、身近で気になる健康情報の疑問に医学のスペシャリストがお答えします。10名の医師団による共著『最強の医師団が教える長生きできる方法』(アスコム)から「健康寿命」のヒントになる記事を抜粋してご紹介します。
【質問1】糖質制限は体にいいですか?
【答え】糖質制限ダイエットは病気のリスクを高めます。
▼教えてくれた人=下村健寿 先生
昨今話題を集めている糖質制限ダイエットですが、その効果に関してはまだはっきりとした結論が出ているわけではありません。
短期的には効果があるように見えるものの、その場合にも総エネルギー摂取量が低下していることが多く、糖質を制限したからなのか、摂取エネルギー量が減ったからなのかが明確にわかっていないのです。
2014年に行われたメタ解析の検討でも、糖質制限は非常に小さな効果、または効果なしと判定されています。
また、糖質制限の大きな問題として長期間の継続が非常に困難なことも挙げられ、短期的に糖質制限でダイエットに成功したように見える人も、1年後には元の体重に戻ってしまうという事例が多く確認されています。
さらに議論を重ねる余地もありますが、糖質制限食は長期的な死亡・心血管イベントのリスクを上げるとも報告されていますので、バランスのとれた食事で長期に耐えることのできるダイエットが理想的と言えるでしょう。
【質問2】ファスティング(断食)は本当に体にいいですか?
【答え】ダイエット目的の長期的な断食は骨や筋肉に悪影響を及ぼします。
▼教えてくれた人=坂本昌也 先生
19時以降、あるいは21時以降、朝までなにも食べない、というように、時間制限を設けた一時的なファスティングは、生活習慣病の発症を食い止める要因になり得るのでおすすめです。
これにより、負荷のかかった臓器を休ませ、機能を正常化する効果があることも報告されています。
自分に合ったかたちで、無理なく継続できるのなら、まったく問題ありません。
イスラム教のラマダンも、いっさい飲まず食わずというわけではなく、決められたルールのもとに行われます。
彼らは歴史的に「これをやってはダメ」ということがわかっているので、健康や命を脅かすような無理はしません。
推奨できないのは、健康を意識せず、単に体重を落とすダイエットのために、長期的にファスティングを行うことです。
一時的ならいいのですが、長期的にバランスのとれた食事をとらないと、骨や筋肉に悪影響を及ぼし、骨粗鬆症やサルコペニアなどの発症を招きかねません。
【質問3】ゼロカロリーは本当に太らないですか?
【答え】ゼロカロリーにこだわる人ほど太っている人が多い。
▼教えてくれた人=坂本昌也 先生
ゼロカロリーの食品や飲みものにこだわっている人が太っているというケースは多い。
これは事実です。
考えられる理由は、ゼロカロリーを免罪符にして、ほかのものをしっかり食べてしまうから。
これに尽きるのではないでしょうか。
ゼロカロリーの食品や飲みものには、ほかの食べもののカロリーをマイナスにする力はありません。
普段飲んでいるジュースやコーラをゼロカロリーに変更するのならいいのですが、通常の食事にゼロカロリーをプラスしても意味がありません。
また、ゼロカロリーと表示されていても、完全にゼロではないものもあり、その積み重ねによってトータルの摂取カロリーが多くなっているという説もあります。
さらには、ゼロカロリーに含まれる人工甘味料が、糖尿病の発症に影響するということが、動物実験レベルで明らかになっています。
ゼロという言葉に安心して、バランスを考えずに摂取するのは危険と認識しましょう。
【まとめ読み】『最強の医師団が教える長生きできる方法』記事リストはこちら!
医学の専門家が「世の中に氾濫する健康情報の是非」を全5テーマでわかりやすく解説してくれています。